ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

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授業編

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 リッカがフェンリルを連れてカガチの待つ場所へ戻った時、やはりと想像していたように他の生徒たちも集まっていた。成果は無いようで様子から見るにリッカを待っていたのだろう。ちらりと視界に入ったタイチはすでに契約を済ませたのかウルの頭の上に小さな魔獣が乗っている。
 と言うのも、リッカは魔獣に懐かれる体質であるため普通に野良の魔獣に触れているので何ら不思議には思わなかったのだが、そもそも普通の人間は野良の魔獣には触れない。よっぽど気に入られるか、力のない魔獣、もしくは怪我などでまともに動けない魔獣ならともかく、元気な魔獣なら攻撃をされて終わりだ。特別な訓練を受けているでもないし、野良の魔獣と言葉を交わすこともできないので、気に入った魔獣を連れて集まってくるなんてできないのである。よって、生徒たちがやろうとしているのは先に陣を完成させてお目当ての魔獣を呼び込み、陣の力でこちらの要望を伝え相手から了承をもらう、という形の契約だ。大前提としてフィラノ式とは異なるのである。フィラノ式は陣の力をすべて契約に使うので魔獣に意思を伝えるなんて言う無駄な動作を組み込んでいないのだ。つまり自分の力で相手に言葉を届けなければいけない。だから文言が決まっていないのだ。そういうところからもフィラノ式の契約が難しいと言われている所以である。
 見るからに生徒たちはそわそわとしていて早くしてほしい、というような様相だったので気になった魔獣に目星をつけて戻ってきたのだろう。

 「お、戻ったか。」
 「うん。やっぱりみんな連れてないみたいだね。」
 「まあな。だが一通り目星はつけてきたみたいだぞ。あとはお前待ちだ。」
 「陣が違うから僕の見ても参考にならないと思うんだけど……。」
 「まだ言うか?要はちゃんと契約できるって言うのをちゃんと自覚して自信をもって欲しいだけだからな。妙な迷いは失敗を招く。」
 
 もっともだった。カガチの期待を含んだ眼差しにリッカはたじろぎため息をつく。基本的に契約は見せるようなものではないのだが、致し方ない。リッカの後ろに控えていたフェンリルに視線を落とし、彼と目を合わせるといつでも大丈夫だと言わんばかりにニッコリと笑い返されてしまう。
 リッカは覚悟を決めて腰にあるウエストバッグから魔法陣用のチョークを取り出した。さて準備だとその場に腰を下ろした時、カガチが慌てたようにリッカに駆け寄ってくる。どうやらちゃんとリッカの契約相手を視認して初めてその存在に気づいたようだ。

 「リッカ……!!」
 「なぁに?」
 「お前その魔獣……もしかして、」
 「ん、フェンリルのこども。皆が見つけてくれてね……この子も一緒に来たいって言ってくれたから。」
 「いや、……うん、まあ……いいか。」
 「なにその反応。……そう言えばこれ、封印の呪はいるのかな?」

 何とも言えない反応を返したカガチにリッカはじとっと横目に視線を向けながらふと思う。神獣たちの時はその特異性からヒイラギに封印の呪を施すように言われた。しかし、今回はそのヒイラギもいない。封印の呪を施すべきか悩みどころなのである。フェンリルも聖獣だ。しかし聖獣は個体として一しか存在しない神獣と違って絶対数はかなり少ないものの普通の魔獣のように母から生まれ育ち、やがてその土地の守護をするようになるので決してリッカたちに着いてきたフェンリルだけしかいないわけではないのだ。
 フェンリルは滅多に人前に姿を現さないため、資料その他諸々はすべて見たものからの言伝か想像で描かれる。リッカがフェンリルを見てその姿からフェンリルだと認識できたのも父であるセイイチが見かけたことがあると話してくれたからだ。父の経験談にはいつも助けられる。よって、神獣や聖獣のことをまだ学んでいない生徒たちにはリッカが連れてきたのがフェンリルだとは気づいていないだろうし、学んだとしてもリッカが入学試験の時に読ませてもらった資料からじゃ今リッカと一緒にいるのがフェンリルだとはそう気づけないだろう。
 逆に言えばフェンリルだと気づいたカガチもまた、どこかでフェンリルと出会ったのか本来のフェンリルの姿を聞いたのだろう。
 それは置いておいて、リッカが魔法陣を描いている段階で封印の呪を入れるかと言うところで止めているとカガチは悩むように顎の下に手を置き、考えるそぶりを見せて一つ頷いた。

