後宮の元妓女は寵愛を受ける

佐倉海斗

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第四話 元妓女は望みを叶える

06-3.

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「私は、3年間、部屋に籠っていたわけではありません」

 可馨は父親が作り上げた設定を否定する。

 人見知りが激しく、大人しい女性の演技をやめる。それを打ち明けてるのにもかかわらず、梓豪は動揺することなく聞いていた。

「3年間、妓楼で働いていました。色――、体は売らず、芸事だけで生き抜いていました」

 可馨は上半身を起こし、そのまま、梓豪に向かって深々と頭を下げる。

「騙していて申し訳ございませんでした」

 可馨の覚悟は決まっていた。

 不敬罪として斬り殺されても文句は言えない。

 それでも、これ以上、騙していることはできなかった。

「……知っていた」

 梓豪は想定外の返事をした。

「私がなにも調べさせず、楊宰相の言う通りに動くわけがないだろう」

「知っていたのにもかかわらず、寵愛してくださったのですか……?」

「そうだ。健気な真似をしているそなたがかわいくてしかたがなかったのだ」

 梓豪の言葉に対し、可馨はなにも言えなかった。

 ただ大粒の涙が零れ落ちる。

 それを拭う梓豪の手はいつも通り優しかった。

 ……私は愛されていたの?

 偽物の性格を愛していたわけではなかった。
 それだけですべてが救われたような気がした。

「梅花だったか?」

 梓豪は妓女としての名を呟いた。

「妓女だったことも知っている。色を売らない妓女として有名だったことも、舞で皆を魅了していたことも知っていた」

「そうでしたか……。それでも、寵愛してくださったのですね……」

「そなたが初恋だった。一目惚れというやつだな。騙そうとしていても、なんでもよかった。そなたさえ手に入るのならば、私は騙された真似をした」

 梓豪の本音を聞き、可馨は頬を赤らめた。

 ……最初から欲しかったものは手に入っていたのに。

 欲をかいてしまった。

 それゆえに大切な子を奪われてしまった。

「陛下。私も恋い慕っております」

 可馨は優しく微笑んだ。

 初めて演技ではない笑顔だった。
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