男装の悪役令嬢は、女嫌いで有名な騎士団長から執着されて逃げられない

佐倉海斗

文字の大きさ
45 / 122
第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

05-9.

しおりを挟む
 侯爵邸の敷地内の為、馬車はゆっくりと動いている。

 馬車が走る場所を避けて仕事をしている庭師や使用人たちの挙動が確認できるほどの速さだ。走って追い付ける程度の速さしか出ていないのだろう。

「メルヴィン様。私の義妹の話をしてもよろしいかしら」

「かまわないが。例の聖女だろう?」

「ええ。聖女ですわ。未成年なのにもかかわらず、国王陛下から聖女と認定を受けるほどの才能の持ち主なのですけども、少々、奇行に走る悪癖がございまして」

 アデラインは馬車から少し離れたところを走っているエステルを見つけた。

 堂々と着いていくことができないのならば、付きまとうことにしたのだろう。

「奇行?」

 メルヴィンも初めて聞いたことだったのだろう。

 聖女の印象を壊しかねないという理由により、エステルの奇行は強引に隠蔽されている。

 目撃者はエステルの奇行を口にしない。おそらく、思い出したくもないだけだろうが、結果としてエステルの奇行が周囲に広まるのを防ぐことができた。

「あれか。昨日、言っていた泣き癖だろう?」

 メルヴィンは昨日のやり取りを思い返しているのだろう。

 エステルには、家族でなければ慰められないほどの泣き癖がある。その対応をする為、アデラインは第二騎士団の要請に応えなければならない。

「それもございます。ですが、それよりも酷い状態ですの」

「……待て。窓の外を見ながら言っているのは偶然か? まさか、その奇行を見ながら言ってるわけではないだろうな?」

「ふふ、さすがは騎士団長ですわ。状況の把握が素晴らしいですわね」

 アデラインは窓から視線を逸らした。

 それから、隣に座っているメルヴィンに窓の外を見るように促した。

「あれが聖女の奇行ですのよ」

「……どういう教育をしたら、ああなるんだ」

「私にはわかりませんわ。少なくとも、私と同等の淑女教育は行っておりますもの。そうなりますと、エステルの行動は生まれ持った才能かもしれませんわね」

 アデラインは諦めたように笑った。

 ……大人しくしているはずがありませんもの。

 窓の外では馬車を追いかけるエステルと、エステルの奇行を侯爵邸の中だけで食い止めようとするマリアを筆頭としたエステルの専属メイドたちの追いかけっこが始まっている。

 メルヴィンは呆気にとられていたが、すぐに窓の外を見るのを止めた。

 どうしようもないものを目にしてしまったと思っているのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...