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STEP 2 「どう、でしょうか?」
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「八城さん、マジでありえんくらい仕事持ってくるんだが~?」
「いや、本当。この書類の六割八城さん」
「うわ、見たくない……」
好きな男性がいる。社内でも営業成績ナンバーワンを取り続けているような、とんでもなくすごい人だ。
「いや、でも綾子ちゃんは八城さんの営業補佐自分から立候補してたでしょ、頑張りなよ」
「あの時と今とでは本当に状況が違いすぎる……! 間瀬さん、助けて~!」
「嫌です~。私だってこれ見て。花岡さんの案件で手一杯」
「あ~、もう。どっかに暇な人いないの」
「いない」
木元綾子の嘆きの声で、間瀬洋子がけらけらと笑っている。わが社の総務部一課では見慣れた光景だ。
会話を楽しみつつも、高速でタイピングを続ける2人の姿は圧巻だ。やはり、伊達に営業部一課のホープを担当している人たちではないと思う。もちろん私にはそんな器用な芸当はないから、黙って伝票を整理していくだけだ。
「忙しすぎて目が死んでる」
「綾子ちゃんの目は大体死んでる」
「間瀬さんひどい!」
「八城うるおい効果もなくなっちゃったもんねえ~」
「ああ~……八城さん、もう、性的な目で見られない」
職場の男性とは、性的な目で見るべきものなのだろうか。いに考え込んで、指先が止まりかけてしまった。横から、同じように一課の女性陣の声が聞こえてくる。
「綾子ちゃ~ん、職場の男性を白昼堂々と性的な目で見てはだめよ」
「何でですかぁ。こんないっそがしいんだから、それくらいのご褒美欲しいです」
木元綾子は、一課のアイドルキャラクターと言っても良い。私とは同期入社らしいけれど、お互いこの部署で初めて顔を合わせた程度の付き合いだ。木元は入社以降、現在に至るまでずっと、総務部一課の社員として働き続けている。
「まさか、八城さんがあんなに積極的な人だとはなあ」
「綾子ちゃんにも積極的になってくれるかもしれないからいいんじゃないの?」
「ダメダメ。もう、ぜんっぜん脈ナシですし、絢瀬さんになんか勝てっこない」
「絢瀬・西谷ペアは別格」
総務部の一課と二課は、この会社の女性社員なら誰もが憧れる部署だ。とくに、総務部二課は、顔採用をされているのではないかと囁かれるほど美人が多い部署で、今話題に上がった絢瀬菫と西谷可憐も、二課に所属している。
もっとも西谷は諸々の引継ぎを終えて、半年前に退職してしまったのだけれども。
「せっかく八城さんの補佐ついたのに、ここからって時にまさか、八城さんが絢瀬さんに猛アプローチ仕掛けるとこ、見る羽目になるとは思わないじゃないですかあ」
「いやあ、びっくりしたよね。八城さん、ぜんっぜん人目を憚らない」
「まだ好きなんですよね? たぶん」
八城春海に、秘めた恋心を抱いている人は多いだろうか。彼は引く手数多だろうに、女性社員にアプローチを受けているところをあまり見ない。その理由は、彼の想い人が社内にいるという噂がいまだに色濃く残っているからだ。
総務部二課の絢瀬菫に振られてしまったらしいという真偽の定かではない噂のせいで、八城はいろいろな意味で有名人になってしまっている。営業部のエースで、負けなしの八城が陥落した相手があの麗しの絢瀬となると、ほとんどの女性が、八城へのアプローチを諦めてしまっていそうだ。
木元の反応もよくわかる。もしかしたら、アプローチしている女性の姿が見えないだけで、八城は何人もの女性に声をかけられているのかもしれないけれど。
——例えば、私みたいに。
「絢瀬さんには絶対勝てない。あー、まだ好きなのかな~。好きだろうな~。絢瀬さんすてきだもんな~。あ~」
絢瀬が所属する総務部二課は、役員の秘書業務とオフィスの管理業務が多く、そこそこゆとりがある業務内容になっている。それに比べて、営業社員の補佐を中心の業務とする我らが総務部一課は、つねに目を回すような忙しさだ。
それでもこの部署を希望する女性社員が多いのは、やはり、営業部に魅力的な男性が数多く所属しているからだろう。
実際に、総務部一課はかなり入れ替わりが激しい。営業部の社員と結婚して産休育休に入るものならばすぐに部署の変更を余儀なくされ、新たな社員が投入される。
