心ゆくまで異世界観光

natuumi

文字の大きさ
14 / 20
鉄と蒸気の国、マキナガルド

魔術と神術

しおりを挟む
 魔法には二種類ある。
 一つはマナやエーテルといった元素とそれを取り込んだ人間の想像力をもって生み出される奇跡、魔術だ。魔術にはそれの核を成す元素が必要になるけど、それが世界にあるかないか、または使う人間が適合するかどうかで使用の可否不可避が変わる。
 もう一つは神が世界の全ての理を書いた一冊の本「神の書」に書かれた神の奇跡、神術だ。神術はその呪文通りに言葉を発すれば体力やマナなんかは使わず、自然の摂理の如く決まった現象が発生する。ただ、神術はそれが書かれた神の書の世界でしか効果を発しない。

 つまり、魔術がゲームで言う所のRPGにおける一般的な魔法。
 そんで、神術がゲームで言う所のチートとかデバックコードだろうか。
「んー、なるほど?それでロキの使ってたあの魔法は?どっちなんだ?」
「あれは神術だ。このマキナガルドには魔術の素となる物質が無いからね」
 へぇー……ってん?
「ロキ、それはおかしくないか?」
「鋭いね、ショート。言ってみなよ」
「アンタ、この世界についてある程度は知ってるみたいだけど、まだ来て数日だろ?なんでこの世界の住人が知らないような神の裏ワザなんて知ってるんだ?」
 少しは頭が働くようだな、と言わんばかりの感心の表情。
「すまないが、これ以上はワケありでね。言うわけにはいかないんだ」
「えぇ?ここまで来て勿体ぶるの?」
 ケチな野郎だなー。と思っていると、彼がしかめっ面で言い放って来た。
「ショート。これで神術の事が分かっただろう?」
「ああ、つまりは呪文さえ唱えられれば誰でも扱えるんだろ?俺にもできるじゃん」
「いいや。神術は神が使う言葉、この世界ではマキナ語で書かれている。24の音階で構成される他でも類を見ない難しい言語だ。君が生きていられる数日間だけじゃ到底習得できないよ」
 うっ…確かに。ドレミファソラシドもまともに聞き取れない俺には…。
「いや、短い呪文くらいなら!」
「たとえ呪文だけ唱えられるようになってもその後は?さっきから私に通訳させてばかりで自分で聞き取ろうともしない君が、一体どうやって習得した魔法を売るんだい?他の異世界人は更に色んな言語を話す。たまたま最初に出会った私が同じ言葉を話せる人間だっただけで、どうやってこの過酷な世界を生きていくつもりなんだい?」
 うっ…!
 言葉の刃が深々と胸を抉る。
「その甘えと傲慢さ、君はどうやら余程平和な世界か、箱庭で育った貴族が王族のようだね。人に頼ってばかりで、いざと言う時は自分に力があると思ってる。兄上を見ているようで実に不快だよ」
 ロキの兄というと…雷神トールか?いや、笑えない冗談を考えてる場合ではない。
 彼の眉間に明確な憤りが彫り刻まれていた。長続きはせずにすぐにため息と共に怒気も吐き出されて行くが、依然として機嫌は悪そうだ。
「すまない、突然酷いこと言って。でも私達だって余裕を持って世界を旅してるわけではないんだ。ショートを抱えて旅できるような体力は無い」
 頭が冷えて多少は暖かくなるも、現実に冷やされる彼の言葉。
「世界樹に案内しよう。ショートはもといた世界に戻った方がいい」
 自分も丁度それを考えていた所だ。
 前の世界で凡人してた俺が、異世界来た途端仲間ができて無双するなんて小説の中だけの話だったんだ。
 実際はロクに友達もいなかった俺に仲間なんてできるはずもなく、大学の講義すら聞く気も無かった俺に生きていく術を教えてくれる人間もいるはずもない。
 ふととある現世の漫画の言葉を思い出す。
「世間はお前のお母さんではない」
 脳の奥でこだまする声を、今は黙って噛み締めるしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...