悪役令嬢ですが、勘違い聖女から王国を救うことになりました

佐倉海斗

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第一話「悪は咲き誇る」

02-9.理不尽な扱いには慣れている

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 フランシス公爵の息子は見たことがある。会話はほとんどしたことはないが、高圧的な態度の同級生だったのは覚えている。

 剣術の腕前はあるのだが、性格には難がありそうだ。

 授業で手合わせをした以降、なにかと見られているような気がするのだが、それに関してもついでに解決させよう。

「それからライラック・ロベリアは聖女の素質が認められている」

 聖女?

 あの裏表がある少女が聖女?

「数百年ぶりの聖女だ。他国に渡すわけにはいかない」

 聞き間違えだろうかと思ったがそうではなさそうである。

 教会もなにを見て彼女のような常識外れを聖女として認定したのだろうか。

「国外逃亡はさせるな。これを機に厳重に保護をする予定だ」

「……厳重に保護をするというわりには悪い顔をしています」

「あぁ、顔に出てしまったか」

「お父様。なにか良からぬことを企んでいませんか?」

 ブラックウッド辺境伯爵家は砦を守る武に優れた家系だ。

 王国を守護するのが役目である。

 しかし、武に優れているというのは厄介な傾向がある。

「争い事を諫めるのもお父様の御役目でしょう」

 王国を裏切ることはしない。

 しかし、王国の利益になるのならば戦争も辞さない。

 お父様は領主をしながらも度々呼び出しに応じている。それらは全て国王陛下たちによるものだ。

 砦を守る辺境伯爵家の当主たちを私用で呼び出すのはろくなことがない。

「何事に対しても備えというのは必要だ。お前も大人になればわかるだろう」

「聖女の素質がある者を厳重に保護するのは備えの為ですか?」

「そうだ。正しく力を扱えるように教育を施す必要性も見出されている。これに関しては気にする必要はない」

 戦争の際に兵器として扱うつもりか。

 身分を弁えず王族に恋をした罰、辺境伯爵家を敵に回した罰、国王陛下の不興を買った罰。

 どのような名目を与えても彼女を利用するつもりなのだろう。

「ライラック・ロベリアの動向は細やかなことでも報告をするように」

 初対面の印象は悪い。

 彼女ほどに裏表が激しい人間は初めて見た。同情する余地はない。

 利用される隙を見せたからいけないのだ。特別な力を持っているのだと自覚をしているのならば利用されないようにしなくてはいけない。
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