「小宮さんはどう思う?」
「あ、はい?」
かくいう私も、その、投入された側の社員だ。
真剣に納品伝票を作成していたところに言葉をかけられて、思わず返す声が裏返ってしまった。私の反応に、間瀬と木元が笑っている。
恥ずかしい。
「声が……、びっくりして裏返っちゃいました」
「ごめんごめん。すっごい集中してたもんね」
「あ、いえ。必死で」
「あ~もう、肩の力抜きなよ~? ほら、八城さんのこと」
「や、しろさん?」
木元は頗る社交的な人だ。ランチに誘ってくれたこともあるし、私の歓迎会では、つねに隣であれこれと世話をしてくれた。貴重な存在ではあるけれど、かなりどぎまぎすることを言われたりする。
「絢瀬さんのこと、まだ好きだと思う?」
八城が傍目にも見て取れるほどオープンに絢瀬菫に積極的なアプローチを仕掛けていたのは、一年以上も前のことだ。その話題がいまだに尾を引いているのは、八城が社食で、今も当たり前のように絢瀬に声をかけて、何かを話している姿を見かけるからだと思う。
八城は基本的に誰に対しても友好的で、顔見知りとあればどんなに忙しくても声をかけてくれる人だ。
「どう、でしょうか?」
たぶん、いまだに八城は絢瀬菫を想っているだろう。一度正面を切って本人に聞いてしまったことを思い返しては、苦い気分になってしまった。
「はあ~。小宮さん、私と補佐担当変わる?」
木元には、有能な営業社員と結婚して、家庭に入っては毎日昼ドラを観るという、壮大な夢があると聞いている。壮大な夢のために、八城をメインターゲットにしていたらしいけれど、その八城が、別の女性に心底惚れ込んでしまった。
木元がその時から、仕事へのモチベーションをうまく保てないという話は、私が半年前にこの部署に配属されたときから、もう何度も聞いている。
ふらふらと回覧物を持って立ち上がった木元が私の前まで歩いてくる。手渡されたものにお礼を言いつつ顔を見上げれば、可愛らしく両手を目元に置いて「しくしく」と泣きまねをされてしまった。
「え? うーん、変わります、か?」
「こら! 小宮さんに頼らない」
「間瀬さん~!」
私の担当する営業社員は、基本的には営業部二課に所属している。新規案件獲得への動きが激しい一課と比べて、二課はルート営業を得意としているため、私の担当業務も突発的なものは少ない。もちろん、営業一課の社員の補佐に比べて少ないというだけだから、つねに仕事は山盛りだ。
間瀬に注意を受けた木元が、ぷっくりと頬を膨らませて拗ねた顔を作っている。こういうところが、木元のかわいらしさだと思う。私は木元に爪の垢をもらったほうが良いだろうか。真剣に考えてしまう。
「小宮さんはただでさえ忙しいんだから、邪魔しない」
「ちぇ~。せっかく同期なのに」
「文句垂れない」
「間瀬さぁ~ん……。だって、小宮さんの仕事量、明らかにおかしいんですもん」
「それは、……その通りだけど。八城さんの補佐任せたら、ますます忙しいでしょ」
「八城さんのお守り任せて、人事部の仕事は引き受けません戦法!」
「綾子ちゃん、それは部長に言わないとどうにもならない」
「その部長がなあ……」
私を見つめていた二人から、魂までぽろりと落ちてしまいそうな大きなため息が鳴った。木元と間瀬は、ことさらに私の仕事の量に気を使ってくれている。
半年前、この部署に配属が決まる前まで、私は人事部一課に所属していた。それが季節外れの人事異動が発生し、私は新卒採用の部署の担当を抜け出せないまま、総務部一課に机を並べることになった。
現在、私の頭の中には、新卒採用のスケジュールと、毎日の営業社員のルーティンワークの補佐業務がぐるぐると回り続けている。
「私は、全然大丈夫です」
「小宮さんからはその言葉しか聞いたことない」
「はい。木元さん、本当に大丈夫です」
求められるなら、全力で向き合わなければならないと思う。この会社に入ることが決まったときに、固く誓ったことだ。
仕事は絶対に投げ出さない。どうあっても、何かに貢献できるように精いっぱい尽力する。言葉にすれば簡単な響きだけれど、日々の業務に忙殺されるとたまに忘れてしまいそうになる。
「お仕事は、楽しいです」
「でも頑張りすぎはダメだからね」
