49 / 60
第二話 【あやかし喫茶】は縁を結ぶ
01-9.
しおりを挟む
「あらまぁ。小さなお客さんだねぇ」
頭を抱えている若葉に声をかけたのは、押し車に買い物袋を乗せながら歩いてきた美香子だった。
「婆さんじゃないですかー。この家、婆さんの家だったんですねー? 若葉は坊やを訪ねて来たんですけどねー」
若葉はへらりと笑いながら返事をする。
それに対し、美香子は押し車を押しながら近づいてくる。押し車を使わなくても歩行に問題はないが、買い物をする時には荷物を運ぶのに都合が良かった。その為、買い物に行く時だけ使用していた。
「坊や? ……あぁ、優斗のことかい。優斗なら中にいると思うけどねぇ」
「そうなんですかー。まったく、あの坊やが気づいてくれないから、若葉は干からびるところでしたよー」
「そうかい。そりゃあ悪かったねえ。インターフォンが鳴ったら、出るように頼んでいたんだけどねぇ。またゲームでもやっていたのかもしれないねぇ」
美香子は申し訳なさそうな顔をした。
それから押し車の中から出した買い物袋と鞄を取り出し、慣れた手つきで玄関の鍵を開ける。
……いんたあふおんってなんでしょう?
若葉はインターフォンの存在を知らなかった。
常世では玄関には呼び鈴が置いてある。それがない家は門番を雇っていることが多い。そもそも、特定の家を持つ種族は限られており、川や森など好きな場所に勝手に住み着いているあやかしが多い。
その為、あやかしたちの中では定着しなかった。
若葉は人に対して関心が低い。
物心ついた頃から食べ慣れている食料という認識しかなく、伊織が人に思いを馳せている気持ちは長い生涯をかけても理解できないだろう。
……げえむというのも聞いたことがないですね。
若葉は聞き慣れない言葉を美香子に問いかけることはしない。
美香子を信用していなかった。
若葉にとって、美香子は若葉の家族ではない。しかし、伊織が慕っている家族であり、美香子を害することはない。
「家の中に招いていいんですかー? 若葉は坊やに悪いことを教えるかもしれませんよー?」
だからこそ、若葉は美香子の不安を煽るような言葉を口にした。
伊織が突き放せないのならば、若葉が距離を置くように誘導すればいい。それが伊織の為になるのだと若葉は信じて疑わなかった。
頭を抱えている若葉に声をかけたのは、押し車に買い物袋を乗せながら歩いてきた美香子だった。
「婆さんじゃないですかー。この家、婆さんの家だったんですねー? 若葉は坊やを訪ねて来たんですけどねー」
若葉はへらりと笑いながら返事をする。
それに対し、美香子は押し車を押しながら近づいてくる。押し車を使わなくても歩行に問題はないが、買い物をする時には荷物を運ぶのに都合が良かった。その為、買い物に行く時だけ使用していた。
「坊や? ……あぁ、優斗のことかい。優斗なら中にいると思うけどねぇ」
「そうなんですかー。まったく、あの坊やが気づいてくれないから、若葉は干からびるところでしたよー」
「そうかい。そりゃあ悪かったねえ。インターフォンが鳴ったら、出るように頼んでいたんだけどねぇ。またゲームでもやっていたのかもしれないねぇ」
美香子は申し訳なさそうな顔をした。
それから押し車の中から出した買い物袋と鞄を取り出し、慣れた手つきで玄関の鍵を開ける。
……いんたあふおんってなんでしょう?
若葉はインターフォンの存在を知らなかった。
常世では玄関には呼び鈴が置いてある。それがない家は門番を雇っていることが多い。そもそも、特定の家を持つ種族は限られており、川や森など好きな場所に勝手に住み着いているあやかしが多い。
その為、あやかしたちの中では定着しなかった。
若葉は人に対して関心が低い。
物心ついた頃から食べ慣れている食料という認識しかなく、伊織が人に思いを馳せている気持ちは長い生涯をかけても理解できないだろう。
……げえむというのも聞いたことがないですね。
若葉は聞き慣れない言葉を美香子に問いかけることはしない。
美香子を信用していなかった。
若葉にとって、美香子は若葉の家族ではない。しかし、伊織が慕っている家族であり、美香子を害することはない。
「家の中に招いていいんですかー? 若葉は坊やに悪いことを教えるかもしれませんよー?」
だからこそ、若葉は美香子の不安を煽るような言葉を口にした。
伊織が突き放せないのならば、若葉が距離を置くように誘導すればいい。それが伊織の為になるのだと若葉は信じて疑わなかった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あやかし警察おとり捜査課
紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。
しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。
反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる