僕(Ω)は貴方(α)の家政夫(β)ですから!

Kokonuca.

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 慌てて生地を回収していると、タイミングを見計らったように家の電話が鳴り出して……大慌てで受話器を取り上げる。

「はい、野分で   」
『はぁ? どの分際でトーマの苗字名乗ってるわけ?』

 「です」を言い終わらないうちに聞こえてきたきつい声に、「家政夫の立場からです」と言い返したいのをグッとこらえて、リンからの電話に丁寧に答えた。

「リンさま、ご用でしょうか? トーマさまは本日は出社さ  」
『わかってるよ、だから僕が電話をかけてるでしょ? トーマが今日は泊まり込むから着替えと食事を届けて欲しいって』
「あ……着替えとお食事ですね」
『何? 嫌なの? 何さまのつもり?』
「いえっすぐにご準備してお持ちします!」
 
 小さな舌打ちが聞こえてきたけれど、そんなことどうでも良かった。

『危ないんだから、ルカを一人でお留守番させたりしないでよ? 留守番中に何かあったらあんたの責任だからねっ』

 吐き捨てるように言って切られた電話を見つめて、家政夫が自分の名前で電話に出ても問題だろとかツッコミたかったのを飲み込みつつ受話器を下ろす。
 前回会社に泊まり込んだ時には何もできなかったことを思い出すと、こうやってリンを挟んででも連絡をくれたことが嬉しくてちょっと胸が弾む。

 遠回しの辞職勧告ってわけじゃなかったんだってホッとする。

「ままの」
「はい。ルカさま、ちょっとお出かけしましょうか」
「ちゃんぽ、するー?」
「はい、準備ができたらバギーに乗ってお出かけしましょうか」

 バギーが随分とお気に入りのようで、ルカはその単語が出た途端飛び跳ねて喜んでいた。





 ルカと一緒に焼いたクッキーに、柚子胡椒をアクセントにした鶏ハムとクリームチーズ、ポテトサラダとベーコン、カレー風味のチキンとキャベツのマリネ等のサンドイッチ、それとは別に生姜焼きをメインにしたお弁当の二食分を用意する。
 着替えは何日分必要かわからなかったから、とりあえず二日分を用意して……

 出かける前に弟たちに送ったメッセージの返事もきていたから、ほっと胸を撫で下ろす。
 弟たちに連絡を取った理由は研究所に併設されている病院で、トーマが紹介できるって言ってくれたそこは、僕がずっとお世話になっている病院でもあった。

 国内の抑制剤の研究ではトップクラスだし、偶然といえば偶然だし必然といえば必然なんだけど、もう抑制剤が底を突きそうだったから正直すごく助かった。

「市販のは……効かないんだよね」

 飲まないよりはマシだけれど、その程度だ。


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