あやかし喫茶の縁結び

佐倉海斗

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第一話 墓参りは姉弟の縁を結び直す

01-5.

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 行方をくらました七十年前よりも若々しい容姿、人ではないことを主張する角、悲痛な笑みを浮かべる伊織の口元からは鋭い牙が見えている。

「俺は生きている。アンタの弟だった山田伊織はずっと生きていた」

 生きている家族には理解のできない言葉を吐きながらも懇願した。

「戦火の中に燃え尽きちまった兄貴たちの元に逝ってねえよ」

 傍にいる伊織を見つけることもできず、遺品に縋りつく家族の姿は視ていられなかった。その光景だけが頭の中から消えてくれない。

「どいつもこいつも好き勝手なことを言いやがって腹が立っていたところだ」

 あやかしになりたくない。その手で殺してくれと何度も懇願した。

 人のままで死なせてくれと何度も縋りついた。

「アンタを食い殺しちまえば、くだらねえ過去から解放されるのかって思っていたところだ」

 その声は届くとはなく、伊織の帰りを泣きながら願い続けた両親の声を無視することもできずに七十年間生き続けてしまった。

 人間性は欠け落ちていく。

 待ち望んだはずの両親との再会は地獄のようなものだった。

「なーんてな。誰も信じやしねえことくらいはわかってんだよ」

 その姿は伊織の記憶の中に刻まれ、長い年月と共に記憶の奥底に埋もれていくことだろう。

「だから、なんとでも言えよ」

 彼らは伊織が生きていることを信じ、日々、激しくなる戦時中も生き抜いていた。いつか、再会をする日が来ることを心から信じていたのだろう。

「婆さんの言葉一つで振り回されるような生き方はしてねえからよ」

 それが叶ったのは彼らの死に際だった。

 個性的な兄たちは戦場で命を散らした。兄たちはどこにでもいる人間だった。

 姉や妹にも苦渋な日々が待っていたことだろう。

 ……あぁ。ダメだ。話が止まらなくなる。

 その時代を共に生き抜くことはできず、姿を消した伊織のことを恨んでいたのならば、どうしようもないことだったのだと諦めることができただろう。

 誰一人として、姿をくらました伊織に恨み言の一つも言わなかった。

 ……その目に映していてほしいと願ってしまう。

 人の身には相応しくない力を持っていても、どうすることもできなかった。

 国の為に兵器となる道を選び、人の道を外れた。

「……それとも俺のことなんて忘れちまったか。美香子姉さん」

 美香子は何も言わない。

 それを咎めるようなことはせず、静かに美香子の腕を外した。
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