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しおりを挟む「半休だって?」
「はい、自分だけ申し訳ないです」
「出張後のお休みは権利だもの」
そうは言ってくれてはいるが、申し訳ない気分になってくるのは日本社会ならではだろう。
「おでかけ? 恋人と旅行? お土産は甘くないものがいいな」
休みの予定なんて喋ってもいないはずなのにそう催促され、苦笑が漏れた。
「わかりました。甘くない物ですね」
「うわ、恋人のことは否定しなかったわね」
揶揄われ、ぶわっと汗が出た。
その様子が可笑しかったのか、小さく笑われてしまい……
「いいなぁ車? 電車?」
「電車で、のんびり行こうかと 言ってて」
「いいねー!」
この勢いで行くとどんどん情報を引き出されそうな気がして、妙な汗の滲んだ手を擦る。
「あの えと 失礼します!」
もうここは逃げるしかないと、深く頭を下げた。
休みを取っていた小林は、私服で会社から少し離れた喫茶店で待っていてくれた。
窓から中を覗き込むと、こちらに気づいて満面の笑みで迎えてくれる。
ちょっと、ドキッとして……
教育係にと紹介された時、この怖い顔立ちの先輩とこんな仲になるなんて、思ってもみなかった。
「俺だけのんびりしてて悪いな」
「そんなことないです!逆に、僕の方に合わせてもらって感謝します」
支払いを済まして出てきた小林は、なんの不自然さもなく車道側に立つ。
その動きはあまりにも自然で、気障っぽいとか見栄を張っているようにも見えない。
人をエスコートし慣れてる人なんだと思うと、尊敬の気持ちが湧いてきてくすぐったくて……
ちょっとした気遣いが僕を幸せにしてくれる。
「電車ってなかなか乗らなくなったよなー」
「そうですね、昔はよく乗ったんですけど 」
なんてことはない会話が続く。
尊敬は、いつか愛情に変わってくれるだろうか?
友情は、いつか恋情に変わってくれるだろうか?
憧憬は、好意に、愛しさに変った。
だから、きっと、変わってくれるだろう。
激情でない緩やかな感情は温かくて、心をふわふわとさせる。
「なぁ 行こうって言ってたとこ、俺の地元でさ。ちょっと実家に寄ってかない?」
「あ あの、僕もですか?」
「 できれば」
この人は突然何を言い出すんだろうか。
それは僕を家族に紹介したいと言うことだとわかる。
それが、男女間ならなんの問題もないことも。
「いきなり行って 驚かれませんか?」
「恋人連れていくって電話しておいたからそれはないかな」
えっ と言葉が詰まった。
僕の戸惑いがはっきりとわかったのか、考えを巡らす表情の後に「ああ」と言葉を漏らした。
「うちは、知ってるから」
なんてことのないように返されるが、こちらからしてみるとそんな夢物語のような話があるんだと驚きだ。
うちの親はどうだろうか? 母は泣くだろうし、父は怒りを通り越して茫然となるかもしれない。
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