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藍我 side
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しおりを挟むオレと桃路は二卵性の双子だ。
だからどこも似てないし体格だってでこぼこだ。
桃路は母親、オレは滅多にしか会わない父親に似たんだろう。桃路じゃない他の人間と比べても随分と体格がいい自覚があるくらいには、身体に恵まれている。
腹の中にいるときに桃路の分の栄養まで吸収したからだとかなんとか、だから桃路の心臓が弱いんだとか、小さい頃は色々と言われたけれど……
「まこちゃんのお見舞いにいってこようかな?」
「明日には元気になってるんだから行かなくていいだろ」
そのやりとりをして……桃路とムッと睨み合う。
桃路はまことに会いたくて仕方がない。
オレはまことに会わせたくない。
お互いの思惑が筒抜けというのはどうにもやりにくいものだ。
牽制し合う火花がぶつかった視線の間でチリチリと音を立てるのが聞こえる気がする。
「明日、学校で会えるから。突然行ったらおばさんだってびっくりするだろうし」
「あ、そっか……お土産も買ってないし」
あっさりと納得するが、田舎のお隣同士だ。
まことはうちに勝手に入ってくるし、オレだってまことの家はフリーパス状態だ。でもそれを桃路に言うつもりはない。
大勢いたまことの近所周りの幼馴染を蹴散らして、何とかオレ一人だけが残ったっていうのに、今更ライバルが増えるなんてたまったもんじゃない。
桃路はやっと手術がひと段落して、オレと同じように……は無理だろうけれど、普通に生活できるようにはなったらしい。でも慌ただしい生活になる都会よりはのんびりできる田舎の方がいいだろうってことで、中途半端な時期だけどこっちに引っ越してくることになった。
そのこと自体は……まぁ、嬉しい。
長年離れて暮らしていたって言っても、なんだかんだ双子だからかそこまで距離を感じないし、家族が元気になるのは素直にいいことだし。
ただ、桃路もまことのことが好きだって知っているから……複雑な気分だった。
桃路はオレの部屋に住むんじゃなくて、親父が用意した駅前のマンションにいったん一人暮らしになる。
オレの家の準備が整ってないってこともあるし、親父がこっちにくる時に家の方には泊まりづらいかららしいけど……
駅前のマンションの部屋に荷物を放り込んで、じゃあなって言って帰ろうとしたら服の裾を引っ張られる。
「何だよ」
「まこちゃんに会いにいったりする?」
「だから、熱出してる奴のとこに行けるかよ」
怒ったように言ってはみたけれど……バレてる。絶対バレてる! オレがこのあとこっそり様子を見に行こうとしてるんだって、桃路はわかっているようでムッとした表情のままだった。
「おばさーん、まことの様子を見にきたよ」
庭先で草むしりしているおばさんに声をかけて、そのまま家に上がり込む。
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