ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

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授業編

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 『うぇっ!?』

 神獣の中でも末っ子属性だった白虎は自分が上に見られることに慣れていない。むしろ、今までそうなかったのだ。初めて兄と呼ばれ悲しそうな表情をされてしまっては大声で反対だ!と言うのが躊躇われてしまう。密かに兄と言う存在にあこがれていた白虎には効果てきめんだった。

 「あちゃー……こりゃ早いよ、落ちるの。」
 『白虎は兄ちゃんっていうやつに憧れてるからなー……』
 『フェンリルも上手いですね、あの切り出し方だと白虎は反論ができませんから。』
 「ああ見えて実は意外と強かだったりする?」
 『可能性はなくもないよね。』

 何せ今まで守ってくれるはずの母がいなくなってもなお一人で生き延びてきたんだから、と。玄武のその言葉にリッカは納得したように頷いてしまった。それなりに強かでなければこの世界は生き延びれない。魔獣のことをよく理解しているだけにそこの世界が甘い考えだけでは生き延びれないことなど百も承知だ。苦笑いをこぼしながらリッカが追い詰められている白虎を見ると話は佳境に入っているようだった。

 『あの、えっと……』
 『ぼく、ひとりだったから……おにいちゃんはいっしょにいてくれないの……?』
 『僕!?う、うーんと……僕じゃ決められないっていうか……』
 『おにいちゃんは、ぼくがきらい……?』
 『き、嫌いじゃない、と思うよ!でもね、一緒にいれるかどうかは僕が決められることじゃないの……』
 『でもさいしょ、おにいちゃんはんたい、してた……』

 リッカの腕の中で白虎と交渉を続けるフェンリルは分かりやすく声に震えを持たせていた。表情の見えない白虎にはそれが泣いているように見えていたのだろうがリッカには分かっている。フェンリルは泣いてなどいない。あくまでそう見せているだけなのである。なんとも強かな性格だ。リッカが苦笑いをして白虎を見るとそれはそれは困ったように、それでいてどうしようもできないことに歯がゆさを覚えリッカに泣きつこうとしているところだった。純粋でかわいいやつである。

 「大丈夫?シロくん。」
 『だいじょばない……助けて、ままぁ……』
 「ふふふっ……珍しくリズム崩されてたねぇ。……シロくんはどうしたいの?」
 『……むぅ。』
 「言わないと分からないよ?」

 と、リッカは言うものの白虎の答えなんてほぼ分かっている。心の深いところでつながっているので大体の想いは伝わってくるのだ。反対だけど連れて行きたい。リッカを取られるのは嫌だけど、フェンリルを一人にするのも嫌だ。そんな葛藤がありありと伝わってきてリッカは笑うのを堪えられないのである。ちなみに朱雀や青龍、玄武にも伝わっているので微笑ましいという表情で見られているわけだが。
 うっうっとリッカとフェンリルを交互に見て、白虎は観念したように肩を落とした。

 『……最初は、やだったけど……でも、フェンリルを一人にはできないし……ままがいいのなら、連れていきたい。って思ってる……。』

 あと、おにいちゃんって呼んでくれたし。と付け加えるようにぼそりと言われたそれに半分くらいそっちがあるかなぁとリッカは頷き、腕の中のフェンリルと目を合わせた。にっこりと笑い、フェンリルに座るよう促す。

 「と、言うことでね?シロくんはキミを連れて行きたいみたい。もちろん僕もね。すーちゃんたちはどう?」
 『お母様がそう言われるのでしたら。それに、フェンリルには興味があります。』
 『どうせ言っても聞かないんだろー?それに仲間が増えるのは悪いことじゃねぇし。』
 『異論はないよ。ただし、お母さんを裏切るような真似をしたら絶対に許さないから。』

 厳しいことを言うようだが、これもしょうがないのである。神獣たちは良くも悪くもリッカが最優先であるのでリッカに何かあるのであれば黙っていない。そういう意味で釘を刺しているわけである。とはいってもそのフェンリルにもリッカを害そうとする気配は一切見られないのだが。フェンリルはコクリコクリと上下に首を振るときょとりとリッカを見る。
 リッカはふ、っと笑ってフェンリルを手招きした。

 「みんなと仲良くできる?」
 『できる、……したい。おにいちゃんとおねえちゃんといっしょ、いたいの。』
 「うんうん、じゃあ一緒にくる?」
 『……!!』
 「うちは人数が多いからね。にぎやかだよ?」

 手を差し出しながらリッカが言うとフェンリルは嬉しそうにその手に右の前足を乗せた。



 『いく!!』


 
 嬉しそうな表情に白虎も満足げである。嬉しいといった態度が隠せていないフェンリルは思い立ったように首を傾げた。

 『おにいちゃんたちのこと、なんてよべばいいの?……いっぱいおにいちゃんいる。』

 確かに性別は関係ないにしろ口調や性格で言えば朱雀は姉、白虎含めた他の神獣たちは兄となる。全員を全員兄とは呼べないとフェンリルは思ったのだろう。困った風にリッカの横を歩くフェンリルへリッカはアドバイスをするように声をかける。

 「名前の最初ににいとかねえとか付けたらいいんじゃない?それだと分かりやすいでしょ?」
 『シロにい、せいにい、ゲンにい、すーねえ?』
 「んーアオくん……青龍はアオにい、でいいと思うよ。混乱しそう……」
 『おう。まあ仲間になるんだし、いいぜー?白虎もいいよな?』
 『いいよ……むしろ呼びにくいだろうし。ところでフェンリルはままのこと、なんて呼ぶの?』

 ずっと気になっていたと白虎がそう言うとフェンリルは決まっているだろうと言わんばかりに快活に言った。

 『りっか!』

 その返答に驚いたのは他の誰でもないリッカである。てっきりママとか母を連想させる言葉で呼ばれるのかと思っていたのだから。しかしフェンリルも賢い子だ。ここのところは何か思うものがあるらしい。

 『ままは、いなくなったの。……りっかは、ままじゃないでしょ?だから、りっか。』
 「そっか。……フェンリルにも呼び名を考えてあげなきゃね。」
 『!……たのしみ!』
 
 リッカの台詞に嬉しそうに返事を返すと軽い足取りで先頭を歩いている白虎の元へ駆け寄っていった。先にも言った通り白虎とフェンリルの体格には結構な差がある(成猫よりも少し大きいくらいの白虎と大型の魔犬サイズのフェンリルでは何倍もの差になる)のでフェンリルは歩幅を合わせるのがそれはそれは大変そうであるが、その様子はとても楽しそうであった。
 リッカの頭や肩の上、バッグの中に入っている面々はそれを穏やかな表情で見つめているのだった。

 
 
 
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