24 / 50
第三話「引っ越し祝い」
3-6 彩芽side
しおりを挟む
「彩芽が部屋出てすぐに追っかけたよー」
「うっ……」
「ムッフッフー……よいしょー」
彩香がニコニコしながら私の後ろでしゃがみこむ。
「ちょっと何して――っ!」
必死に後ろを振り向こうとするも不意に抱きつかれて背中に柔らかいものが当たった。
胸の押し付けはムカつく……けど、抱きしめられることに安堵する。
自然と震えが収まっていた。
「ムフフー」
「な、なによ……」
「ムフフ……べっつにー?」
むぎゅっと抱きしめが強くなる。背中の感触が増していく。
「その胸は嫌がらせか。わざとか、わざとなのか……」
「フッフッフ……当ててんのよーってやつかなー」
「結局嫌がらせじゃん……」
「そんなことないよー?」
「はいはい……」
まぁ……悪くはない、かな。
「彩芽さー」
「なに?」
前を向いたまま聞いてみるも彩香は返事を返してこない。曇り空が広がっていく。
「……」
返事のない彩香が気になって軽く後ろを振り向いてみる。
「彩香?」
「……ううん、やっぱりいいや」
「そこまで言ったんなら言いなさいよ」
「まぁ、今後の楽しみということでー」
彩香はそう言いながら立ち上がった。不意に背もたれがなくなった私はそのまま床に寝そべって彩香を見上げる。
飛び出た巨乳で彩香の顔が見えない……。
「で、今後の楽しみって?」
聞き返すと彩香は膝に手をついて屈んだ。私の真上に彩香の顔が反対向きで現れる。
「フッフッフー、今後の楽しみー」
たまに見せる彩香の笑顔はいつも純粋でズルい……。
「なによそれ」
「ムッフッフ、分かってるくせにー」
「うざっ……」
双子だからなのか、なんとなく言いたい事は分かる……けど、それを口にするのは今はやめておこう。
「さてとー。彩芽ー、ごはん食べよー」
彩香はキッチンへと向かって行く。時々見せる無邪気な所がズルいんだよなぁ……。
「はいはい」
朝の用事を済ませて彩香とテーブルに向かい合わせで座る。
「彩芽はホットミルクでいいの?」
「うん、コーヒー飲むくらいならミルクでいい」
「そか」
彩香はトースト一枚ともう半分、私はその半分を食べる。焼いた卵とハムと一緒にちょこちょこトーストをかじりながら、目の前で揺れる胸を見つめる。
一口で食べた目玉焼きの黄身がとろりと彩香の胸に落ちた。
「こぼれてるよ」
「あ……ほんとだ……あははー」
頭を撫でながら照れ笑いする彩香に呆れてため息が出る。
「はぁ……」
高校ではバレーのエースだった彩香。勉強は出来なくてもそのスタイルは男子からも女子からも注目の的で、無邪気な笑顔も相まって学校では一番の人気者。
それが、家だとどうしてこうもだらしない食べ方を……。
頬張る彩香がニコニコしながらこちらを見つめている。
「なに?」
「彩芽美味しいねー」
「私を見ながら言うな……なんか食べられてる気分になるから……」
「私は彩芽を食べてもぜんぜん構わないよっ」
口の周りを汚しながらとびっきりのウインクとグーサインを向けられる。
「ちょっとは構いなさいよ……」
「構っていいのかい?」
確実に何か意味を取り違えてる……。
「いや、構わないでいい……」
目を逸らして全力で否定する。
「ということは食べてもいいのかいっ?」
キラリと光る彩香の目が視界の端に映った。無駄に首の角度を変えて決めポーズをしている分、ちょっとイライラする……。
「食べるのは食べ物だけにして……」
「そんな……」
急に彩香の目が潤み始める。
「なんでそこで悲しそうな顔すんのよ」
「だって……」
「ほら、早く食べなさい」
「はーい」
ニッシッシと歯を見せて笑う彩香に自然と私も微笑んでいた。
「あっ! 彩芽がデレた!」
「うっさい」
「ムフフー」
「そのにんまりした顔、人に見せられないわよ……」
「彩芽にしか見せないからいいもーん」
「はぁ……」
ホットミルクの入ったマグカップを両手で持つ。まだ熱いけど、飲めない事もない。
「よしっ! ごちそうさまー!」
「……ごちそうさま」
彩香はホットコーヒーを、私はホットミルクをゆっくり飲み始める。すると、彩香が頬杖をついてじっとこちらを窺っていた。
「朝はぜったいホットミルク飲むのにねー……」
心配そうな目を向けてくる彩香が悲しそうに呟く。
「どこ見ながら言ってんの?」
「いやー……」
頭と胸を交互に見た後に深々と頷く彩香をマグカップ越しに睨みつけた。
「むぅ……」
「あ、でも、私は主張しない彩芽が好きだよ!」
「遠回しに貶してるよねそれ」
「いやいや、その慎ましやかな胸と体型、それに彩芽のツンデレは最高だよっ」
「決め顔すんな……ばか」
「ムフフー」
ピンポーン♪
「ん? 誰だろー?」
「ああ、いいよ。私出てくる」
「そういう所ほんと可愛いよっ」
ウインクとグーサインが鬱陶しい……。
「うっさい……」
どうせ大家さんでしょ。いっつもおかずくれるし。
玄関でサンダルを履いて扉を開ける。
「はいはーい」
少し開けた扉の隙間、視界に入ったのは白いカッターシャツ。身長高めの男の人と思える体型が見えた。
