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第一話「悪は咲き誇る」

02-8.理不尽な扱いには慣れている

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「子爵令嬢の魔の手から救い出して欲しい者がいる。俺としては子どもの色香に惑わされる連中など興味がないんだが、共に王国を守る者同士、放っておけとは言えんだろう?」

「それを娘に押し付けなれば美談に聞こえることでしょうね」

「はははっ、いいではないか! お前の手柄にしておけ」

「私が得るものはないでしょう? 手柄と言われても困るだけです」

 お父様はその言葉に対し、待っていたと言わんばかりに執事から紙を受け取っていた。それを躊躇なく机に叩き付ける。

「なんですか?」

 驚いた。

 紙にはお父様の直筆で書かれている。

 私が何度言ってもまともに掛け合ってもらえなかったことだ。

「条件を全て満たせば、騎士団への入隊試験を受けることを認めてやる。ただし、一つでも満たせなければこれは破棄する。ダリアが騎士になる可能性を認めてやるのは一度だけだ。どうだ? 最高の条件だろう?」

 震える手でその紙を受け取る。

 私がこの紙を根拠として無断で入隊試験を受けることがないように模倣されたものだ。本物はお父様が管理しているのだろう。

「最高の条件ですね、お父様」

 未知の難題を突きつけられているのはわかっている。

 五か月の間に条件を達成しなければ意味がないことだとわかっている。

「ダリア・ブラックウッド、この身を賭けて果たして見せましょう」

 それでもいい。

 私は騎士になる夢を諦めなくてもいいのだから。

「お前がならば、そういうと思っていた。……あぁ、いけない、俺としたことが忘れていた条件がある。スタインズ伯爵の息子、フランシス公爵の息子は魔の手から救い出して欲しいと要望だ。公爵に恩を売っておきたいだろう?」

「第一騎士団団長の息子が簡単に落とされるとは思えませんが」

「それは実際に見て判断をしてみるといい。そうであっても、そうでなくても、お前は関わるべき相手だ。この際だからな、辺境伯爵家以外の貴族と関わりを持っておけ」

「わかりました」

「学園内部には内通者もいる。それらと協力をしてもいい。目的さえ果たせれば、後は好きなように振る舞え」

 別のことも企んでいるのだろう。
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