47 / 91
第二章 アカデミー 入学編
・
しおりを挟む「あらノアさん。そちらが噂の新入生ですか?」
部屋の中に入ったノアの肩越しに部屋の中を覗くと意外と広々としていて部屋の三分の二のところでカウンターのようなもので仕切られ、三分の一の奥側には数名の女性が控えておりその後ろには棚が山ほど並べられ中には資料が大量に入っているようだった。例えるなら以前一度だけ訪れたギルドのような作りになっている。
どうやらあちらの女性たちにはリッカ達のことがもう知れ渡っているようで、何やら歓迎の空気が流れていた。
「えっと……」
「もうすでに僕とジルさんが根回ししておいたんだよ。詮索されるのも好きじゃないだろうしね。」
「……ありがと。」
「根回しって……なんて言ったんですか?」
「新入生の中にものすごく有能な子がいたから僕のパーティメンバーに入ってもらうことにしたってね。」
一体その説明でどういう噂が飛び交ったのか。考えるのも恐ろしいので一旦やめにしてノアの後に続いた。目が合った女性にぺこりと頭を下げるとにこやかに微笑まれた。相手が名乗らないからと名乗らなかったり、いかに相手が知っていたとしても挨拶をしないのはヤマトの礼儀に反する。リッカとタイチはノアの一歩前に出ると声を上げた。
「今年からここのアカデミーに通うことになったリッカ・トウドウです。こっちは僕の従魔たち。」
「同じくタイチ・アズマです。こいつが俺の従魔です。」
「あらご丁寧に。私はここ、依頼受注報告所の責任者のマリアと申します。以後よろしくお願いいたしますね。」
「とりあえず何か分からないことがあればマリアに確認すると確実だから。僕がいないときとかはマリアに聞いてね。」
そのノアの言葉にリッカもタイチも頷く。マリアもだが他の職員もその様子をにこやかに眺めているようだった。挨拶も終え、カウンターを挟んでマリアの前に立つとマリアから用紙を受け取る。それがどうやらパーティの申請書のようで六人分の枠があった。そこに三人分の名前をノアが記入してくれてそのまま提出と相成った。もちろんパーティリーダーはノアである。リッカはする気がないし、タイチはリッカがダメならノアがいいんじゃないかと提案したというのもあるが。
マリアはその用紙を受け取ると何か印鑑のようなものを押して何も挟まっていないファイルを取り出し、表紙のポケットにその用紙を挟める。どうやらそれがこなした依頼用紙を挟めていくファイルらしい。
「へぇ……そうやって管理するんだ……。」
「ええ。一応まとめたものも作りますけど、こうやって保管しておく方が後からポイントの概要を見返せるのでいいんですよ。変にいちゃもんを付けられてもたまりませんから。」
「過去何回かそれでいろいろ問題になったこともあったんだよね。」
「そうなんですよ。もう大変で……それ以来依頼用紙は個別にまとめることにしたのです。」
リッカのこぼした独り言にマリアが答えてくれる。それなら問題が発生しても解決するのは楽そうなのでなるほど、と一人納得していた。パーティの申請も終わり、今日は依頼を受けに来るパーティもいないだろうからとそのまま報告所の椅子とテーブルを借りてこれからのことをノアから教えてもらうことにした。
「依頼は必ずここで受けて、完了報告もここでするんだ。さっきも言ったように報告は必ずしないと成績ににも関係するからね。」
「報告はパーティリーダーがするんでしょ?」
「うん。一応そういうことになってるよ。」
「じゃあ心配ないね。」
「あの、依頼ってどういうのがあるんですか?」
ずっと気になっていたのか、タイチが思わずと言う風にノアへ尋ねる。依頼と言ってもちゃんとギルドから流されたものであるため難易度的にもどういうのがあるのか知りたかったのだろう。リッカはあまり気にしないが、タイチは割と気にするタイプなのである。
「採取系から討伐系まであるよ。ちゃんと難易度も分けられててパーティの実力に合わせてリストをここの職員の人が渡してくれるから、その中から選ぶんだ。ちなみに僕らのパーティの担当職員はマリアさんだよ。」
ノアがマリアの名を出すのでふいっとそちらに顔を向けると彼女はひらりと手を振っていた。
「最初は採取系とかの非戦闘系からやっていこうね。ある程度慣れれば討伐系もしていこう。戦闘の基本も身についているんだよね?」
