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第六話「彩香のバレーサークル入部問題」彩香side story
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ハッ! 思えば私って男の人に呼び捨てされるのって初めてじゃないか……⁉
面と向かって下の名前で呼ばれると、なんかこう――
「彩香、大丈夫か?」
「は、はひゃいっ! 大丈夫ですっ!」
「なんか顔赤いけど、どうした?」
「や、やめ、その雰囲気で近付かないでください!」
「なんで彩香が敬語なの?」
「いや、その、なんか、こう、いつもと違う雰囲気に違和感を感じるといいますかなんというか、とりあえず、あんまりこっち見ないで!」
ひやぁ……なんで私は照れているんだぁ……!
「よく分かんないけど……、とりあえず行くか?」
「う、うん! 行きます!」
「だから、なんで敬語?」
「いや、そんな急に自然体で来られたら……」
多少は意識してしまうというかなんというか……。
「大丈夫か?」
「えっ……」
俯いている間に目と鼻の先に銀治君の顔がっ。
「いやぁっ!」
「ぐはっ……」
「あ……ごめん、つい勢いで!」
思いっきり顔を叩いてしまった……。
「い、いや、こちらこそすまない……どうも距離感が分からなくて……」
「わ、私こそごめんなさい!」
「「……」」
なんか気まずいんですが! とっても気まずいんですが!
「と、とりあえず行こうか」
「う、うん! そだね!」
先にアパートの階段を下りていく銀治君の後ろをついていく。
「……」
なんか……、なんか気まずいよっ!
アパートの敷地を出て大学へと向かって歩く途中、隣の銀治君がちらっとこっちを向いてきた。
「そういえば二人で会うのって初めてだったかな?」
おぉ、今そういうこと言ってくるとは。
「そ、そうだねー、あははー……」
「やっぱり……」
顔をじっと見つめてくる銀治君の視線が熱いよぉ……!
「ど、ど、どしたのかな?」
「やっぱり綺麗だなぁって」
「ブフォッ……」
二人きりでもこういうこと言ってくるのかぁー……。彩芽はもしかしてコレにやられたのか⁉ この自然な言葉にやられちゃったのかい⁉
「ぎ、銀治君……」
「ん、なに?」
「君、さてはモテるだろう!」
「え……」
「あ、あれ……?」
銀治君の足が止まってしまったぞ……?
「彩香さん……」
「は、はいっ」
真剣な眼差しがこっちに向いてるっ!
急に敬語に戻るとかズルい! ズルいぞ銀治君!
「俺、中学高校ボッチだったんで……女の人と付き合ったことすらないんですよね……」
「嘘だー、そんな自然体で褒められたら女の子なんてイチコロでしょー」
べ、別に私がそうなっているという事ではないんだけどね、ないんだけどねっ⁉
「俺、銀髪美少女にしか興味ないので」
「あ……」
そういえばそんなこと言ってたな……。
「俺が初めて可愛いと思ったのは彩芽さんで、綺麗だと思ったのは彩香さんです」
「なんっ……!」
さっきから、そういう事をぽんぽんとぉ……。
「彩香さん?」
「ば、ばかっ! 近付くんじゃない銀治君!」
「そんな……」
相当ショックだったのか、銀治君がとても悲しそうな表情になってしまった。
「あー、もう、とりあえず行こう!」
このままじゃ話も進まないし! 先輩たち待ってるし!
「はい……」
「ごーごー!」
恥ずかしいので並ばないように先に歩く!
はぁ……なんかドキドキしてるし、意識すると余計にこれはいかんともしがたい何かが……。
いや、でも銀治君は彩芽のもの……。だがしかし、彩芽は同時に私のもの……。
あ、そうだ。
彩芽は私のものだ!
「銀治君!」
「な、何でしょうか……」
「彩芽は、妹は渡さないからな!」
「ん? どういうことですか?」
「ど、どういうも何も、彩芽は私のものだから! 君には譲らん!」
「二人が一緒の方が素敵なので大丈夫です」
なぜかグーサインで了解してくれた⁉
「むぅぅう……!」
銀治君はもしかして私まで範囲に入っているとでも言うのか⁉ まさか彩芽と私⁉
し、姉妹ごといくなんてそんな……!
