悪役令嬢の兄ですが、騎士団長に執着溺愛されています

佐倉海斗

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第二話 大公の幼馴染

02-10.

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「必要ないと思いますが?」

 カイルは淡々と告げた。

「主人を害するメイドに価値はありません」

 カイルがブラッド子爵家で培ってきた考え方を口にする。

 子爵家に没落したとはいえ、元々は公爵家だ。使用人の教育に厳しいことでも有名だった。子爵家になり、多くの使用人たちは解雇されてしまったが、他の場所で元気よく働いていることだろう。

 ……庇っているのか。そうではないのか。

 カイルはアーサーの考えがわからなかった。

「だが、まだ二十代の女性だ。路頭に迷わせるわけにはいかない」

「それならば、愛人にでもしたらどうですか」

「なんてことを言うんだ!」

 アーサーは驚きのあまり、カイルを抱きしめるのを止める。

「愛着があるから解雇できないのでしょう?」

 カイルは言葉の攻撃を緩めない。
 アーサーは言い返せなかった。事実だからだ。

「彼女の望みを当ててみせましょうか」

「なんだ。言ってみろ」

「アーサーの妻になることですよ。大公夫人になりたいのです」

 カイルの言葉にアーサーは笑った。

 ありえないと言わんばかりの笑いだった。

「ありえない」

 アーサーは言い切った。

「妄想が過ぎるぞ、カイル」

 アーサーはカイルの被害妄想だと決めつけてしまった。

 それをカイルは不快に思う。

 番から信用されていないことは情緒を不安定にさせやすい。

「……俺を信じてはくれないのですね」

 カイルは立ち上がった。

 この場にいられなかった。

「部屋に戻ります。しばらく、顔を見たくありません」

「カイル! なぜ、怒っているんだ!」

「それすらわからないから怒っているんですよ」

 カイルはこの場に留まることができなかった。

 怒りのあまり酷い言葉を口にする前に立ち去ってしまいたかった。
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