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第一章 はじまり
出会い
しおりを挟む『坊、お主に頼みたい子らがいるんだ。』
黄金に輝く龍、黄龍は筆を持って楽しそうに絵を描いている少年に声をかけた。少年は不思議そうに首を傾げている。
「たのみたい、こ?」
『ああ。この間産まれたんだが......私より、坊に興味があるようなんだ。』
「ぼくに?」
『それに、坊もきっと気に入ると思うぞ。』
そう言い切った黄龍に、少年はスケッチブックと筆を置いて向き合うとその黄金の瞳を見つめた。どんな子?と目が語っている。その瞳に黄龍は満足したように口元を緩め、鋭い爪を持つ手で慎重に懐から数匹のコロコロとしたものを取り出した。
「......かわいい」
『やっと卵から孵ったんだ。赤い雛が朱雀、青い小さな龍が青龍、白い子虎が白虎、小さな甲羅を持つこの子が玄武。四方を守ることになる神獣の子達だ。』
「......ぼくにまかせて、いいの?しんじゅう、なんでしょ?」
『世を経験するのも大事さ。それに、私は坊だから任せるのだよ。』
黄龍の優しげな双眸に少年は視線をその四匹に移した。クリクリとした丸い四匹の瞳が、少年を見つめている。思わず、というように少年はその四匹へ指先を伸ばした。
するとその中の白虎が甘えたように擦り寄り、ぺろりと舐める。
「わっ」
『ふふっ......こやつらも坊を気に入ったようだ。どうだ?任されてくれるか?』
まだ四つの少年には難しい話かもしれないと黄龍はわかっていながらもその話を持ち出した。何故なら、少年が聡明で他の子とは違うナニかを持っていると確信しているからだ。生まれた頃から見守ってきた少年に任せたいと本能で感じたのだ。
現に、四匹を見つめるその瞳は思慮深く、想いに溢れている。少年は決意したように黄龍を見た。
「......わかった。がんばる。」
『ありがとう。坊がそう言ってくれてよかった。こやつらには坊を守るように言ってある。人間の一生分くらい、我らには短いものだからな。』
「ん......ありがと。これからよろしくね。」
ふわりと少年は笑って四匹をまとめて抱き上げた。嬉しそうな鳴き声が四匹分。随分と好かれたようである。
黄龍も嬉くなり、少年の小さな身体に優しく擦り寄るのだった。
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