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第三章 神様のいない海
神様と鳥
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回収人
眼鏡が無言ちゃんとウルウを連れて戻って来た。
俺はまだ無言ちゃんの声を聞いたことがないが、眼鏡にだけは話をすると言う。
眼鏡が戻って来るまでの短い時間もアオチは、神様はどこに住んでいるのかとか、回収人族は全員兄弟になるのかとか、そんな訳のわからないことを興奮して聞いてきた。
こいつ、自分が一番死に近いと解っているのか。いや、解っているから精一杯生きているのか。
「さ、二人を連れて来ましたよ。教えてください。回収人さんのお父さんの話」
「うるうる――」
こいつがいると、どんな話も深刻にならないような気がして有り難い。ローヌは、こいつをこっちの世界に置き去りにできるのだろか。
「俺は今まで乗客に神様の話なんてしたことはないんだ。でも、今回は俺にとっても最後になるだろうから。わかるだろ? 心臓がもう足りない。だから、話したいんだ。俺にとっての神様は――」
――全て。
そう、俺にとっての神様は大袈裟でも何でもなく、文字通り全てだ。俺が生れて還る場所。与えれた心臓が無くなったら、神様の細胞に戻るだけ。また回収人として呼び出されるのか、別の何かとして蘇るのか、そのまま神様の細胞として過ごすのか、全て、彼次第だ。
本当かどうか知らないが、神様は自分の気に入った命は手放さず、ずっと自分の細胞として留めておくそうだ。
不完全な自分の身体を完成させるために世界を渡り歩いている、というやつもいる。
神様は俺たちを海に放つ時「僕の弱い細胞を助けてあげて」、そう言った。
弱い細胞とはもちろんお前たちのことだ。
お前たちも、俺と同じ様に神様から生まれて、神様に還る。
いいか、神様はな、生きる力の弱い命を身体に取り込むと衰弱してしまう。だから、世界中に弱い命が溢れてくると、強いものだけ連れて、次の世界に進むんだ。
乗客が最後に一人になってしまうのもそんなわけだ。
次の世界で神様は、しばらく強い命をもとに身体を作り直し、そしてまた、完全な身体を求めて、不完全な細胞を修行の旅に出す。
お前たち人間としてな。それを気が遠くなるような年月繰り替えしているんだよ。
――神様の話はたいくつか? まあ、今まで存在を知らなかったんだ。ピンと来なくても仕方がない。
だったら鳥の話をしようか。
アオチを助けた、漆黒の翼に赤い縁取りの目をしたあの鳥、監視鳥の話はどうだ。
ああいう鳥がたくさんいる事はさっき話した通りだ。
だが、あいつらは実は一羽の鳥から出来ていると言ったらどうだ? 驚かないか?
俺たちが神様の細胞なら、あいつらは神様の使いの細胞なんだ。
使いというのは、神様がいつも連れている大鳥のことだ。
それは美しい青い鳥だ――。
監視鳥は黒だと言いたいんだろ? 本当にお前たちは目に見えるものに振り回されるな。あれは本体に戻って青に変わる。
監視鳥は終末の時だけに現れるわけではない。
いつもお前らの上を飛んでいる。アオチは知っているだろ? お前が心臓を喰う鳥から助けられたのもそのおかげだ。
お前らが町中で見ていたのは目玉を喰う鳥、一度死んだ者が生き還らないように。あれも使いの別の姿だ。使いは本当に器用に姿も大きさも変えるんだ。
心臓を喰う鳥は使いの別の姿ではない。自ら命を捨てた者の成れの果て、と言えば良いのかな。お前たちの言う、自殺した者たちの最終形態だ。
常に空腹でああやって心臓を求めて飛び回っている。
だから、俺が銀の銃で終わりにしてやってるんだ。
あいつらは飢えて苦しんでいるからな。ああしてやらないと永遠に開放されない。
それで、監視鳥の話だった。監視鳥の役目は神様の意志を叶えることだ。やっかいなのは、使いの人格が神様と同じとは限らないところにある。
雪山でアオチを助けたことがあったようだが、あれも使いの勝手な判断だ。
お前が気になったんだよ。あんなあからさまに姿を現すことなんてないのに、どうしたことかな。使いの気まぐれなのか、神様の指示なのかは知らない。
生き残るのはオゼだと、回収人の――神様の細胞である俺たちは確信しているけれど、監視鳥はアオチを連れて行きたいらしい。
そして、これを言うか迷ったのだけれど、やっぱり聞いて欲しい。
