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第二話 【あやかし喫茶】は縁を結ぶ
01-14.
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「ありがとうねぇ」
美香子は泣きそうな顔でお礼を言う。
……呆れますね。
本当ならば伊織の傍にいたいのだろう。
離れていた時間を埋めるように過ごしたいはずだ。
それなのにもかかわらず、美香子は人であることにこだわらなければいけない。
……死人の言葉なんて意味もないのに。
若葉から見れば、美香子も伊織も亡くなった人の言葉に囚われている。
身動きがとれなくなってしまうくらいならば、早々に忘れて前に進めばいいと若葉は考えているが、そう簡単には物事は進まないようだ。
「お礼はいりません。めんどうですから、さっさと本題に入ります」
若葉は美香子を説得するのを諦めた。
……どうせ、あと少しの命ですし。
あやかしからすれば、人の命は瞬く間に尽きる儚いものだ。
美香子が寿命を迎えれば伊織は落ち込むだろう。それを慰めるのは、あやかしであり、家族である若葉と鈴の役目である。
若葉はそう考えることにした。
説得をしようとするだけ無駄であると悟ったのだ。
「伊織さんから制服と契約書を預かってきました。坊やと婆さんの二人分です」
「おや、あたしのあるのかい」
「はい。伊織さんが言うには婆さんの知恵が借りたいそうです」
若葉は背負ってきた風呂敷を下ろす。
そして、それを持ちながら階段を見上げた。
様子を伺っていた優斗と目が合った。
「臆病な坊や。降りてきなさい。若葉さんが今後の計画を教えてあげましょう」
若葉は優斗を煽る。
その言葉に優斗は嫌そうな顔をしていた。
「あれまぁ。優斗、おったのけ」
「いたよ。ばあちゃん。玄関で話すのも嫌だから、リビングに行けば」
「そうするかねぇ。優斗もおいで。若葉ちゃんが話があるんだと」
美香子はすたすたと廊下を歩く。
少し歩いた先にある扉を押し、リビングの中に入っていった。
「自由な婆さんですね。客人の案内はしないのですか!」
若葉は文句を言いながら、美香子の後をおいかけてリビングに入った。その後ろから警戒心を隠そうともしないまま、優斗がついてくる。
美香子は泣きそうな顔でお礼を言う。
……呆れますね。
本当ならば伊織の傍にいたいのだろう。
離れていた時間を埋めるように過ごしたいはずだ。
それなのにもかかわらず、美香子は人であることにこだわらなければいけない。
……死人の言葉なんて意味もないのに。
若葉から見れば、美香子も伊織も亡くなった人の言葉に囚われている。
身動きがとれなくなってしまうくらいならば、早々に忘れて前に進めばいいと若葉は考えているが、そう簡単には物事は進まないようだ。
「お礼はいりません。めんどうですから、さっさと本題に入ります」
若葉は美香子を説得するのを諦めた。
……どうせ、あと少しの命ですし。
あやかしからすれば、人の命は瞬く間に尽きる儚いものだ。
美香子が寿命を迎えれば伊織は落ち込むだろう。それを慰めるのは、あやかしであり、家族である若葉と鈴の役目である。
若葉はそう考えることにした。
説得をしようとするだけ無駄であると悟ったのだ。
「伊織さんから制服と契約書を預かってきました。坊やと婆さんの二人分です」
「おや、あたしのあるのかい」
「はい。伊織さんが言うには婆さんの知恵が借りたいそうです」
若葉は背負ってきた風呂敷を下ろす。
そして、それを持ちながら階段を見上げた。
様子を伺っていた優斗と目が合った。
「臆病な坊や。降りてきなさい。若葉さんが今後の計画を教えてあげましょう」
若葉は優斗を煽る。
その言葉に優斗は嫌そうな顔をしていた。
「あれまぁ。優斗、おったのけ」
「いたよ。ばあちゃん。玄関で話すのも嫌だから、リビングに行けば」
「そうするかねぇ。優斗もおいで。若葉ちゃんが話があるんだと」
美香子はすたすたと廊下を歩く。
少し歩いた先にある扉を押し、リビングの中に入っていった。
「自由な婆さんですね。客人の案内はしないのですか!」
若葉は文句を言いながら、美香子の後をおいかけてリビングに入った。その後ろから警戒心を隠そうともしないまま、優斗がついてくる。
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