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第一話 脅迫された悪役令息は初恋に溺れる

01-2.

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 侯爵家で一番の問題児と呼ばれている可愛い弟の言動を思い、ディーンはため息を零した。

 ……話し合いになればいいんだが。

 結局、自力で解決をする以外の方法はない。

 話し合いにならなかった場合の暴力は、権力でもみ消してしまえばいい。

 ……脅迫をしてきた相手を脅迫することにならなければいいけどな。

 脅迫状を鞄の中に押し込み、鏡を見ながら服装を適当に整える。

 ……最悪の場合、Glareグレアで威嚇するしかないか。

 ディーンはダイナミクス性に恵まれている。

 Domが不機嫌になった時に発せられるGlareは、相手を委縮させる。

 意図的に発せられた威嚇行為に対し、影響を受けるのはSubだけではない。

 力の弱いDomならば、簡単にディーンに跪くだろう。

 それを知っているからこそ、ディーンはどうしようもなくなった場合の時にだけ使える保険としてGlareを発動させることがあった。

 ……反動が辛いから使いたくはないんだが。

 Domとして生まれていたのならば、Glareを使用した時の反動に苦しまずに済んだのだろうか。少なくとも、今よりは軽い反動で済んだことだろう。

 ディーンのダイナミクス性はSwitchである。

 自ら望んでいないDomで居続け、Dom特有の力を発揮させれば、拒否反応を引き起こすのはどうしようもないことだった。


「……覚悟を決めるしかねえか」

 ディーンの見た目は、完璧な美青年である。

 兄妹の中で唯一、母親譲りの色素の薄い金色の髪と青色の目が鏡に映る。

 偏食が影響を与えているのだろうか。

 血の気のない陶磁器のような白い肌、日頃の寝不足が祟ってできた両目の下にある隈が、ディーンが人形ではなく人間であることを主張しているようにすら思える。

「ディーン坊ちゃま。お出かけでしょうか?」

 自室を出た途端、廊下で待機していた執事のセバスに声をかけられる。

「そうだ。馬車は空いているだろう?」

「整備済みのものでしたら、おひとつ、ございます」

「それでいい」

 廊下を大股で歩く。

 歩き方の指南を口うるさくする家庭教師は、何年も前に解雇されてしまっており、誰もディーンの振る舞いを注意しない。
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