ある日、友達とキスをした

Kokonuca.

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まこと side

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 過呼吸……ではないと思うんだけど。

「そ そんなやつと……っまことっ!」
「はい!」
「お前はっ」
「はいっ」
「…… 先輩みたいな人が、……す、き、なのか……?」
「はい!?!?!?」
 
 勢いで出た変な返事を訂正する前に、「なんでっ」て短い声が上がった。
 小さな頃から変わらないくしゃくしゃと紙を潰したような顔の泣き顔が……

「ら 藍我?」
「なんでそんなことになってんだよっ! 全然そんなそぶりなかっただろ!」

 そりゃそうだ。
 そぶりも何も、僕自身が初耳なんだから。

 僕が好きだったのは昔も今も藍我ただ一人だ。

 だから毎日楽しいし、毎日ドキドキするし、告白されているとハラハラして……泣きそうになる。
 実際に桃路が登場して、熱を出すくらいショックだったのも藍我のことが好きだからだ。

 ギュッと息を止めて「違うよ」って首を振ろうとした瞬間、長い腕が僕をギュッと包み込む。

「こういうのはさ、秘めとくもんだろ?」
「ひゃっ⁉︎」
「男同士だしさ、幼馴染のお前に気持ち悪いって思われたら雰囲気悪くなるだろ?」

 しれ と言葉を紡ぎながら洸平は僕の頭にこてんと顎を乗せてた。
 洸平がわけのわからないことを言っている間にも、藍我はどんどん顔色を悪くさせながら顔をしかめて涙を浮かべている。

「だから、山口にも内緒だったんだよなー? 俺達の仲は」
「なん  もがっ」

 洸平に文句を言ってやろうとしたのに、口を手で押さえられてしまうとどうにもならない。
 ジタバタと暴れる僕の目の前で、真っ白になるまで拳を握った藍我は今にも爆発しそうに見える。

 僕が洸平とどうこうなるなんて、常に一緒にいた藍我なら嘘だって分かりそうなものなのにっ!

「そん  っそんなの、嘘、だっ! だって、まことは男が好きだとか、聞いたことないしっ」
「だーかーらー、そんなのいちいち説明する必要なんてないだろ?」

 洸平の唇が挑発するように引き上がって、小さな笑い声が喉からこぼれる。

「もーいっかい言うぞ? お前、どの立場で聞くワケ?」
「  っ」
「お前は、まこの、なんなワケ?」

 僕が声を出そうとするたびに、口を押さえる洸平の手に力がこもっていく。
 抵抗しようにも僕の力じゃ引っかき傷もつけられないから、仕方なく震えている藍我を見つめた。

 藍我の立ち位置ははっきりとしている。

 僕のお隣さんで。
 僕の幼馴染で。
 僕の同級生で。
 僕の友達で。
 
 僕の……好きな人だ。

 でもそれをひっくり返して、藍我の立場になって話すと、

 お隣さんで、幼馴染で、同級生で、友達で、世話を頼まれただけって存在になる。
 この差は生きる世界線が違うんじゃないかってくらい大きい。



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