あやかし喫茶の縁結び

佐倉海斗

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第一話 墓参りは姉弟の縁を結び直す

03-15.

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「死者を冒とくしろと?」

 伊織は不快感を表した。

 あやかしは人ならざる者だ。その姿形は人に似ていたとしても、本質が異なる。生きる時間も流れる時間も違う。その価値観も人とは大きく異なっていた。

 それは伊織もわかっている。

 美香子の姿は自分とかけ離れているのを見て、嫌になるほどに実感した。

 伊織には人間に戻れない。

 あやかしと人の境界線上を歩いていた時には戻れない。一度、あやかしに転じた者は二度と元の立ち位置に戻ることはできない。

 だからこそ、人に執着をする。

 伊織もその一人だった。

 人であった頃を懐かしみ、忘れられず、恋しくて仕方がない。

「いいや。お前さんを待ってるだけの未練に別れを告げてやれと言ってんのさ」

 暁丸はそれを知っている。

 だからこそ、淡々と告げた。

「お前さんが人にこだわる理由の一つを犠牲にすりゃあ、そのおんぼろの縁は少しだけ強化されるさ」

 暁丸はなにを知っているのだろうか。

 伊織の決心がつかない様子を見て、さらに背中を押すように言葉を続ける。

「話をしてみな」

 暁丸は伊織の頭を雑に撫でる。

「お前さんの心の枷が少しでも楽になりゃあ、相手さんの未練も晴れるってもんさ。難しく考えんでもいい。お前さんは縁を結んだ相手と一緒にいる為に、利用されることを恨むような御仁でもあるまい」

「……そうだといいんだが」

「上手くいくさ。失敗してもそれはそれで、他の道を一緒に探してやろう」

 暁丸は伊織を慰める。

 都合が悪くなると助けを求めに来る伊織が可愛くて仕方がないのだろう。若頭の補佐役に抜擢をされた以降、春日が率いる若衆たちからは憧れの目を向けられるだけで距離をとられてきた。

 その中で伊織だけは違った。

 暁丸を兄として変わらず慕ってくれた。

 それは暁丸にとって嬉しいことだった。

「ありがとう、暁丸」

 伊織が感謝の言葉を口にすると、暁丸は照れくさそうに笑って見せた。
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