「うっ……」
「ムッフッフー……よいしょー」
彩香がニコニコしながら私の後ろでしゃがみこむ。
「ちょっと何して――っ!」
必死に後ろを振り向こうとするも不意に抱きつかれて背中に柔らかいものが当たった。
胸の押し付けはムカつく……けど、抱きしめられることに安堵する。
自然と震えが収まっていた。
「ムフフー」
「な、なによ……」
「ムフフ……べっつにー?」
むぎゅっと抱きしめが強くなる。背中の感触が増していく。
「その胸は嫌がらせか。わざとか、わざとなのか……」
「フッフッフ……当ててんのよーってやつかなー」
「結局嫌がらせじゃん……」
「そんなことないよー?」
「はいはい……」
まぁ……悪くはない、かな。
「彩芽さー」
「なに?」
前を向いたまま聞いてみるも彩香は返事を返してこない。曇り空が広がっていく。
「……」
返事のない彩香が気になって軽く後ろを振り向いてみる。
「彩香?」
「……ううん、やっぱりいいや」
「そこまで言ったんなら言いなさいよ」
「まぁ、今後の楽しみということでー」
彩香はそう言いながら立ち上がった。不意に背もたれがなくなった私はそのまま床に寝そべって彩香を見上げる。
飛び出た巨乳で彩香の顔が見えない……。
「で、今後の楽しみって?」
聞き返すと彩香は膝に手をついて屈んだ。私の真上に彩香の顔が反対向きで現れる。
「フッフッフー、今後の楽しみー」
たまに見せる彩香の笑顔はいつも純粋でズルい……。
「なによそれ」
「ムッフッフ、分かってるくせにー」
「うざっ……」
双子だからなのか、なんとなく言いたい事は分かる……けど、それを口にするのは今はやめておこう。
「さてとー。彩芽ー、ごはん食べよー」
彩香はキッチンへと向かって行く。時々見せる無邪気な所がズルいんだよなぁ……。
「はいはい」
朝の用事を済ませて彩香とテーブルに向かい合わせで座る。
「彩芽はホットミルクでいいの?」
「うん、コーヒー飲むくらいならミルクでいい」
「そか」
彩香はトースト一枚ともう半分、私はその半分を食べる。焼いた卵とハムと一緒にちょこちょこトーストをかじりながら、目の前で揺れる胸を見つめる。
一口で食べた目玉焼きの黄身がとろりと彩香の胸に落ちた。
「こぼれてるよ」
「あ……ほんとだ……あははー」
頭を撫でながら照れ笑いする彩香に呆れてため息が出る。
「はぁ……」
高校ではバレーのエースだった彩香。勉強は出来なくてもそのスタイルは男子からも女子からも注目の的で、無邪気な笑顔も相まって学校では一番の人気者。
それが、家だとどうしてこうもだらしない食べ方を……。
頬張る彩香がニコニコしながらこちらを見つめている。
「なに?」
「彩芽美味しいねー」
「私を見ながら言うな……なんか食べられてる気分になるから……」
「私は彩芽を食べてもぜんぜん構わないよっ」
口の周りを汚しながらとびっきりのウインクとグーサインを向けられる。
「ちょっとは構いなさいよ……」
「構っていいのかい?」
確実に何か意味を取り違えてる……。
「いや、構わないでいい……」
目を逸らして全力で否定する。
「ということは食べてもいいのかいっ?」
キラリと光る彩香の目が視界の端に映った。無駄に首の角度を変えて決めポーズをしている分、ちょっとイライラする……。
「食べるのは食べ物だけにして……」
「そんな……」
急に彩香の目が潤み始める。
「なんでそこで悲しそうな顔すんのよ」
「だって……」
「ほら、早く食べなさい」
「はーい」
ニッシッシと歯を見せて笑う彩香に自然と私も微笑んでいた。
「あっ! 彩芽がデレた!」
「うっさい」
「ムフフー」
「そのにんまりした顔、人に見せられないわよ……」
「彩芽にしか見せないからいいもーん」
「はぁ……」
ホットミルクの入ったマグカップを両手で持つ。まだ熱いけど、飲めない事もない。
「よしっ! ごちそうさまー!」
「……ごちそうさま」
彩香はホットコーヒーを、私はホットミルクをゆっくり飲み始める。すると、彩香が頬杖をついてじっとこちらを窺っていた。
「朝はぜったいホットミルク飲むのにねー……」
心配そうな目を向けてくる彩香が悲しそうに呟く。
「どこ見ながら言ってんの?」
「いやー……」
頭と胸を交互に見た後に深々と頷く彩香をマグカップ越しに睨みつけた。
「むぅ……」
「あ、でも、私は主張しない彩芽が好きだよ!」
「遠回しに貶してるよねそれ」
「いやいや、その慎ましやかな胸と体型、それに彩芽のツンデレは最高だよっ」
「決め顔すんな……ばか」
「ムフフー」
ピンポーン♪
「ん? 誰だろー?」
「ああ、いいよ。私出てくる」
「そういう所ほんと可愛いよっ」
ウインクとグーサインが鬱陶しい……。
「うっさい……」
どうせ大家さんでしょ。いっつもおかずくれるし。
玄関でサンダルを履いて扉を開ける。
「はいはーい」
少し開けた扉の隙間、視界に入ったのは白いカッターシャツ。身長高めの男の人と思える体型が見えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる