ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

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授業編

龍種

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 風魔法の中でも上級魔法に位置する《空歩エアーウォーク》をさらりと行使し1歩1歩と空を進むフェリにリッカは思わずおおっと感嘆の声をあげた。それもそのはずで、この《空歩エアーウォーク》はリッカが今一番覚えたい魔法なのである。空を歩く=空を自由に動き回れるので行動の幅が増える。タイチの従魔であるウルも簡単にこの魔法を使うが、実の所とても制御の難しい魔法なのだ。
 ちなみに同じような魔法に中級の中でも上位に位置する《飛翔フライ》があるのだが、こちらは《空歩エアーウォーク》と違って小回りが利かないし魔力消費量の割に持続時間も短めだ。なにより、使っている時は背に翼のようなものが出現するのでかなり目立つ。そういうわけでもの好きや切羽詰まった状況でない限りはあまり使わない魔法である。そしてリッカも《飛翔フライ》は使えるが 《空歩エアーウォーク》は使えないという現状である。なので、《空歩エアーウォーク》をすんなりと使って見せたフェリに感嘆の声を上げたのだ。

 「フェリは《空歩エアーウォーク》使えたんだねぇ……。」
 『ま、まあね!りっかはできないの?』
 「残念ながら、まだ練習中なんだよ。なかなか感覚が掴めなくてね……。」
 『じゃあこんど、ぼくがおしえてあげるよ!』
 「ほんと?それは頼もしいなぁ。」

 お願いね、とリッカから褒められ頼まれごとを受け取ったフェリは気を良くしたのか空を翔るスピードが上がった。鼻歌まで聞こえそうなほど上機嫌に翔るフェリだがふいにピタリとその身体を止めてしまう。
 目的地はまだ先であるはずなのに動きを止めてしまったフェリにリッカは首を傾げ、声をかけた。

 「どうしたの?フェリ、」
 『ちがうけはいが、まざってるの……』
 「違う気配……?……まさか!!」

 フェリの言葉にハッとしたリッカが探るように意識を集中させるとその反応に引っかかったものが一つ。突進牛ラッシュキャトルとは比べ物にならないほどの膨大な魔力を持った存在が突進牛ラッシュキャトルの後ろからまるで追い立てるように移動しているのだ。

 『これは……』
 「すーちゃん何か分かった?」
 『……あまり当たって欲しくないのですが、この魔力は黄龍様のものに若干近いように思えます。なので、もしかすると……龍種の可能性があるかと。』
 「龍種って……ドラゴンとかそういう?」
 『ええ。あくまで可能性の問題ですけど。』

 もしも朱雀の考察が当たっていれば最悪の状況であった。龍種というのはその存在自体が希少であり、神獣や聖獣のように崇められるモノだ。よって攻撃することはあまり推奨されていない。気に障ってしまい怒りを買ってしまえばその土地一帯が消失してもおかしくはないからである。
  リッカもそれを知っていたし、そもそも龍種であり神獣である黄龍と親しくしているのでその実力は嫌という程分かるのだ。だからこそ、朱雀に確認したのだ。……自分の知る龍種と違っていてほしいという淡い希望を抱きながら。早くも打ち砕かれたのだが。

 「最悪だよ……ここに来て龍種の可能性……あ――、すーちゃんの忠告聞いとけばよかった。」
 『ですが、行く決断をしたのはお母様ですし、もしお母様が動いていなければ命を落としていたかもしれないものだっています。私はお母様の選択、間違っていなかったと思いますが。』
 『そうそう。母さんじゃないと解決出来なかったことだってあるしさー、あんまり落ち込むなって。』
 『僕らに危険が及ぶからって馬鹿な考えなら改めてね?なんたって僕らはあの黄龍様に鍛えられてるんだよ?。その心配は嬉しいけどね。』
 『龍種だってなんだって、僕が追い払っちゃうから安心してね、まま!』

 なんとも頼もしい言葉だが、神獣たちは殺る気である。しかしリッカとしては龍種を殺すことはしたくないのである。だから、この問題はリッカの力で解決する必要があった。

 「頼もしいけど、今回は僕に任せてくれないかな?」
 『母さんいっつもそれじゃねえか!』
 『どうせ今回もあれなんでしょ、あわよくばスケッチさせてもらいたいとか。』
 「ぐっ……」
 『だいたいままが自分でやりたいって時はスケッチ欲が勝ってる時だもん。』
    
 神獣たちからそうダメ出しを受けるのだが、もちろん理由はそれだけではない。強いて言うならば希少ゆえに数を減らしたくないということだろうか。出来るならば攻撃もしたくないので穏便に去っていってほしいのである。
 まあ、攻撃の有無は今こちらに向かってきている龍種だろう存在の出方にもよるのだが。

 「とにかく、僕に任せて!それと、先に突進牛ラッシュキャトルたちをどうにかしなきゃだからすーちゃんお願いね。」
 『話をそらしましたね?……まあいいでしょう。フェリ、もう少し群れの方に近寄ってもらえますか?』
 『あいあいさー!』

 元気よく返事をしたフェリは前進し、朱雀を伺う。位置を指定してほしいのだろう。朱雀はちらりちらりと自分の方を見ているフェリにストップをかけ、リッカの方を見た。封印の呪の解除を求めているのだ。その要求に頷きウエストバッグから解札を取り出した。

 「さ、やるよ。」
 『お願いいたします。』

 パタパタと小さな羽を動かしながら朱雀がフェリの前に移動したのを確認してリッカは解札を人差し指と中指で挟み込んだ。今回はすでに札に陣を施しておいたので後は魔力を流し込むだけである。ぴたりと朱雀に視線を合わせ《かい》と唱えた。
 途端に朱雀を白煙と桜の花びらが包む。だんだんと大きくなっていくそれに久々の高揚感を覚えたが、気を引き締め白煙が消えたそこに現れた紅色の羽毛の朱雀にニッコリと頬を緩ませた。

 「相変わらずすーちゃんのその姿は綺麗だねぇ……。」
 『そんなにしみじみ言わないでください……恥ずかしいです。』
 「まあまあ。よし、じゃあとりあえず突進牛ラッシュキャトルの群れをどうにかしようか。」
 『……ええ。』

 リッカの言葉に朱雀は何処か不満そうに返事をし、音の間隔的に足元前方にいる群れを視界にとらえた。


 『《思考誘導ソウルインダクション》』


 朱雀がそう魔法を唱えたとたん突進牛ラッシュキャトルの群れは何かに操られたように左右に進行方向を変え二手に分かれて行った。朱雀が使った魔法の効果が出ているのだろう。示し合わせた様子もなく道別れをした突進牛ラッシュキャトルに後ろから追いかけてきていた龍種……飛竜スカイドラゴンと呼ばれる空色のドラゴンは驚いているようだった。



 
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