想いの言の葉

忍原富臣

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絶対零度

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 凍えるこの身で何を謳う――

 死にゆくこの身で何を謳う――



 既にこの身と魂はあの世へと束縛され

 生命賛歌は亡命之唄へと移り変わる

 

 奏でろ   歌え   鳴り響け



 生命の業火よ 燃え上がれ

 死にゆく定めを懸命に もがいて苦しめ咎人よ

 辿れぬ夢を捨てきり 抗い続けろ咎人よ

 散りゆく命は美しくあれ 燃える心は儚く散れ

 呪いの――――絶対零度の叫ビ声

 残響死片となりて その魂に刻まれよ

 祝杯を掲げ 神に祈れ 命を愛でよ 

 生きとし生ける者に 活力を

 死者の魂に弔いを――

 死にきれぬ想い  睡魔の子守唄――



 慈愛に満ちた悪魔が逝きなさいとそっと告げる――

 命を縛り付ける天使が生きなさいと優しく告げる――



 しかし、この冷たい檻の中では――氷漬けのこの身では――

 どちらも苦行となるだろう――
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