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第一章 鳥に追われる
三角の船
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オゼ
アオチが不機嫌になったので、話題を変えるつもりで、尋ねただけだったのに、瞬時にその船に魅入られた。
あんな形の船、初めて見た。最初からあの場所にあったのだろうか。あの鳥の群れが現れてから、夢と現実の間にいるような時間が流れているが、そこに違和感なく紛れ込む形の船。
さっき聞いたアオチの話だと、この奇妙な時間は二日前から始まったわけではないようだ。燃える心臓の話なんて知らなかった。どこかでそんな話題を目や耳にしたかも知れないが、新手のオカルト話とでも思って気に留めていなかったのだろう。
あの三角の船にこれから心臓がどんどん積まれていくんだ。上手く海から拾えたらの話だが――。それでも想像してしまう、心臓で満ちる船。心臓と海を漂う。どうしよう、なんだかわくわくしてきた。絶対顔に出さないようにしなくては。今度こそオオミが逃げ出すかも知れない。
今も先を歩く俺から不自然に距離を置いて付いてきている。アオチに何か小声で耳打ちしたのにも気がついていた。
あの人は狂ってるとか、気を付けろとか、そんな事を言っているに違いない。
まあいい。俺はあいつらが居なくても十分ひとりでこの旅を楽しめそうだ。
三角の船の真ん前まできた。
近くで見ると、俺の掴まえたいあの鳥に少し似ている気がした。船が鳥に似ているとか、自分でもどうかしているとは思う。
「――あの鳥と同じ匂いがするな」
無意識に口に出てしまった。
「あの!」
突然オオミが大声を出した。今日は一羽も見かけてないが、いつもこの辺をウロウロしている海鳥がいたら、一斉に飛び去っていただろう。
「……なんだよ、驚かせるなよ」
オオミは何だか唇まで青白くなっていて、こいつ死ぬんじゃないかと心配なる。今気がついたが今日は眼鏡なんだ、眼鏡じゃない日もあるがコンタクトと併用してるのか。俺は何でこんなことを考えてるんだ? そうだ、こいつ叫んでからずっと黙ってるんだ。妙に時間があるからまじまじ観察してしまったじゃないか。どうして黙ってるんだ? 何かの発作か。
アオチもこんな時に限って、船の上の空をぼんやり見上げているし。怖がられても仕方ないと思い一歩、オオミに近づいた。
進んだだけ後ずさりされた。
「いい加減にしろよ、からかってるのか」
「鳥を掴まえないと約束してください」
「は?」
「今、絵が浮かんだんです」
また訳のわからないことを。でもこの手の真面目が過ぎるやつを追い詰めるのは危険だ。
「何の、絵だ」
努めて冷静に聞き返した。
「あなたが、心臓であの鳥に餌付けをしている絵です」
もう、だめだな、こいつ。
「しないよ、そんなこと」
「約束してください」
涙声まで出している。もう手に負えない。アオチ、お前の後輩だろ、何とか言ってやってくれ。そう思って声をかけようとした時、
「ギャングウェイ……急だな。お前たちも気を付けろよ」
アオチがそう言って、俺たちを置いて何に憑かれたように三角の船に真っ直ぐ進んで行った。
アオチが不機嫌になったので、話題を変えるつもりで、尋ねただけだったのに、瞬時にその船に魅入られた。
あんな形の船、初めて見た。最初からあの場所にあったのだろうか。あの鳥の群れが現れてから、夢と現実の間にいるような時間が流れているが、そこに違和感なく紛れ込む形の船。
さっき聞いたアオチの話だと、この奇妙な時間は二日前から始まったわけではないようだ。燃える心臓の話なんて知らなかった。どこかでそんな話題を目や耳にしたかも知れないが、新手のオカルト話とでも思って気に留めていなかったのだろう。
あの三角の船にこれから心臓がどんどん積まれていくんだ。上手く海から拾えたらの話だが――。それでも想像してしまう、心臓で満ちる船。心臓と海を漂う。どうしよう、なんだかわくわくしてきた。絶対顔に出さないようにしなくては。今度こそオオミが逃げ出すかも知れない。
今も先を歩く俺から不自然に距離を置いて付いてきている。アオチに何か小声で耳打ちしたのにも気がついていた。
あの人は狂ってるとか、気を付けろとか、そんな事を言っているに違いない。
まあいい。俺はあいつらが居なくても十分ひとりでこの旅を楽しめそうだ。
三角の船の真ん前まできた。
近くで見ると、俺の掴まえたいあの鳥に少し似ている気がした。船が鳥に似ているとか、自分でもどうかしているとは思う。
「――あの鳥と同じ匂いがするな」
無意識に口に出てしまった。
「あの!」
突然オオミが大声を出した。今日は一羽も見かけてないが、いつもこの辺をウロウロしている海鳥がいたら、一斉に飛び去っていただろう。
「……なんだよ、驚かせるなよ」
オオミは何だか唇まで青白くなっていて、こいつ死ぬんじゃないかと心配なる。今気がついたが今日は眼鏡なんだ、眼鏡じゃない日もあるがコンタクトと併用してるのか。俺は何でこんなことを考えてるんだ? そうだ、こいつ叫んでからずっと黙ってるんだ。妙に時間があるからまじまじ観察してしまったじゃないか。どうして黙ってるんだ? 何かの発作か。
アオチもこんな時に限って、船の上の空をぼんやり見上げているし。怖がられても仕方ないと思い一歩、オオミに近づいた。
進んだだけ後ずさりされた。
「いい加減にしろよ、からかってるのか」
「鳥を掴まえないと約束してください」
「は?」
「今、絵が浮かんだんです」
また訳のわからないことを。でもこの手の真面目が過ぎるやつを追い詰めるのは危険だ。
「何の、絵だ」
努めて冷静に聞き返した。
「あなたが、心臓であの鳥に餌付けをしている絵です」
もう、だめだな、こいつ。
「しないよ、そんなこと」
「約束してください」
涙声まで出している。もう手に負えない。アオチ、お前の後輩だろ、何とか言ってやってくれ。そう思って声をかけようとした時、
「ギャングウェイ……急だな。お前たちも気を付けろよ」
アオチがそう言って、俺たちを置いて何に憑かれたように三角の船に真っ直ぐ進んで行った。
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