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まこと side
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しおりを挟む藍我って、声をかけようとしたけれど二人がなんだか親密そうに顔を寄せ合って話し始めるから……予鈴に押されるようにその場を離れるしかできなかった。
担任が入ってきて、その後ろからのそのそと藍我が入ってきて席に座る。
席が離れているから話しかけることもできないまま、こっちを見てくれないかなって視線をチラチラ送っていると視界の端でドアが開いた。
先生に促されて入ってきたのはさっき藍我にぶら下がっていた子だ。
「井上桃路です!」
ふわふわの髪に、こじんまりとした顔立ちの彼は元気一杯に溌剌とした声で言うと、黒板に自分の名前を書く。
彼は、中途半端な時期にやってきた転校生だった。
青井と井上、あ行で一緒だからって先生は僕に学校の案内を押し付けて、簡単にホームルームを終わらせていってしまった。
いきなり案内なんて言われても困ってしまうと焦ったり、藍我と桃路の関係を想像したりしているうちに昼休みになって……桃路が「案内ついでにお昼も一緒に食べよ!」って声をかけてくる。
僕はコミュ障だって言い切るほどではなかったけれど、初対面の人と垣根なく話せるほどじゃない。
しかも、相手はなんだかよくわからないけれど藍我と腕を組んで親しそうにしていたんだから……仲良くなれる気がしなかった。
それなのに彼……桃路は僕を見てニコニコしながらいろんなことを話かけてくる。
昨日こっちに着いたことや授業の進行に差があるかどうか心配だとか……グイグイと距離を詰められて、自然と体がのけぞっていく。
僕がうまく答えられなくても喋り続ける彼を止めたのは、藍我だ。
「桃路、うるさい」
きゅっと桃路の襟首を掴んで藍我が間に割り込んでくる。
助かったって思ってホッと顔を上げたけれど、藍我の視線は僕には向いてなかった。
「えぇ……ひどいよ、仲良くなりたいだけだよ? だって、藍我が言ったんだろ?」
うるん と目を潤ませながら桃路はやっぱり藍我の腕にしがみつく。
その姿に、ごくん と空気を飲んでしまった。
十二年の間に、藍我と腕を組んだことなんてないし、手を握ったのも夏祭りとかお正月に神社に行った際に逸れないようにって理由があってのことだ。
なんの理由もなく腕を組むなんて、夢のまた夢を……この転校生はあっさり叶えてしまっている。
「うるさいことばっかり言うな。まこと、案内はオレがするからいいぞ」
「えっ⁉︎」
僕が何か言う前に、藍我は腕に桃路をぶら下げたまま教室を出て行ってしまった。
ポツンと教室に残された僕に周りがざわつく。
お昼ご飯はずっと藍我と食べていたからだと思う。
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