ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

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 「失礼する!」

 勢いよく開けられた扉から入ってきたのは先にも話題に上がっていたアズマ家の現当主であるサイガであった。後ろにはウルフを連れたタイチの姿もある。ここはトウドウ家の屋敷の中。何故こんなところにアズマ家の者がいるのかとセイイチの表情は険しくなる。

 「何故入ってきた?」
 「ふん、無能が息子の貴様に口答えする権利があるとでも?」
 「たかが噂に踊らされるなんて、アズマも落ちたものだ。」
 「私の息子がそう言ったんだ。噂でも真実に決まっているだろう。」

 まさにああ言えばこう言うではないが、途端に始まった言葉の攻防に仲の悪さを知っているヒイラギですら唖然としてしまっていた。リッカも同じである。タイチに至ってはニヤニヤとリッカのことを見ているようだが、別の意味でサクラもにこにこと笑っていた。いや、笑っているのだろうが微妙に目が起こっているようにも見える。

 「サイガよ、私のいる前で他家を侮辱するようなことを言うでない。」
 「しかし領主様、領主様も知っているでしょう?この街では無能に権利はないと。」
 「どこで、誰がリッカを無能だと言ったのだ。お主はリッカの従魔を見たのか?」
 「今見ました。しかし数は多くとも所詮は低級。無能であることに違いはありません。」
 「お前、いい加減にしろ!先ほどから無能無能と……リッカは無能ではない!」

 サイガの言葉にセイイチが声を荒げると、まるでそれを緩和させるようにサクラが一度、拍手を打った。突然のそれに、サイガもセイイチも、さらには認識を改めないことに苛立ちを覚えていたヒイラギも、はっとした。タイチは何が起こっているのか分かっていないのか、自分の父と拍手を打ったサクラを交互に見て、疑問を浮かべている。

 「母様?」
 「ごめんなさいねぇリッカ。少し、リッカの力を借りてもいい?」
 「はい……それは大丈夫ですけど、どうかしましたか?」
 「ありがとう。少し熱くなりすぎている大人たちを静かにさせたいと思うのよ。」
 「はぁ……?」

 後ろに修羅のようなものを抱えたサクラはこの場にいる誰よりも怖い。これにはタイチもおびえて震えているように見える。が、母はこんな性格だっただろうかとリッカは首を傾げていた。そんなリッカに、神獣たちは苦笑いをするばかりである。
 そして、サクラがリッカに言った言葉は他の四人にも聞こえていたようで、サクラがリッカに頼みたいこととは何なのだと言い合うことも忘れ、皆サクラとリッカに注目していた。

 「要は今は、リッカの従魔ちゃんが弱く見えるから、問題なのよね?」
 「まあ、おそらく簡単に言えばそうかと……」
 「だったら戦ってみればいいのよ。」
 「はあ!?」
 「別に隠しているわけではないのだし、良いんじゃないのかしら?ねぇ、領主様?」

 急にサクラに話を振られたヒイラギはしどろもどろになりながら頷いた。ヒイラギが言っていたのは、神獣をそのまま野放しにできないということと、もし神獣と契約していると知れて、心無い市民から恐ろしいものを野放しにするな、なんてことを言われないように封印の呪を付けて契約してほしい、というものだったのだ。
 別に絶対に知られてはいけないというわけではない。故に、ヒイラギも頷いたのだ。
 
 「戦うって……その低ランクの従魔とタイチのウルフが?そちらのぼろ負けで終わると思いますが?」
 「やってみなければ分からないでしょう?それともなぁに?自信がなくて?」
 「仮に戦うとして、流石のウルフも四対一では公平ではないと思うが?」
 「あら、リッカにも一匹で戦ってもらうわ。いいわよね?リッカ。」
 「は、はい……」

 サイガとサクラの間でどんどん話が進んでいき、結局いつの間にか戦うことになっていた。別にリッカとしても構わないし、むしろ神獣たちはやる気満々で困ることは何もないのだが。タイチは勝ちを確信しているのか、リッカのことをかわいそうなものを見る目で見ている。正直ムカつくからやめてほしいというのが本音である。

 「おいおい、領主の私を置いて話を進めるでない。」
 「領主様も了承なされたではないですか。場所はどういたします?」
 「……はぁ、いくら言っても無駄なのだろうな。よかろう、場所は街の広場だ。これを機に市民の疑惑も解いておこう。」
 「い、いいのか?リッカ……」
 「……これに口を挟めますか?父様。」 
 「無理だ……」
 「でしょう?」

 今まで黙っていたセイイチがリッカにそう問いかけるが、諦めたような声色に閉口してしまった。もう一度サクラとサイガ、ヒイラギを見れば広場での模擬戦闘を詳しく決めているらしい。ちなみに、フィラノの街の広場は中央にバカでかいものがあり、そこでは領主の許可を取ることで、従魔での模擬戦闘をすることができる。よって、今回の模擬戦闘もその大きい広場で行われることになったのだ。
 普段はベンチやテーブルを置いたりして街の人々の休憩所のようになっている。街の人々が普段利用しているからこそ、模擬戦闘を行うときは事前に通告されるので、観客も多いのである。

 『どうしたの?まま』
 「んー?どうしようかなぁって」
 『模擬戦闘のことですか?こちらも一体しか出せないのであれば、選択肢は決まっていますよ。』
 「そうなの?僕としては誰でもいいんだけど……」
 『まず玄武と私は除外です。玄武も攻撃できますけど、お母様の結界に集中してほしいですし、同様の理由で私もです。』
 「ふんふん」

 朱雀は一息つくと、青龍を見下ろした。

 『青龍はそもそも攻撃が派手なので、ダメです。』
 『えー!言うほど派手かー?』
 『派手ですよ。魔法攻撃がメインじゃないですか。』
 「じゃあシロくん?」
 『はい。唯一の近接攻撃もちで、力のセーブもこう見えて一番上手ですから。』
 「へぇ……すごいねぇ、シロくん。」

 なでなでと白虎の頭をなでれば、嬉しそうにリッカの手をなめてくる。そんなことを繰り返しながら癒されているうちに気づけば話し合いは終了していた。


 
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