 「いや、いらんだろ。稀少だからと狙ってくる輩もいないではないだろうが、お前が連れているのは神獣たちだからな。撃退できるだろう。」
 「……それもそうだね。じゃあそのまま契約するよ。」
 『もうする?』
 「うん、あとちょっとで陣ができるから、フェンリル以外は離れててね。」

 暢気に明るく返事をし、そのままタイチの方へと去っていった。その様子を見ながらカガチは呆れたように小さく息をつく。カガチも神格を持つ従魔がいるためその言葉を理解してしまうのだ。余計にやるせない気持ちが強いのだろう。ヤマトのシークで神獣がうんたら、聖獣がうんたらと調査している者たちを知ってるだけになおさら。
 リッカがチョークで魔法陣を描き終えると辺りに緊張感が生まれたのを察した。ぴりっとした空気に眉間に皺をよせ、魔法陣に魔力を流し込む。フェンリルを呼び込んでするりとその頭を撫でた。

 「さ、契約しよっか。」
 『うん!』
 
 あまりにも軽く言われたそれにふっと緊張感が一瞬解ける。リッカはフェンリルと目を合わせにこっと微笑んだ。

 
 「フェリ、僕とずっと一緒にいてくれる?」


 それは、神獣たちとの契約でも告げた言葉、そして呼び名。フェンリルは嬉しくなったのか興奮したように大きな声で返事をした。

 『もちろん!』

 周りには鳴き声を上げたようにしか聞こえていないのだが、聞こえているタイチやカガチにはそれが全力の同意であることに気づけただろう。その声と共にフェンリルは光に包まれ、良く見慣れた桜の花びらがその周りをひらひらと大量に舞っていた。
 それはとても美しく、荘厳で綺麗な光景。生徒たちや、あのタイチやカガチでさえ見惚れたように黙り込んでしまった。
 これもすべて、リッカの趣味である。リッカがきれいだと思ったから解札を使うときにも桜が舞うようにしたし、フィラノ式の契約の儀の時も花びらが舞うよう少し書き換えたのだ。こういうことができるのもしっかり魔法陣を理解しているからと言えるのだが、果たしてそのことに気づけた生徒たちは何人いるだろうか。
 光が収まると契約前よりも白銀の輝きの増したフェンリルが佇んでいた。

 「よし、ちゃんと契約できたね。」
 『ふういんのじゅ?っていうのしたらもっとふかく、つながれるんだよね?ぼく、そっちがよかった……』
 「いいんだよ、このままでもしっかり繋がっているでしょ?」
 『うん……』
 「それに、封印の呪がかかってるシロくんたちはいろいろと制限があるから、フェリにはいっぱい活躍してもらうよ?」
 『そう?じゃあいっか……』

 すこし残念そうではあるが、幾分か嬉しそうである。よしじゃあ終わり、とリッカが言い神獣たちのいるタイチの方へ駆けていくと硬直の解けたカガチが気を取り直すかのように口を開いた。

 「ってな感じで、文言や陣は異なるが流れは大体一緒だからな。契約はできる。あとはお前たちが実力相当の相手と契約すればいいだけだ。それから、変に陣を変えようとするなよ?あれはちゃんと理解できていなければ失敗する代物だからな。きちんと手元の陣のお手本を見ながら描け。何かあれば俺か……そうだな、リッカやタイチにも聞いていいから、疑問は疑問のままで放置するなよ。」

 じゃあ再度解散、とカガチが告げたところでリッカとタイチは数人の生徒に囲まれることとなった。


 

 
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