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落ち穂話
お姫さま抱っこの上限
しおりを挟む「……自分で拭く」
僕の手からホットタオルを取ろうとしたトーマの手を避けて、さっさと隣に腰を下ろす。
「背中は届かないでしょうから」
「体を拭くのは……家政夫の仕事じゃない」
キッパリと言い返されてそれもそうかと思うけど、それはそれでやりようがある。
僕は再びトーマの手をかいくぐってネクタイに手をかけた。
「じゃあ、恋人同士ならいいでしょ?」
くいくい と今朝、僕が結んだネクタイを引っ張るとトーマは読みきれない複雑な表情で再びキョロキョロと辺りを見回した。
「ルカは?」
「お昼寝してるよ」
すっかり荷物を片付けたリビング奥の和室はルカのお昼寝スペースに活用されていて、そこを指差しながらそういうとトーマはやっと安心した顔を見せてくれる。
だからその隙にネクタイを解いてスーツを剥ぎ取る。シャツに手をかけようとしたところで慌てて手を止められた。
「?」
「あ……やっぱり自分でするよ」
「僕が触ると都合が悪かったりする⁉︎ 何か見られたらまずいこと……もしや浮気⁉︎」
頑なにシャツを脱ごうとしないトーマに、はっとして言うと大慌てで首を振られる。
そんなに振ったら目が回る……って言う前に、トーマは視界が回ったらしくソファに倒れ込んでしまった。
そして僕はチャンスを逃すような質じゃない。
トーマの服を脱がせるためにシャツに手をかけ……現れた肌にちょっといたずら心が湧いた。
僕と違って日に当たらないそこは白くてしっとりとしていてきめ細かい。
汗をかいているのに汚いとか臭いとかなくて、ほんのりと鼻先をくすぐる汗の匂いは僕の大好きないい香りだ。
夏の大気の中に感じる少し硬い感じの空気、肺いっぱいに吸い込むと幸せになれる匂い。
「 っ、都筑くん……っちょ 」
この匂いを嗅ぐと自然と深く吸い込みたくなっちゃう。
肌の近くの方がもっといい匂いがするから、トーマに乗り上がってすんすんと鼻を鳴らしながら匂いを嗅いでいると、唇がピリと痛んだ。
近づきすぎて下唇が肌に触れちゃったみたいで、はっと唇を押さえるとじんわりと塩気が唇の上に広がる。
汗だからしょっぱいと感じるはずなのに、その奥にあるのは魅力的な甘みだ。
「つ、つづ だめ、舐めないでくれっ」
「ちゃんと拭き取るから……ね?」
普段、恋人の時間を取ろうとするとルカが寝た後になってしまう、そうするとどうしても夜になっちゃうから、トーマはお風呂に入ってしまっていた。
衛生的なのはいいことだけど、そこはやっぱり……ちょっとでも濃い恋人のフェロモンを感じたいというか……
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