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第一話「悪は咲き誇る」

03-8.悪を演じることも厭わない

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「ダリアは騎士の真似をするのが好きだったね」

「そうだね、一緒に騎士の真似をして遊ぶのがなによりの楽しみだったよ」

「僕もそう思っていたよ。……君はあの頃となにも変わらないんだね」

「パーシヴァルは変わってしまったのかい?」

「うん、変わってしまったよ。あの頃とは違って、僕は騎士団長に対する憧れは無くなってしまったからね。君が今も憧れていると知って胸が痛いくらいだよ」

 なにかあったのだろうか。

 心当たりはない。でも、私が聞いても良いことなのか、わからない。

「ダリアの憧れの第一騎士団の騎士団長の息子も聖女候補の虜だと噂があるけど、それについてはどう思っているの?」

 ジョージ・フランシス。フランシス公爵家の嫡男。

 公爵譲りの美しくも力強い騎士候補。

 威圧的な物言いをする乱暴者という性格が全てを台無しにしている同級生だ。

「あの男が簡単に口説かれるとは思えないね」

 そもそも興味があるとは思えない。

 アレクシスと共に行動をしているのも何度か目にしたことはあったが、それは私に対する監視の目を強めていただけのように感じていた。

「アレクシスの恋人に手を出すような男でもないだろう」

「でも、実際にはそういう噂があるよ?」

「知っているよ、噂の真相を探る必要がある。だけど、彼に関しては後回しでも構わないだろうね。目立った行動を起こすような人物でもなさそうだ」

「後回しで良いの? ダリアの憧れの人の子どもなのに?」

「なぜ、それにこだわる必要がある? 騎士団長の息子だからとはいえ、特別に思うようなこともないだろう」

 パーシヴァルとジョージは交友関係があるのだろうか。

 友人を優先して救い出したいという気持ちはわかる。

「パーシヴァルの友人ならば優先をしても――」

「いいや! 優先する必要はないよ、なんなら、最後でいいと思うよ!」

「友人ではないのか?」

「友人だって!? 冗談じゃない。僕は彼のことを憎んでいるといっても過言ではないくらいだね。見てよ、友人だなんて君が言うから鳥肌が立ってしまったよ!」

 見せつけられた腕を見れば、確かに鳥肌が立っていた。

 それほどに嫌いならば、なぜ、拘っていたのだろう?

「そう。聖女候補が接触をしていると思われる人たちの中で優先して助け出したい人はいるかい?」

 私の言葉にパーシヴァルは眼を見開いた。

 驚くようなことを言ったつもりはないが、彼にとっては違ったのだろうか。
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