貴公子、淫獄に堕つ

桃山夜舟

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呪詛

上書き※

 真霧まきりは戸惑いながらも、言われるがままに衣を全て脱ぎ、髪の結い紐もほどくと、浪月ろうげつの前に立った。
 とっくりと眺め上げられ、じわりと体が熱くなってゆく。
 浪月には何度も抱かれたが、こんなふうに裸をつぶさに見られたことはない。

「ずいぶんと帝に可愛がられているようだな」

 浪月が冷ややかに笑った。
 白い裸身のあちこちに散らばる赤い痕に気づかれたのだとわかり、肌が朱に染まった。
 浪月に、帝との房事など暴かれたくはなかった。
 伏せた睫毛を震わせていると、不意に強く手首を引かれた。
 腕の中に抱き寄せられたかと思うと、鎖骨の下に面を伏せられる。

「あ……っ」

 つきりとした痛みが走り、びくんと体が跳ねた。
 帝につけられた赤い印の上を吸い上げられたのだ。

「……っ、浪月様、何を……」
「じっとしていろ」
「は、う……っ」

 唇が触れるそこに血が集まるのを感じ、ぞくぞくと背筋がわななく。

「あ、あぁ……っ」

 久しぶりに触れられた浪月の唇の熱さと衣から立ち昇る香の匂いに、頭がくらくらとする。
 ただ肌の上を吸われているだけなのに、体から力が抜けていき、広い胸にくたくたと身を預けてしまう。

 じっくりと吸い上げ、ようやく唇を離した浪月は、出来栄えを確かめるように指先で撫でた。
 じんじんと微かに痛むそこは、赤みを増し、くっきりと浮かび上がっている。

「は……────」

 不意に胸の奥が甘く痛んで、真霧は喘ぐように息を吐いた。
 この気持ちを、どんな言葉で表せばいいのかわからない。
 初めて、浪月の印を肌に刻まれた────
 ただそれだけのことで、胸が詰まって声が出ない。
 
 髪が掻き上げられ、今度は首筋に吸い付かれた。

「ぅんん……っ」

 ぞくぞくとした痛みを伴う快感に、真霧は身をくねらせた。
 脱いだ衣の上に押し倒されながら、肌の上を唇で辿られる。
 脇腹から内腿へ、一つ、また一つと帝の痕跡をかき消すように新たな真紅の痣が刻みつけられていく。

「は……あ、ん……っ

 一つ痕をつけられるたびに、腰の奥が切なく疼く。
 体がどんどん熱くなり、呼吸が乱れ、鼻にかかった声がこぼれ落ちてしまう。
 全ての痕を上書きされ終わると、次は唇を塞がれた。

「────……ふ、んんっ」

 大きな掌で頭の後ろを掴まれ、深く口付けられる。
 舌を絡め取られ、付け根を強く吸われれば、酩酊したように意識がとろけてしまう。

 散々に口内を貪り尽くしたあと、浪月の唇は真霧の首筋を滑り、胸へと降りていく。
 そこはすでに蜜をあふれさせ、濡れそぼっていた。

「ひん……っ」

 濡れた胸の先に歯を立てられて、びくんと体が跳ねた。
 無意識に逃げを打った体を押さえつけられ、甘く噛まれては、なだめるように舌先で転がされる。
 すると、痛みは次第に甘美な快感に変わっていく。

「ひ、あ、ああ、んぅ……っ」

 左右の胸を順番に、片方を口でいじめられながら、もう片方は指先で摘まれ、転がされて、めくるめく愉悦とともにとめどなく蜜が滲み出す。
 胸の付け根がひりひりと張りつめ、疼く。
 湧き起こる蜜を吸ってほしいのに、浪月は甘噛みしたり、舌で舐め上げるばかりで。
 疼きに耐えかねて、真霧は瞳に涙を浮かべて浪月をじっと見つめた。

「浪月様、もう……っ」
「なんだ」

 きっとわかっているくせに、意地悪く尋ねられた。
 真霧は、はしたくなくも自ら胸を寄せ上げて、哀願する。

「もう……、吸ってください……ませ……っ」

 浪月が楽しげに口の端を上げた。
 そして、次の瞬間、濡れ光る胸粒をじゅっと音を立てて吸われた。

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