「彩香さん顔真っ赤ですけど――」
「と、とりあえず、君に妹はあげないから!」
「は、はあ……」
なんか納得した返事ではない上に、「こいつ何言ってんだ?」みたいな顔で見られてしまった。
「……」
大学が近いせいですでに中心の広場に到着……。
あれから一言も話さないままでとても気まずい……。よく分かんない宣言しちゃったしどうしよう……。
「そ、それじゃ銀治君、彼氏役頼んだよっ」
隣を歩く銀治君を見ずに俯きながら声をかけた。
「分かった」
うぅ……タメ口なのが慣れないけど仕方ない……。
「彩香」
「は、はいっ」
自分で言っておいてなんだけど下の名前で呼ばれるの慣れないよぉ……。
「先輩たちはどこ?」
「あ、ああ、部室棟だよー。それと、銀治君さ……」
「ん?」
「け、敬語に、戻って頂いてもいいですか……」
これ以上はやっぱり耐えられそうにないよー……。
「……」
あれ、固まっちゃったぞ……。
「ぎ、銀治君?」
「やめて良いんですか?」
「う、うん……その、色々やりにくいというかなんというか……」
「……はぁ」
銀治君が肩を落としながらとても深いため息を吐いた。
「ど、どうしたの?」
「いえ……、慣れないことをすると少し疲れてしまって……。それに……」
「それに?」
「彩香さんを呼び捨てするなんて、これ以上は精神的に耐えられそうになかったです……」
「……そ、そか」
「彩香さん?」
ふっとこっちを向いた銀治君と目が合ってしまい、無性に恥ずかしい……。
「と、とりあえず、いつもの感じで頼むよー、にゃははー……」
「分かりました」
ふぅ……。
ようやくぎこちないのが終わった……。いや、まだこれから本番なんだけどね……。
「彩香さん、大丈夫ですか?」
「え、ん⁉ な、なにっ⁉」
面と向かって下の名前で呼ばれると、なんかこう――
「彩香、大丈夫か?」
「は、はひゃいっ! 大丈夫ですっ!」
「なんか顔赤いけど、どうした?」
「や、やめ、その雰囲気で近付かないでください!」
「なんで彩香が敬語なの?」
「いや、その、なんか、こう、いつもと違う雰囲気に違和感を感じるといいますかなんというか、とりあえず、あんまりこっち見ないで!」
ひやぁ……なんで私は照れているんだぁ……!
「よく分かんないけど……、とりあえず行くか?」
「う、うん! 行きます!」
「だから、なんで敬語?」
「いや、そんな急に自然体で来られたら……」
多少は意識してしまうというかなんというか……。
「大丈夫か?」
「えっ……」
俯いている間に目と鼻の先に銀治君の顔がっ。
「いやぁっ!」
「ぐはっ……」
「あ……ごめん、つい勢いで!」
思いっきり顔を叩いてしまった……。
「い、いや、こちらこそすまない……どうも距離感が分からなくて……」
「わ、私こそごめんなさい!」
「「……」」
なんか気まずいんですが! とっても気まずいんですが!
「と、とりあえず行こうか」
「う、うん! そだね!」
先にアパートの階段を下りていく銀治君の後ろをついていく。
「……」
なんか……、なんか気まずいよっ!
アパートの敷地を出て大学へと向かって歩く途中、隣の銀治君がちらっとこっちを向いてきた。
「そういえば二人で会うのって初めてだったかな?」
おぉ、今そういうこと言ってくるとは。
「そ、そうだねー、あははー……」
「やっぱり……」
顔をじっと見つめてくる銀治君の視線が熱いよぉ……!