一人しか次の世界に連れていけない、そのルールを作ったのは他でもない、神様だ。
眼鏡が無言ちゃんとウルウを連れて戻って来た。
俺はまだ無言ちゃんの声を聞いたことがないが、眼鏡にだけは話をすると言う。
眼鏡が戻って来るまでの短い時間もアオチは、神様はどこに住んでいるのかとか、回収人族は全員兄弟になるのかとか、そんな訳のわからないことを興奮して聞いてきた。
こいつ、自分が一番死に近いと解っているのか。いや、解っているから精一杯生きているのか。
「さ、二人を連れて来ましたよ。教えてください。回収人さんのお父さんの話」
「うるうる――」
こいつがいると、どんな話も深刻にならないような気がして有り難い。ローヌは、こいつをこっちの世界に置き去りにできるのだろか。
「俺は今まで乗客に神様の話なんてしたことはないんだ。でも、今回は俺にとっても最後になるだろうから。わかるだろ? 心臓がもう足りない。だから、話したいんだ。俺にとっての神様は――」
――全て。
そう、俺にとっての神様は大袈裟でも何でもなく、文字通り全てだ。俺が生れて還る場所。与えれた心臓が無くなったら、神様の細胞に戻るだけ。また回収人として呼び出されるのか、別の何かとして蘇るのか、そのまま神様の細胞として過ごすのか、全て、彼次第だ。
本当かどうか知らないが、神様は自分の気に入った命は手放さず、ずっと自分の細胞として留めておくそうだ。
不完全な自分の身体を完成させるために世界を渡り歩いている、というやつもいる。
神様は俺たちを海に放つ時「僕の弱い細胞を助けてあげて」、そう言った。
弱い細胞とはもちろんお前たちのことだ。
お前たちも、俺と同じ様に神様から生まれて、神様に還る。
いいか、神様はな、生きる力の弱い命を身体に取り込むと衰弱してしまう。だから、世界中に弱い命が溢れてくると、強いものだけ連れて、次の世界に進むんだ。
乗客が最後に一人になってしまうのもそんなわけだ。
次の世界で神様は、しばらく強い命をもとに身体を作り直し、そしてまた、完全な身体を求めて、不完全な細胞を修行の旅に出す。
お前たち人間としてな。それを気が遠くなるような年月繰り替えしているんだよ。
――神様の話はたいくつか? まあ、今まで存在を知らなかったんだ。ピンと来なくても仕方がない。
だったら鳥の話をしようか。
アオチを助けた、漆黒の翼に赤い縁取りの目をしたあの鳥、監視鳥の話はどうだ。
ああいう鳥がたくさんいる事はさっき話した通りだ。
だが、あいつらは実は一羽の鳥から出来ていると言ったらどうだ? 驚かないか?
俺たちが神様の細胞なら、あいつらは神様の使いの細胞なんだ。
使いというのは、神様がいつも連れている大鳥のことだ。
それは美しい青い鳥だ――。
監視鳥は黒だと言いたいんだろ? 本当にお前たちは目に見えるものに振り回されるな。あれは本体に戻って青に変わる。
監視鳥は終末の時だけに現れるわけではない。
いつもお前らの上を飛んでいる。アオチは知っているだろ? お前が心臓を喰う鳥から助けられたのもそのおかげだ。
お前らが町中で見ていたのは目玉を喰う鳥、一度死んだ者が生き還らないように。あれも使いの別の姿だ。使いは本当に器用に姿も大きさも変えるんだ。
心臓を喰う鳥は使いの別の姿ではない。自ら命を捨てた者の成れの果て、と言えば良いのかな。お前たちの言う、自殺した者たちの最終形態だ。
常に空腹でああやって心臓を求めて飛び回っている。
だから、俺が銀の銃で終わりにしてやってるんだ。
あいつらは飢えて苦しんでいるからな。ああしてやらないと永遠に開放されない。
それで、監視鳥の話だった。監視鳥の役目は神様の意志を叶えることだ。やっかいなのは、使いの人格が神様と同じとは限らないところにある。
雪山でアオチを助けたことがあったようだが、あれも使いの勝手な判断だ。
お前が気になったんだよ。あんなあからさまに姿を現すことなんてないのに、どうしたことかな。使いの気まぐれなのか、神様の指示なのかは知らない。
生き残るのはオゼだと、回収人の――神様の細胞である俺たちは確信しているけれど、監視鳥はアオチを連れて行きたいらしい。
そして、これを言うか迷ったのだけれど、やっぱり聞いて欲しい。
一人しか次の世界に連れていけない、そのルールを作ったのは他でもない、神様だ。
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