あやかし喫茶の縁結び

佐倉海斗

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第一話 墓参りは姉弟の縁を結び直す

01-2.

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 それを愛おしく思うのは伊織の心の中に人間らしさが取り残されている証拠なのだろう。

「父さんの好きだった酒も持ってきたんだ」

 あやかしとして生きる彼が生きる道を苦しいものにするだけの人だった頃の名残を味わうかのように伊織は墓参りを欠かさない。

 いつの日か、伊織が墓参りを止める時が来るのだろう。

 それは伊織が人であったことを忘れ、あやかしとして生きる道を選んだ現実の先に待ち受けている逃れることはできない運命だ。

 ……今年は先を越されなかったのか。

 山田家と彫られた墓石を撫ぜる。

 苔はついていないものの、墓石の周りには小さな草が生えており、最近は手入れがされていないことが伝わる。毎年、この日になると綺麗に手入れがされている。

 それは山田家の墓を熱心に掃除している人が生きている証拠でもあった。

 ……それとも、死んだのか。

 あやかしとは異なり、人間は百年余りの寿命しか生きることはできない。

 昔と比べると長生きの傾向があるとはいえ、百歳を超えても元気に動き回っている人は少ないだろう。

 ……人は呆気ねえもんだ。

 伊織は花立てに菊の花を入れ、静かに手を合わせる。

 かがみこまないのは、すぐに離れることができるようにする為である。

「アンタ、山田家の墓になんか用かね」

 その声に驚き、反射的に左隣を見てしまう。

 色鮮やかな花束と墓石にかける水桶を持った老婆の目は冷たいものだったが、伊織の姿をはっきりと認識をしていた。数回、瞬きをした後、老婆は驚いたような表情に変わり、水桶から手を離してしまった。

 地面に落ちた水桶は横に倒れ、水が零れてしまっている。

 そのことに気付いていないのだろうか。

 それとも、それどころではないのか。

 老婆は迷うことなく伊織の腕を掴んだ。

 ……生きていたのか。

 この時点で伊織はこの老婆が誰であるのか、察していた。

 ……俺が視えるようになっちまったのか。

 数分前には寿命を全うしたのだろうと思ってしまった相手だ。

 七十年前、一方的な別れとなった彼女は生きていた。黄泉路を歩んでいたとしても、おかしくはない年齢の老婆はしっかりとした自分の足で立っている。
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