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第一話 脅迫された悪役令息は初恋に溺れる
02-9.
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しかし、兄として妹に向けるべき愛情を見せてもこなかった。
世間の闇に紛れ、悪事に手を染めることでしかヘンリエッタを庇うことができなかったのは、ディーンに家族を変えるだけの力と勇気がなかったからでもある。
それを理解しているからこそ、ディーンは心の中でしか、ヘンリエッタに謝ることができなかった。
「王太子に保護を呼びかければいいのではないか?」
アレンの言葉はごもっともだった。
婚約者の安全を保護するのはおかしい話ではない。
……王太子がヘンリエッタを嫌っていなければ、頼んでいたさ。
王太子の婚約者の家族として、何度か言葉を交わしたこともある。
僅かな交流時間ではあったものの、王太子がヘンリエッタのことを疎んでいることはわかっていた。
王太子がヘンリエッタと婚約を結んだのは、代々宰相を務めているウォートン侯爵家との繋がりを強化し、自身の立場を盤石なものにする為だ。
ヘンリエッタは政治的な理由で利用されているだけである。
その様子を思い返す限り、王太子がヘンリエッタを庇うことはないだろう。
侯爵家に疎まれているのならば、ちょうどいいと言わんばかりの対応をする姿が目に浮かぶ。
「……それができれば、あの子の為に悪事に手を染めてなんかいねえよ」
ディーンはヘンリエッタの為に悪事に手を染めた。
直接、なにかをしたわけではない。
しかし、宰相を務めている父親に頼み込み、ヘンリエッタにとって都合の悪い令嬢やその一家を社交界から追放したのはディーンである。
「そうか」
アレンは軽く頷いた。
「大公家として支援はしてやろう」
特に迷うようなことでもなかったのだろうか。
具体的な内容こそは口にはしなかったものの、アレンはディーンの頼みならばとでも言いたげな顔をしていた。
「いいのか? 俺が言い出したこととはいっても、勝手に決められるようなことじゃないだろ」
「構わない。支援するだけだ」
アレンはディーンの両頬を掴む。
それから距離を縮める。
……え。あれ。ちょっと、待って。近くないか!?
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それを理解しているからこそ、ディーンは心の中でしか、ヘンリエッタに謝ることができなかった。
「王太子に保護を呼びかければいいのではないか?」
アレンの言葉はごもっともだった。
婚約者の安全を保護するのはおかしい話ではない。
……王太子がヘンリエッタを嫌っていなければ、頼んでいたさ。
王太子の婚約者の家族として、何度か言葉を交わしたこともある。
僅かな交流時間ではあったものの、王太子がヘンリエッタのことを疎んでいることはわかっていた。
王太子がヘンリエッタと婚約を結んだのは、代々宰相を務めているウォートン侯爵家との繋がりを強化し、自身の立場を盤石なものにする為だ。
ヘンリエッタは政治的な理由で利用されているだけである。
その様子を思い返す限り、王太子がヘンリエッタを庇うことはないだろう。
侯爵家に疎まれているのならば、ちょうどいいと言わんばかりの対応をする姿が目に浮かぶ。
「……それができれば、あの子の為に悪事に手を染めてなんかいねえよ」
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直接、なにかをしたわけではない。
しかし、宰相を務めている父親に頼み込み、ヘンリエッタにとって都合の悪い令嬢やその一家を社交界から追放したのはディーンである。
「そうか」
アレンは軽く頷いた。
「大公家として支援はしてやろう」
特に迷うようなことでもなかったのだろうか。
具体的な内容こそは口にはしなかったものの、アレンはディーンの頼みならばとでも言いたげな顔をしていた。
「いいのか? 俺が言い出したこととはいっても、勝手に決められるようなことじゃないだろ」
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アレンはディーンの両頬を掴む。
それから距離を縮める。
……え。あれ。ちょっと、待って。近くないか!?
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