貴公子、淫獄に堕つ

桃山夜舟

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本祭 一夜

 ────夕刻。
 今宵の祭場は、本殿脇の石段を登った先に設けられているとのことだった。
 真霧まきりは案内の信徒に先導されて石段を登りながら、ひそかに溜息を吐いた。

 日中、右大臣について探るべく、散策するふりをして社の中を見て回ったものの、目ぼしい成果はなかった。
 供の武者たちと話す機会もあったが、彼らも進展はないという。

(明日は、もっと信徒たちに話しかけて、探りを入れた方がいいかもしれない)

 考えながらも歩みを進め、石段を登り切ると視界が開けた。
 森の一部を切り取ったように、清冽な水を湛えた泉が広がっている。
 泉の上には泉殿いずみどのが設けられ、岸辺から橋が架けられていた。

 泉殿には信徒たちが平伏しており、中央には浪月ろうげつが立っていた。
 そのすらりとした立ち姿を見た途端、数刻前の契りが脳裏に蘇ってしまい、真霧は頬を赤らめる。
 一度中に注がれた後も、じっくりと苛まれた。
 祭に備えて吐精を控えるようにと、花芯の根元を押さえられながら執拗に中を抉られ、腹の奥で何度も極めさせられたのだ。


「こちらへ」

 浪月の前に座るように促され、腰を下ろした。
 夜風が頬にかかる髪をそよがせる。
 周囲に焚かれた篝火が、信徒達の顔をほの赤く照らしている。
 今宵もまた彼らと交わるのだろうか。
 しかも、こんな解放的な場所で。
 考えるだけで羞恥に体が熱くなる。
 けれど、それが神子の務めなのだ。



「これより本祭の儀を始める」

 浪月が厳かに宣い、じゅをとなえはじめた。
 相変わらず、聞き覚えのない言葉だ。
 朗々とした声に合わせるかのように、生温かい風が吹き始めた。
 篝火がちらちらと揺れる。
 不意に、どうっと強く風が吹いた。
 波立つ水面が盛大に水飛沫を上げながら大きく割れる。

 その割れた水面から、はずるりと現れた。

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