ある日、友達とキスをした

Kokonuca.

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まこと side

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 藍我もそうだけど洸平も信じられないものを見るような目で見てくるから、僕が悪いような気がしてくる。
 そういうもんだと思って育ってきただけに、僕はちょっと唇を尖らせた。

「まぁ、すぐに帰ってくるんだろ?」

 洸平はそれくらいなら別にって感じで言うと、手元のアルバムを捲り続ける。

「寝てていいぞー勝手に時間潰しとくから」 
「アルバム見られてると落ち着かないですよ」

 見られて困ってしまうような写真はなかったけれど、それでも小さい頃の写真っていうのはそれだけで恥ずかしい。
 あ、でも……と思い直して起きあがろうとすると、それを察知して洸平がアルバムを持ってベッドまで来てくれる。

「何か気になることでもあった?」
 
 立たせたままってのも気になるから、少し体をずらしてベッドの端に座るように促す。
 そうすると洸平はそこに腰掛けて、目の前で支えるようにしてアルバムを開いてくれるから、僕は体を休めたままアルバムを見ることができた。

「これ……この子、先輩だったんじゃなかったっけなって思って。こぉーくんって呼んでたし」

 小さい頃の写真を指差し、その中で元気にピースしている子を洸平に見せる。
 洸平だし「こぉーちゃん」で当たりだろう。
 こうやって並べてみたらなんとなく似ているし、僕も意外としっかり覚えているんだってわかって嬉しくなった。

「違う違う、こっちこっち」
「えっ⁉︎」

 指差した先は……どうにも洸平とは結びつかない線の細い子だった。

「んとー……とりくん!」

 そう呼ぶと洸平はちょっとくすぐったそうに首をすくめながらはにかむ。
 面影が全然なくて分からなかったけれど、そんなふうに笑ってくれるとなんとなくとりくんだって思えてきた。

「思い出した?」
「んん? でもとりくん?」

 天野洸平にはどこにもカスってない呼び方に、きょとんと洸平を見つめ返す。
 昔の思い出の中のとりくんはちょっと細っこくて、他の子達に押し除けられがちだった。特に藍我がよくちょっかいを出していた記憶があるけれど……

「きみもりこうへい な」
「きみもり?」

 君、森、と掌に指で字を書かれて、くすぐったくて身をよじる。
 天野じゃなくて昔は君森だったってことなんだろう、藍我のお家のこともあるし、名前が変わることがあるくらいわかっている。

「どこかの誰かの滑舌がよくなくてきみどりくんきみどりくんって呼ばれて、黄緑も言いにくいからってとりになったんだ」

 僕はすっかり忘れていたけれど、洸平はしっかりとその時のことを覚えていたらしい。
 ちょっと苦いものを食べた時のような絶妙な顔をして僕を睨む。


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