ある日、友達とキスをした

Kokonuca.

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まこと side

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 口をギュッと引き結んで、藍我は僕の質問に答えたくなさそうだった。
 質問がわからないのに簡単になんでも答えることなんでできなくて、上から睨むように見つめられながらぷるぷると首を振る。

 緊張でどうにかなりそうな空気を裂いたのはやっぱり洸平の軽快な声だ。
 
「そう! 俺、俺」

 詐欺電話か何かのように言うと、ひょいと立ち上がって僕の腕を引っ張った。
 とっさのことによろけながら洸平の傍に行くと、全部を見透かすような瞳と視線が絡む。

「じゃあっ ぉ、前とっ……キス してんのって……」

 思ってもみなかった言葉が飛び出してきて、僕は頭の中が焼き切れて煙が出るんじゃないかって……

「な 何言って 「こーゆーことだろ?」

 洸平があやすように僕のおでこを撫でるから、貼り付けてあった熱を取ってくれるやつがペロリと剥がれる。
 すでに一仕事終えてカラカラに乾いているから剥がされても問題はないんだけど、なんでこのタイミングで剥がすんだろって思ってたら、ちゅって音が脳みそに響いた。

 せっかく熱が下がってひんやりしていたおでこに、温かいものが押し付けられている。

「へっ……? へぇぇ⁉︎」
「こういうことだろ?」

 飛び上がりそうになった体を押さえつけられて、慌てて洸平を見上げた途端、今度はほっぺたと唇がほんわかと温かくなって……
 一際濃く感じた洸平の香水の匂いに、ぇぷちゅんっ! って盛大なくしゃみが出てしまった。

「わっわっ  す、すみません!」
 
 いろいろ口や鼻から飛ばしてしまったせいで、僕の口から出た第一声は謝罪だ。
 粘つくようなものは出ていないけれど、とっても失礼なことをしてしまった自覚はあったから、大慌てで服の裾を引っ張って洸平の顔を拭きにかかる。

「ごめっ  わ、わざとじゃなくてっ」
「ぃてっいててて」

 ぎゅむぎゅむと音が鳴りそうな勢いで顔を擦る僕から逃げようと、洸平がバタバタと部屋の中を走っていく。

「もちょっとちゃんと拭かせてください!」
「もういいって!」

 服の裾を引っ掴んで洸平の顔にグイグイ寄って行く僕の背中に、「もういいっ!」って怒鳴り声が割り込んできた。
 目上の人間である洸平にいろんなもんを吹きかけちゃった手前、そっちにばかり気が入っていたけれどこの部屋にはもう一人、変なことを言い出した藍我がいたことを忘れていた!

「っ  ぅっ」

 恐る恐る後ろを振り返ろうとした僕の耳に飛び込んできたのは、聞き逃してしまいそうなほど小さな呼吸音。

「ら ……藍、我……?」

 ひっ と絹を裂くような甲高い音は、藍我が懸命に息をしようとしている音だって、振り返って気ついた。
 激情に駆られて何かしてしまいそうなのを、飲み込もうとしている呼吸だった。



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