「ど、ど、どしたのかな?」
「やっぱり綺麗だなぁって」
「ブフォッ……」
二人きりでもこういうこと言ってくるのかぁー……。彩芽はもしかしてコレにやられたのか⁉ この自然な言葉にやられちゃったのかい⁉
「ぎ、銀治君……」
「ん、なに?」
「君、さてはモテるだろう!」
「え……」
「あ、あれ……?」
銀治君の足が止まってしまったぞ……?
「彩香さん……」
「は、はいっ」
真剣な眼差しがこっちに向いてるっ!
急に敬語に戻るとかズルい! ズルいぞ銀治君!
「俺、中学高校ボッチだったんで……女の人と付き合ったことすらないんですよね……」
「嘘だー、そんな自然体で褒められたら女の子なんてイチコロでしょー」
べ、別に私がそうなっているという事ではないんだけどね、ないんだけどねっ⁉
「俺、銀髪美少女にしか興味ないので」
「あ……」
そういえばそんなこと言ってたな……。
「俺が初めて可愛いと思ったのは彩芽さんで、綺麗だと思ったのは彩香さんです」
「なんっ……!」
さっきから、そういう事をぽんぽんとぉ……。
「彩香さん?」
「ば、ばかっ! 近付くんじゃない銀治君!」
「そんな……」
相当ショックだったのか、銀治君がとても悲しそうな表情になってしまった。
「あー、もう、とりあえず行こう!」
このままじゃ話も進まないし! 先輩たち待ってるし!
「はい……」
「ごーごー!」
恥ずかしいので並ばないように先に歩く!
はぁ……なんかドキドキしてるし、意識すると余計にこれはいかんともしがたい何かが……。
いや、でも銀治君は彩芽のもの……。だがしかし、彩芽は同時に私のもの……。
あ、そうだ。
彩芽は私のものだ!
「銀治君!」
「な、何でしょうか……」
「彩芽は、妹は渡さないからな!」
「ん? どういうことですか?」
「ど、どういうも何も、彩芽は私のものだから! 君には譲らん!」
「二人が一緒の方が素敵なので大丈夫です」
なぜかグーサインで了解してくれた⁉
「むぅぅう……!」
銀治君はもしかして私まで範囲に入っているとでも言うのか⁉ まさか彩芽と私⁉
し、姉妹ごといくなんてそんな……!
「彩香さん顔真っ赤ですけど――」
「と、とりあえず、君に妹はあげないから!」
「は、はあ……」
なんか納得した返事ではない上に、「こいつ何言ってんだ?」みたいな顔で見られてしまった。
「……」
大学が近いせいですでに中心の広場に到着……。
あれから一言も話さないままでとても気まずい……。よく分かんない宣言しちゃったしどうしよう……。
「そ、それじゃ銀治君、彼氏役頼んだよっ」
隣を歩く銀治君を見ずに俯きながら声をかけた。
「分かった」
うぅ……タメ口なのが慣れないけど仕方ない……。
「彩香」
「は、はいっ」
自分で言っておいてなんだけど下の名前で呼ばれるの慣れないよぉ……。
「先輩たちはどこ?」
「あ、ああ、部室棟だよー。それと、銀治君さ……」
「ん?」
「け、敬語に、戻って頂いてもいいですか……」
これ以上はやっぱり耐えられそうにないよー……。
「……」
あれ、固まっちゃったぞ……。
「ぎ、銀治君?」
「やめて良いんですか?」
「う、うん……その、色々やりにくいというかなんというか……」
「……はぁ」
銀治君が肩を落としながらとても深いため息を吐いた。
「ど、どうしたの?」
「いえ……、慣れないことをすると少し疲れてしまって……。それに……」
「それに?」
「彩香さんを呼び捨てするなんて、これ以上は精神的に耐えられそうになかったです……」
「……そ、そか」
「彩香さん?」
ふっとこっちを向いた銀治君と目が合ってしまい、無性に恥ずかしい……。
「と、とりあえず、いつもの感じで頼むよー、にゃははー……」
「分かりました」
ふぅ……。
ようやくぎこちないのが終わった……。いや、まだこれから本番なんだけどね……。
「彩香さん、大丈夫ですか?」
「え、ん⁉ な、なにっ⁉」
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