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まこと side
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しおりを挟む一度でいいから なんて想像していたことが急に叶えられて、あわあわと閉じきらない口で悲鳴を上げようと息を吸い込む。
「っ……先輩はっなんでっ……まことのベッドにっ」
一際強い力で抱きしめられて、悲鳴のために吸い込んだ息が何もしないままに押し出されてしまう。
ポカポカと拳を叩きつけても揺るがないくらい筋肉質だって、抱きしめられてドキドキしながら思った。
背も高いし肩幅もあるし……かっこいいし……と、腕の中からちらりと藍我を見上げる。
食いしばっているせいか顎のラインがシャープに見えて、いつもよりちょっと大人びて見えるから、さらに心臓がどきりと鳴った。
「まこに誘われたから?」
「さ、誘ってないですっ」
確かにここに座ってってしたけど、それは誘うとかそんな話じゃない!
藍我に変な誤解されたら って思って慌てたけれど、険しい顔をしているせいで何も言えないまま項垂れた。
「藍我……あの、降ろしてくれない?」
「っ……」
藍我の腕が、力が入りすぎたのかぶるぶると震えて……それからゆっくりとベッドの足元の方へと僕を降ろしてくれる。
間に藍我を挟んで洸平ときょとんと見つめあってみるも、お互いにどうして藍我がこの態度なのか答えを持っていなかった。
「おい、山口。お前ちょっと落ち着けよ」
「オレは落ち着いてますよっ」
そう言いながらも、藍我の態度はいつもと全然違ってて普通じゃない。
「……あんたが……まことの相手なのか?」
絞り出すように藍我が言った言葉の意味がわかんなくて、僕は再び洸平の方を見た……けれど、洸平は視線を合わせてはくれなかった。
それどころかちょっと今にも吹き出しそうな気配までみせるから、僕は訳もわからないままにハラハラと息を詰める。
「……どうなんだ?」
笑いそうな洸平と訳のわからない僕、それから一人怒っている藍我のいるこの場は奇妙な緊張感で満たされて、自分の部屋だというのに居心地が悪くてたまらない。
なのに、洸平は一人楽しそうにしている。
「そんなデリケートな話をさぁ、お前、どの立場で聞くワケ?」
洸平の口調は軽いものだったけれど藍我に大きなショックを与えたのか、はっとした後は気まずそうに項垂れてしまった。
「オレ……は……」
藍我の目が僕を見てゆらりと揺れる。
泣く……わけではなさそうだたけれど、だからと言って平常心ってわけでもなさそうだ。
藍我は僕と洸平を交互に見てから、ゆっくりと僕の方に向き直って手を伸ばそうとして……結局そこで動きを止めた。
「まこと。先輩なのか?」
「な、何が?」
「 っ」
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