あやかし喫茶の縁結び

佐倉海斗

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第一話 墓参りは姉弟の縁を結び直す

01-4.

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「なあ、教えてくれよ、婆さん。アンタの目には俺はどう映っているんだ?」

 それは考えても答えのないことだと知っていた。
 だからこそ、伊織は問いかけることを止められなかった。

「婆さん」

 消耗品として使い潰されるのが当然だった時代に生まれた姉弟の中でも、美香子は伊織のことを弟として可愛がっていた。

 そのことを忘れてはいない。

 忘れられないからこそ、縋りつくような真似をしてしまいそうになる。

「年を重ねた。人間は年を重ねるとおかしくなる。言葉も忘れちまったのか」

 人として生きた時代のことを思い出す。
 自分自身のことを人間だと信じていた時代は色褪せた。

 しかし、未だに伊織の中に残っている。

「人の子なんてそんなもんだ」

 年月と共に色褪せていく思い出は苦しいものばかりだ。

 今となっては、なぜ、自分自身のことを人間だと思えていたのか、わからない。人の身では使いこなすことさえも困難な大きな力は、人の姿を真似しただけの化け物としか思えない。

「なにも期待なんかしちゃいないさ」

 年月の中に埋もれていくだけの日々とは比べ物にならない時間を生きてきた。

 たかが二十数年の記憶に縋りつくのは意味のない行為だと自覚をしていながらも、人であった頃を手放す覚悟ができなかった。

「気を使うことなんかないさ。婆さん。アンタの親と同じ言葉を吐き捨ててくれても構わないぜ」

 無口で厳しかった父と穏やかな母の最期の言葉は同じだった。

 死んでいく彼らにしか認識ができない伊織の姿に対して怒りを示した。恐れを抱いた。そして、遠のいていく意識の中、彼らは伊織を返してくれと懇願した。

「この姿を視られた時には言われるだろうって覚悟を決めてるんだ。そうでもしなきゃ墓参りなんて出来やしねえからな」

 化け物だと拒絶した声はもう思い出せない。

 息子を返してくれと縋りついた両親の顔を思い出せない。

「はは、泣き叫んだってかまわねえよ。婆さんが泣き叫んでいようが、こんな寂れちまった田舎町じゃあ誰も聞いちゃいねえよ」

 両親には、鬼と化した伊織は息子ではなかったのだろう。

 呆然とした表情を浮かべている美香子にとっても、対峙している伊織は異常な存在として映ることだろう。
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