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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

06-28.※

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「すぐに子を産んでほしいわけではない」

 メルヴィンはアデラインの頬を撫でる。

 手放したくないと訴えるかのように優しく撫でられているのにもかかわらず、アデラインは猛獣に狙われた獲物になった気分だった。

「ただ、アデラインに触れたいだけだ。逃げようと思わないでくれ」

 メルヴィンの切実な声を聞き、アデラインは眉をひそめた。

 ……婚前交渉は、はしたない人がすることですわ。

 貴族の淑女であれと育てられたアデラインは、結婚前に性行為に及ぶなど考えられなかった。

 ……ですが、メルヴィン様の苦しそうな顔を見ていると、胸が痛むのです。

 想いが通じ合ったのにもかかわらず、拒絶をするのは良いことではないのかもしれない。

 寝室に案内をされた時点で悟り、断りを入れるべきだった。そうでなければ、同意をしたのも同然だと思われてもしかたがない。

「……わかりましたわ」

 アデラインは覚悟を決める。

 淑女らしからぬ振る舞いだと非難されることになったとしても、メルヴィンの寵愛を逃すよりは良いだろう。

「ですが、結婚をするまでは避妊をしてくださいませ。それは譲れませんわよ」

「わかった。徹底しよう」

「ええ。そうしてくださいませ」

 アデラインの言葉はメルヴィンに届いたようだ。

 それに安堵した途端、唇を奪われた。

 互いの居場所を確かめ合うかのように舌を絡みとられ、唾液が交わる。水音が漏れ、耳まで犯されている気分になりながらも、アデラインはメルヴィンの行為に応えるように舌を動かした。

 頬を撫でていた手はいつのまにか離れていた。

 それを惜しむかのようにアデラインは無意識にメルヴィンの背中に腕を回す。メルヴィンを引き寄せるように抱きしめ、互いを貪り合うかのように激しいキスをする。

「アデライン」

 唇が離れ、メルヴィンは愛おしくてしかたがないというかのように、アデラインを抱きしめた。その手は背中を撫で、不慣れな手つきでドレスを脱がそうとしているようだった。

 ドレスの脱がし方の一つも知らない不器用な手つきさえ、愛おしかった。

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