「もちろん。僕はまあ……優秀な”先生”にそもそも仕込まれてるから。」
「俺は父に……だから戦闘はある程度問題ないかと思います。」
「そっかそっか、そうだよね。あのカガチ先生にあれだけいい評価されるんだし、できないわけないか。それに、確かに優秀な先生だ。ビックリしたよ。」
ノアの手はリッカの耳飾りに触れるか触れないかで彷徨っている。髪をするりと除けたそこには黄金色に輝く黄龍の鱗。そう、リッカの先生はどこの誰よりも優秀な教師なのである。そのことにノアが気づかないはずもなく、ただ純粋に驚いているようだった。表情には出ていないが。
「明日の課外授業が終われば明後日からはしばらく座学が続く。だから、しっかり頑張っていこうね。」
「はい。よろしくお願いします。」
「よろしく~。」
そうノアが締め、リッカ達が立ち上がったところでちょうど大きな鐘の音が鳴った。何だ?と首を傾げているとノアが授業終わりのベルだということを教えてくれる。そして、今から他の三学年までの生徒は座学が待っているがリッカ達には何もない。四学年から上はこのあと自由時間なのである。ということでリッカはノアを引き連れて入学試験の時に訪れた主が三匹いる桜の大樹があるところまで歩いてきた。ふわふわと桃色の塊がリッカの手のひらの上にコロンと落ちてくる。そう、ここの主である。
「久しぶり。ちゃんと来たよ。」
そう言ってリッカが主たちと視線を合わせると彼らは嬉しそうにリッカにすり寄ってきた。
1
あなたにおすすめの小説
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
転生美女は元おばあちゃん!同じ世界の愛し子に転生した孫を守る為、エルフ姉妹ともふもふたちと冒険者になります!《『転生初日に~』スピンオフ》
ひより のどか
ファンタジー
目が覚めたら知らない世界に。しかもここはこの世界の神様達がいる天界らしい。そこで驚くべき話を聞かされる。
私は前の世界で孫を守って死に、この世界に転生したが、ある事情で長いこと眠っていたこと。
そして、可愛い孫も、なんと隣人までもがこの世界に転生し、今は地上で暮らしていること。
早く孫たちの元へ行きたいが、そうもいかない事情が⋯
私は孫を守るため、孫に会うまでに強くなることを決意する。
『待っていて私のかわいい子⋯必ず、強くなって会いに行くから』
そのために私は⋯
『地上に降りて冒険者になる!』
これは転生して若返ったおばあちゃんが、可愛い孫を今度こそ守るため、冒険者になって活躍するお話⋯
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
こちらは『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の可愛いくまの編みぐるみ、おばあちゃんこと凛さんの、天界にいる本体が主人公!
が、こちらだけでも楽しんでいただけるように頑張ります。『転生初日に~』共々、よろしくお願いいたします。
また、全くの別のお話『小さな小さな花うさぎさん達に誘われて』というお話も始めました。
こちらも、よろしくお願いします。
*8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
月が出ない空の下で ~異世界移住準備施設・寮暮らし~
於田縫紀
ファンタジー
交通事故で死んだ筈の私は、地球ではない星の一室にいた。ここは地球からみて異世界で、人口不足の為に他世界から移民を求めており、私も移民として転移させられたらしい。ただし移民だから言葉は通じないし生活習慣も違う。だから正式居住までの1年間、寮がある施設で勉強することになるようだ。
突然何もかも変わって、身体まで若返ってしまった私の、異世界居住の為の日々が始まった。
チートなし、戦闘なし、魔物無し、貴族や国王なし、恋愛たぶんなしというお話です。魔法だけはありますが、ファンタジーという意味では微妙な存在だったりします。基本的に異世界での日常生活+α程度のお話です。
なお、カクヨムでも同じタイトルで投稿しています。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる