perfect divide

丸ニカタバミ

文字の大きさ
14 / 25
対抗戦編

こんな日が続けばいい

しおりを挟む
「ああ、きもちー。天木家はすごいね!図書館と銭湯があるなんて」
 そういってさやはうーんと腕を伸ばして気持ちよさそうに伸びをする。
 天木家には二部屋つぶした書斎のほかに最大4人が同時に入れる浴槽がある。もともと、うちはお母さんの契約龍も合わせて7人が同じ屋根の下で暮らしている。さすがに、都市のど真ん中ではなく郊外の小高い丘にあるが二階建てで一部屋6畳の9LDKである。
「いやー、今日はびっくりしたよ。秘書の丸山さんだっけおじいちゃんだと思ったら急に若返っちゃうし、やっと終わったと思ったらさらにもう一時間追加されるしまいっちゃうよ」
 確かに今日はいろいろと大変だった。丸爺の異能は自身の最盛期を再現するというもので私の一撃が入っていないように見えたのもそのせいだったらしい。その代り、受けたダメージは老体にそのまま行くそうなので丸爺は一週間の療養に入ることになった。
「そうね。たしかにそれにも驚いたけど今日初めて見たけどさやの動きがよくなっていて驚いたわ」
「えへへ、おほめにあずかり光栄です」
「うん確かに、最近のさやはいい動きをするようになった」
 突然、わたしたちのあいだに現れたアンに驚いた。
「アン!なんでこんなところに」
「いやあ、ガールズトークに水を差すのも悪いかなって思って潜ってたんだけど、さすがに息が続かなくて」
 ガールズトークってあなたもガールでしょうが‼と心の中で突っ込みを入れた。それに、もうお風呂に入ってから10分は過ぎている。それだけ潜れることもすごいが、わたしたちが全く気付かないほど気配を消せるとはさすがである。
「今さらですけど師匠ってドラゴンっぽくないですよね」
 まさかのスルーとは、意外とさやは図太いのかもしれない。
「そうだね、わたしたちは竜の中では人に近い龍だから。人のままでいられるんだ」
「人に近い龍・・・・・・ですか?」
「そう、龍によっても種類があるんだけど僕たちは人の心から生まれた龍だから人にもなれるんだ」
 私は初めて聞く話に感心していた。22年間ずっと一緒に暮らしてきたけど初めて知った内容だった。今まで私は何一つ疑問に思わなかったがよく考えたら何も知らない。例えば、私の父親がどんな人で昔のお母さんがどういう人なのかとか何一つ知らない。さすがに父親の話はアンに聞けないから龍について聞いておこう。
「ねえ、龍ってほかにどんな種類があるの?」
「えーっと・・・、大きく分けると3つかな。一つ目が伝承に残っている龍、二つ目が生物として進化した龍、三つ目が人から生まれた龍。龍の強さは一つ目から順に弱くなっていく。まあ、三つ目のは人と契約するためにいるから別に個体としての強さはあまり関係ないかな」
「じゃあ、ほかの二つは人と契約することはないんですか?」
「いや、そんなことはないよ。過去にいたことはいたよ。ただ、契約しても使いこなせる人がほとんどいないし、そもそも協力しようとするやつも少ないんだ」
なるほど、たしかに単体として強い龍が人に手を貸す理由はない。人に守ってもらう必要もないし、それに人を下に見ている種族が手を貸のは哀れみでしかない。
「いくら龍の中では下だとは言えアンたちが私たち人に協力してくれるのはなぜなの?」
 私は疑問に思ったことをすぐに聞いた。
「私たちは、人から生まれたから助けなきゃって思いがあるんだ。それにルアと契約している龍はみんなルアに感謝してるから・・・」
 アンの最後の言葉は私たちが簡単に理由を聞けない重みみたいなものがあった。それに話さなかった部分は「力になりたい」そう言っている気がした。
「空気が重くなっちゃったね。さあ、あがろうか。きっと、ルアがおいしいご飯をつくってくれてるから。あっ、これ大事だから忘れないでね。今の話国家機密だからしゃべると殺されるから」
 この人はさらっとすごいことを言い出すんだ。もとから他人にしゃべるつもりはなかったがそういわれるとすごい悪いことをした気がしてしまう。ただ、普段じゃ聞けなかったことを聞けたのはよかった。またいつか聞けるだろうか。まあ、聞けなくてもいいや、ただこんな日がずっと続くならそれでいい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...