ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

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素質

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 翌日、もふもふに囲まれながら目覚めたリッカは、かすかに聞こえる喧騒に眉を顰めた。騒がしい。いったい何なんだと窓を覗けば、門に群がる市民たちがちらほらと見えていた。昨夜のうちに何かがあったのだろうかと考えるが、思い当たる節はない。
 リッカが起きたことで目覚めた神獣たちも、ことの異常性を訴え始めた。

 『何かが、おかしいですわ。』
 「やっぱり?」
 『悪意……?いや、大半が疑惑?みたいだねー』
 「疑惑……ってなんだろ?」

 青龍がお得意の感情探知で探ふかまるばかりであったようだが、余計に疑問は深まるばかりである。部屋の外に出て誰かに聞こうと考えたリッカだが、契約の儀の後からというものの、あまり使用人たちとの仲がよろしくなかった。要は聞きにくいという訳である。しかし、現状把握が第一。神獣たちを連れ部屋を出ると、やはりというべきか複数の悪意ある視線で貫かれた。
 居心地が悪いにもほどがある。

 『まま、こうげきする?』
 「ダメだよ。シロくんがそういうことする必要ないからね。」
 『では私が眠らせましょうか?』
 「それもだーめ。無駄なことに力は使わなくていいの。」

 本音を言うと、リッカ的にはその視線をやめてほしかった。いや、悲しいからとかそういう理由ではなく、単純に神獣たちがリッカのために行動を起こそうとしてしまうからだ。
 困ってしまってため息をついた時、リッカの前に獣の尾をもった細身の執事が背を向けて立っていた。初めて見る執事だ。首を傾げているとその執事は静かに口を開いた。

 「各自、持ち場に戻りなさい。そして、リッカ様に悪意を向けたものはすぐさまここから立ち去りなさい。」

 威圧をもって告げられたそれに、びくりと何人かのメイドと執事が反応し、動けなくなる。口調自体は強くないのに、どこか逆らえないオーラがそこにはあった。
 目の前に立っていた執事は気を緩めてリッカへ向き直る。

 「申し訳ございません、リッカ様。如何なさいましたか?」
 「あ、えっと……あなたは、」
 「ここの使用人をまとめております、獣人族けものびとぞくのクロスです。中々タイミングが取れなくてお会いするのは今日が初めましてですね。」
 「あ、はい……初めまして、です。」
 「じいに敬語は必要ございません。ところでリッカ様はどうなさいましたか?」

 獣人族けものびとぞくと言ったが確かに獣の耳のようなものと尻尾があり、顔も獣寄りだった。それは何処か犬科に似ていて、何の獣人かリッカは首を傾げる。しかし今はそれどころではない。クロスならば現状を教えてくれそうだったので、リッカはちょいちょいと自分の方に手招きし、こそこそと尋ねた。

 「今、何が起こってるのか教えてもらってもいい?」
 「現在、でございますか?承知いたしました。どうやら昨日からリッカ様に関する妙な噂が街中に広まっているようです。」
 「妙な噂?」
 「はい。なんでも、リッカ様が契約なされた魔獣がランクの低いものである、というものらしいのです。それで、噂の真偽を確かめるべく、こうして朝から屋敷に詰め寄っているようですよ。迷惑極まりない行為ですな。」
 「ランクが低いって……いったい誰が、」

 そこまで口に出して、リッカは心当たりがあることに気づいた。昨日会話したのは色絵具を買ったお店の店主と、難癖をつけてきたタイチとダグラである。おそらく後者の二人が噂の出所だろう。まあ、出所を知ったところで今は何をする気もないが。
 しかし、噂が広まったところでどうしてこう市民が押し寄せてくるのだろうか。皆目見当もつかない。そんなリッカに気づいたのか、クロスは苦笑いしながら教えてくれた。

 「リッカ様はご自分の魅力を分かっておりません。裏庭は外からも見える場所がございます。彼ら市民は裏庭で動物や魔獣と戯れるリッカ様をたまたま目撃したことがあるのですよ。そこでリッカ様に魅了された。だからこそ、リッカ様の契約した魔獣が本当にランクの低いものなのか、気になっているのです。」
 「魅了って……僕、女の子じゃないんだけど、」
 「女の子ではなくとも、リッカ様は魅力的ですよ。特に、我々獣人族けものびとぞくのような者にはね。」
 「へ、へぇ……」

 にっこりと告げられたそれに冷や汗をかきながら、肯定しておく。そしてリッカは、あることに気づいたのだ。クロスは、この屋敷にいるどの使用人とも、違うということに。

 「あ、あの……」
 「はい?」
 「クロスは、何も思わないの?」
 「何も、とは?」
 「ほら、他のメイドさんや執事さんは僕の従魔のことを見て、結構……あれだったんだけど、クロスはないなぁって、思って……」
 「ああ……だって、リッカ様はリッカ様でしょう?それに、リッカ様が連れているのが神獣様であることは分かるんですよ。これでも、昔は腕利きの冒険者だったもので。」

 こっそりと告げられたそれにビックリしすぎて声も出なかった。まさか神獣であると見破られているとは思わなかったのだ。しっかりと封印の呪をかけているのにどうして、と焦りを覚える。いくら腕利きとはいえ見破られてしまうようじゃダメなのだ。
 そんなリッカの焦りが伝わったのか、クロスは安心させるようにリッカの頭を撫でた。

 「落ち着いてください。私が神獣様だとわかったのは、契約前に神獣様たちと戯れるリッカ様をお見かけしたからですよ。昔の経験もありますが、さすがにそれだけでは私も分かりませんでした。すばらしいですね、リッカ様の封印の呪は。それに、私は神獣様たちの言葉はあやふやにしか理解できませんから、旦那様や奥様ほどではございません。それより、奥の部屋へご案内いたします。お二人と領主様が待っていますよ。」

 はぐらかされたように別の要件を取り付けられるも、リッカは見破られていたわけではないことにほっとしていた。しかし、あやふやでも理解できるということは、それなりに腕が立つということである。新たに知った事実に心をわくわくさせながらもリッカは言う。

 「今はそれで流されてあげる。お話聞かせてよね。」
 「存分に。私の話でよければいくらでもお聞かせいたしましょう。」
 「じゃあ、ありがと、クロス。」
 「いえいえ。」

 そうして約束を取り付け、リッカは奥の部屋を開けたのだった。



 
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