あやかし喫茶の縁結び

佐倉海斗

文字の大きさ
12 / 60
第一話 墓参りは姉弟の縁を結び直す

02-2.

しおりを挟む
 たくさんの物があるとはいえ、広々とした一軒家で一人暮らしをしているのには事情がある。

 自主的に新しく関わりを築こうとはしないものの、昔馴染みの付き合いは少なからずある。誰も出入りをしないわけではない。

 なによりも一階では喫茶店を開いている。

 鬼頭自警団の仕事がない時にしか店を開かない為、不定休、不定時の喫茶店だが、自由を愛するあやかしたちの中では珍しいことではない。

 それは気軽な口調で話しかけてくる美香子も知っているはずだった。

「人の真似事をしろと?」

 それは伊織には苦い思い出だった。

「忘れたのか、姉さん。俺は人間ではないんだよ」

 伊織は人間ではない。

 彼の額から生えている二本の角が主張している通り、彼は、あやかしの一種、鬼である。いや、正しくは生まれつきの異能力が暴走をした結果、人としての道を踏み外した存在だ。

「物好きな連中は人の子を世話するが、俺はそういう趣向はない」

 人として生まれ、あやかしとなるのは珍しいことではない。

 伊織はその中でも丈夫な身体と驚異的な身体能力を誇り、人にはあるはずがない身体的な特徴を持つ鬼に部類される異能力を持っていた。

「力を持て余しているなら軍にでもくれてやれ」

 伊織は、力の暴走を引き起こし、行方不明となっていた。

 そのことは姉である美香子も知っているはずだ。

「アンタは元軍人の共有者だ。ひ孫が異能持ちとなりゃあ、それなりの待遇を与えてくれるだろ」

 異能力は公には空想の産物となっている。

 それは非異能力者の人口が多く、万が一、暴動が起きると厄介だからだ。

 異能力と無関係なところで平和を享受する非異能力者の中でも、特殊な立ち位置にいる“共有者”。異能力者の身内を区別する為の呼び名だ。

「俺が世話をしてやるよりも幸せになれるさ」

 伊織のような存在は昔から存在しており、彼らは異質な存在として生き続けている。

 ……もう軍は存在しないんだったな。

 時の流れを感じる。伊織が人だった頃とは時代は大きく変わっている。

 便宜上、異能力と呼ばれている力は、神々やあやかし等の人ならざる者の力であり、人として認識されていた頃の彼らはあやかしと人間の境界線上に立っていたのに過ぎない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あやかし警察おとり捜査課

紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末

松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰 第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。 本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。 2025年11月28書籍刊行。 なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。 酒と肴と剣と闇 江戸情緒を添えて 江戸は本所にある居酒屋『草間』。 美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。 自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。 多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。 その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。 店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...