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第一話 脅迫された悪役令息は初恋に溺れる

01-7.

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 ……アレン大公子?

 社交界の一環として、招かれた茶会や舞踏会では何度か見たことがある。

 言葉を交わしたことは数えられる程度ではあったが、どれも、最後には言い争いになってしまった覚えがある。

 気が合わないわけではない。

 ただ、ディーンの神経を逆なでするような発言をするアレンに対し、ディーンが我慢できず、本能のままに言い返してしまうだけである。

 それは普段ではありえないことだった。

 粗暴な振る舞いの多いディーンではあるが、最低限の貴族として常識や振る舞い、本能を理性の支配下に置くことも難なくこなすことができる。

 それらはすべて、アレンを目の前にすると台無しになるのだ。

 ……わざわざ、出迎えか?

 すべてに対して丁寧に振る舞い、平等に接する好青年。

 それなのにもかかわらず、ディーンに対してだけは素が出てしまうのが粗雑な振る舞いをするときもあり、なにかとディーンを挑発するようなことばかりを言ってくるのだ。

 ……彼奴の挑発に乗らないようにしないとな。

 そのことを思い出し、ディーンは眉間にしわを寄せる。

 アレンのことは嫌いではない。

 しかし、言葉を交わすだけで喧嘩になるのだから仲が良いとは言えない。

「門を開けろ」

 遠くにいたように感じたのだが、目の錯覚だったのだろうか。

 敷地内にいたらしい門番に指示を出し、すぐに門が開けられる。

「悪い。手違いで待たせたようだな」

 好青年らしい笑みを浮かべるアレンは、迷うことなく、ディーンの手を掴んだ。

 逃がさないというよりは、恋人と再会を喜ぶかのような指を絡ませる掴み方だ。

 それを振りほどくことは許さないと言わんばかりの圧力を感じるのは、ディーンの気のせいだろうか。

「……いや。俺が時間よりも早く着いただけですので」

「そうか。いや、早くに来てもらっても問題はない。気にするな」

 ディーンは気まずそうに視線を落とす。

 ……捕獲された動物になった気分だ。

 繋がれた手に視線を向けていれば、慌てて手を離してはくれないだろうか。

 ……逃げるとでも思ってんのか?
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