ある日、友達とキスをした

Kokonuca.

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まこと side

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 でも、鼻を打ったからすごく痛いしつーんで骨に響くような衝撃があって、我慢できなかったんだ。
 電信柱の下でへたり込みながら、溢れてくる涙を拭くこともできなかった。

「――――まこと⁉︎」

 大きくて鋭い声は耳に馴染んだ藍我の声だ。
 どうしてこんなにタイミングよく⁉︎ って思って、もしかしたら学校に僕を置いていったのに気づいて急いで迎えにきてくれてたりしたんじゃないかって……考えたんだけど。

「わっ! まこちゃん! それどうしたの⁉︎ 大丈夫⁉︎」

 甲高い声が聞こえて、どん って衝撃がくる。
 ふわりと飛びついてきた桃路から香ったのは、藍我が気に入って使っている香水と同じ香りだった。

「鼻血出てるよ⁉︎」
「え! はなっ 鼻血⁉︎」

 涙しか出てないと思っていたのに……そっと鼻に手をやるとぬるりとした感触がする。
 大慌てで鞄からティッシュを出そうとしていると、藍我が僕にしがみついている桃路を引き剥がしてティッシュを差し出した。

 心配してくれたんだって嬉しくて、ニコニコしながら顔を上げたけれど藍我は僕を見ていない。
 
「ほら、血がつくからどいてろ」

 血が、つく。

 桃路に血がつくといけないから二人の間に割って入ってティッシュをくれたって、こと?

「何してたんだ? ……もしかして、またなんか絡まれたか?」

 低い声は掠れて怒りを含んでいる。
 以前、僕の身に起きたことを思い出して怒り出しているようだ。

 僕に嫌がらせしてきた奴らはその後、藍我に返り討ちにあって大人しくなっていた。
 でもその代償は大きくて、藍我は左手の骨を折ってしまった。本人は大したことないって言ってはいたけど、骨だよ? 骨なんて折ったら死んじゃうじゃないか! だから、そんなこともう2度として欲しくなくて、慌てて藍我の服の裾を握り締める。

「違う! 違うよ! ちょっと、ここが怖くて目を開けられなくて……」
「開けられなくて?」
「こんな感じで歩いてたらぶつかった だけ」

 ギュッと目を閉じた表情を見せると、藍我は一瞬びっくりしたような表情をした後、「驚かせるなよ」って機嫌悪そうにうめいた。
 ごめんって言う前に、桃路が声を上げるから謝れないまま口を飲み込むしかない。

「どうした?」
「あれってなにー?」

 もう涼しくなってきているから虫は少ないけれど、廃墟のようなそこに足を踏み入れる勇気は僕になかった。
 だから、藍我を引き止めようとしたのにさっと桃路の方に行って一緒に中を覗き込み始めると……なんだか、部外者みたいな疎外感が湧いてくる。

「あー……社の中か?」
「行ってみたい!」
「ダメだ、危ないものもあるだろうし、枝で怪我したらどうするんだ」



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