鬼は精霊の子を愛でる

林 業

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モリオンはセレスタイトを眺める。
本人は必死で隠しているつもりなのだろう。
だが、暇なときはつまらなさそうだし、嬉しいときは笑顔を浮かべている。
そこらの動物より感情がわかりやすい。

言葉では突き放すような言葉だが表情はしっかりと浮かんでいる。
褒めたり、呼べば、必死にニヤけるのを我慢している顔。
頭を撫でればそっぽを向くが頬は緩み耳まで真っ赤になる。
本人は大人っぽく対応したいらしいが、そういう部分が子供っぽいと気づかないらしい。
寝ぼけたときの甘え具合も可愛い。
また不機嫌になると冷気が漂ってくるのは頂けないがそれでもわかりやすい。
不満がわかりやすければすぐに対応できる。
もっと口に出しても、甘えてもほしいが、冷気が漂うのだけでも十分にわかる。
下手に隠されるよりはいい。
不器用な部分に手出しされるのは自分は許せない。

それに突き放す様子に自覚あるらしい。
しょんぼりと反省しているので問い詰めにくいのもある。
だが、そんなふうに自己反省している姿も可愛いと思ってしまう。


なんだかんだで全部、可愛いので、指摘するつもりは全くない。

街に行く準備を少しずつ整えながら憂鬱そうなセレスタイト。
一人になるのが嫌なのだろう。
わかるからこそ、一緒に街に行きたい。
美味しいものを一杯食べさせて、頬袋を作る。
こんな狭く限られた場所だけではない広い世界を見せたい。
そんな世界を見て花咲く笑顔を見たい。

だが、セレスタイトの家族は麓の街に行ったことで命を落としたと聞いた。
生まれ育った場所を一瞬でも離れたくないのもわかる。
だからこそ上手く誘えないでいる。

そういえば、と思う。
そろそろ夏。
外はこんな猛吹雪だが麓では春の終わりになる。
折角だからと提案してみる。
「海、行かないか?」
「海?」
首を捻り、瞳を輝かせる。
「あのキラキラしておっきい水溜り」
「そう。折角だからちょっと足伸ばして海水浴場行ってみないか?」
「海行きたい」
「よし。じゃあ、一緒に行こう」
勢いに任せて頷かせる。

そして有無を言わさずに山を降りる装備を整える。
彼の父親の装備があるのでなんとかサイズを合わせて、手入れをする。
それだけで少しだけ面白くなってきたのか楽しそうにしている。

獣人族の国の海を楽しみにしてくれているらしく、怖気づく前に早く連れて行こうと心に決める。

早く、吹雪が止んでくれと願う。

ちなみにモリオンが山を降りて街に行く理由。
必需品の購入も理由の一つ。

だがもっともな理由は鬼人はお酒が好き。
そのお酒好きの遺伝は当然モリオンも持つ。
そして現在お酒のストックはない。
つまりはそういうことである。
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