男装の悪役令嬢は、女嫌いで有名な騎士団長から執着されて逃げられない

佐倉海斗

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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

08-2.

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「お父様から夕食を共にしようと言われておりましたの。すっかり忘れていましたわ」

 アデラインは約束を違えなくてよかったと安堵する。

 なにかと忙しなく動き回っている両親と食事を共にする機会は少ない。それなのにもかかわらず、急に夕食を共にすると伝えられたのには理由があるはずだ。

「そうか。……侯爵には断りの手紙を送ろうか?」

「いいえ。そのお言葉には乗りませんわ。お父様のことですもの。来週の討伐任務に関する話を聞きたいのだと思いますのよ」

「あぁ。そういえば、侯爵は反対をしていたな」

 メルヴィンは納得をするしかなかった。

 大規模討伐の提案をした時には、なぜ、エインズワース侯爵が反対をしているのか、理解もできなかった。しかし、男装をしている娘が参戦することになると勘付き、普段の冷静な姿からは想像できないほどに強く反対をしていたのだろう。

「お父様は過保護なところがありますのよ」

 エインズワース侯爵の心は娘であるアデラインに伝わらない。

 ゴブリンの大規模討伐は必須である。知能が低く、繁殖性が強い。単体での攻撃力は大したことはないのだが、数が多くなればそれなりの被害がでる。

 そのような場所に娘を参戦させたくなかったのだろう。

「今になってはその過保護さに甘えてほしいものだがな」

「嫌ですわよ。私は仕事を放棄するような怠惰な人ではありませんもの」

「それは知っている。だが、安全なところにいてほしいと思ってしまうのは、当然のことだろう?」

 メルヴィンの言葉を聞き、アデラインは気まずい思いをする。

 ……心配されているのはわかっています。

 婚約者を危険な目に遭わせたくないのは本音だろう。暴走癖はあるものの、メルヴィンがアデラインを愛しているのは疑いようもなかった。

 だからこそ、胸が痛い。

 心配する気持ちに応えられない自分自身に対し、嫌悪感を抱いてしまう。

「……ごめんなさいね、メルヴィン様」

 アデラインは許しを乞いたいわけではない。

 それでも、謝罪の言葉を口にしてしまった。

「大丈夫だ。わかっている」

 メルヴィンはアデラインを非難するつもりはなかった。

 しかし、心配しているのだと何度も口にしなければ伝わらない気がしていた。
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