後宮の元妓女は寵愛を受ける

佐倉海斗

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第三話 手段は選ばない

10ー1.皇帝の盲目な愛は寵妃にだけ向けられる

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 その夜、可馨の元に梓豪が現れた。

 疲れた様子の梓豪は可馨を抱きしめる。

「陛下?」

 可馨は突然のことに戸惑いを隠さなかった。

 ……かなり疲れている様子ね。

 劉帆が亡くなったことによる衝撃が大きいのだろう。

 それでも、劉帆の母親である宋小鈴ではなく、可馨の元を訪れた。

「宋昭容が来たと聞いた」

「ええ、昼間に訪ねて来られましたわ」

「恐ろしい目に遭っただろう。あの女は気性が荒くてな。すぐに駆け付けられず、悪かった」

 梓豪は後悔をしているようだった。

 小鈴を抱いたことがあるはずだ。宋国の第二公主を嫁にもらいながら、放置するわけにはいかなかったのだろう。しかし、気性の荒い小鈴の元には一度しか通わなかった。

「いいえ」

 可馨は困ったような表情をした。

 どのような言葉を選べばいいのか、わからないといった様子だ。それも演技だった。

「第二公子様を亡くしたばかりで動揺していたのでしょう」

「そなたが悪いわけではない。そなたの下女がしたことだ」

「いいえ。下女の管理を怠った私にも原因はあります」

 可馨は悲しそうに言った。

 ……春燕は利用されただけだ。

 元凶は蘭玲だ。

 蘭玲が生きている限り、可馨の子ども以外は生き残れない。

 これ以上の惨劇を防ぐためには可馨は寵愛を受け続けるしかなかった。そうしなければ、可馨の邪魔になる生まれたばかりの子にも手をかけてしまうだろう。

「そなたは優しいな」

 梓豪は苦笑した。

 可馨の言葉を本音だと思っているのだろう。

 ……優しい、か。

 言われるたびに胸が痛む。

 本音ではそのようなことは思っていない。

 ……私の本性を知れば離れていくのに。

 梓豪だけではない。蘭玲を筆頭とした女官や下女たちも、離れていくことだろう。それを知っているからこそ、演技を続けるしかなかった。
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