総務部一課の母こと間瀬に言われて、大きくうなずいた。総務部の構成員の一人ひとりが現在何の仕事を抱えているのかは、同じ部署に居てもよくわからないのが現状だ。それほど、担当営業との距離が近く、ほぼ専属的な動きをすることになる。ゆえに、八城や、私の同期でもある花岡のような、やり手の営業マンの補佐担当は目を回すほどに忙しいわけだ。
「木元さんと間瀬さんも、いつもお疲れ様です。何かすこしでもお手伝いができるよう頑張ります」
「なんか、どうしよ。小宮さんが新入社員に見えてきた」
「綾子ちゃん、奇遇だね。私たちも仕事しよっか……」
「うっす……」
間瀬と木元が声をあげなくなってしまえば、すぐに部署内で会話を楽しむ人がいなくなってしまった。こうなれば電話応対以外は無音の状態が続くことになる。
「いや、本当。この書類の六割八城さん」
「うわ、見たくない……」
好きな男性がいる。社内でも営業成績ナンバーワンを取り続けているような、とんでもなくすごい人だ。
「いや、でも綾子ちゃんは八城さんの営業補佐自分から立候補してたでしょ、頑張りなよ」
「あの時と今とでは本当に状況が違いすぎる……! 間瀬さん、助けて~!」
「嫌です~。私だってこれ見て。花岡さんの案件で手一杯」
「あ~、もう。どっかに暇な人いないの」
「いない」
木元綾子の嘆きの声で、間瀬洋子がけらけらと笑っている。わが社の総務部一課では見慣れた光景だ。
会話を楽しみつつも、高速でタイピングを続ける2人の姿は圧巻だ。やはり、伊達に営業部一課のホープを担当している人たちではないと思う。もちろん私にはそんな器用な芸当はないから、黙って伝票を整理していくだけだ。
「忙しすぎて目が死んでる」
「綾子ちゃんの目は大体死んでる」
「間瀬さんひどい!」
「八城うるおい効果もなくなっちゃったもんねえ~」
「ああ~……八城さん、もう、性的な目で見られない」
職場の男性とは、性的な目で見るべきものなのだろうか。いに考え込んで、指先が止まりかけてしまった。横から、同じように一課の女性陣の声が聞こえてくる。
「綾子ちゃ~ん、職場の男性を白昼堂々と性的な目で見てはだめよ」
「何でですかぁ。こんないっそがしいんだから、それくらいのご褒美欲しいです」
木元綾子は、一課のアイドルキャラクターと言っても良い。私とは同期入社らしいけれど、お互いこの部署で初めて顔を合わせた程度の付き合いだ。木元は入社以降、現在に至るまでずっと、総務部一課の社員として働き続けている。
「まさか、八城さんがあんなに積極的な人だとはなあ」
「綾子ちゃんにも積極的になってくれるかもしれないからいいんじゃないの?」
「ダメダメ。もう、ぜんっぜん脈ナシですし、絢瀬さんになんか勝てっこない」
「絢瀬・西谷ペアは別格」
総務部の一課と二課は、この会社の女性社員なら誰もが憧れる部署だ。とくに、総務部二課は、顔採用をされているのではないかと囁かれるほど美人が多い部署で、今話題に上がった絢瀬菫と西谷可憐も、二課に所属している。
もっとも西谷は諸々の引継ぎを終えて、半年前に退職してしまったのだけれども。
「せっかく八城さんの補佐ついたのに、ここからって時にまさか、八城さんが絢瀬さんに猛アプローチ仕掛けるとこ、見る羽目になるとは思わないじゃないですかあ」
「いやあ、びっくりしたよね。八城さん、ぜんっぜん人目を憚らない」
「まだ好きなんですよね? たぶん」
八城春海に、秘めた恋心を抱いている人は多いだろうか。彼は引く手数多だろうに、女性社員にアプローチを受けているところをあまり見ない。その理由は、彼の想い人が社内にいるという噂がいまだに色濃く残っているからだ。
総務部二課の絢瀬菫に振られてしまったらしいという真偽の定かではない噂のせいで、八城はいろいろな意味で有名人になってしまっている。営業部のエースで、負けなしの八城が陥落した相手があの麗しの絢瀬となると、ほとんどの女性が、八城へのアプローチを諦めてしまっていそうだ。
木元の反応もよくわかる。もしかしたら、アプローチしている女性の姿が見えないだけで、八城は何人もの女性に声をかけられているのかもしれないけれど。
——例えば、私みたいに。
「絢瀬さんには絶対勝てない。あー、まだ好きなのかな~。好きだろうな~。絢瀬さんすてきだもんな~。あ~」
絢瀬が所属する総務部二課は、役員の秘書業務とオフィスの管理業務が多く、そこそこゆとりがある業務内容になっている。それに比べて、営業社員の補佐を中心の業務とする我らが総務部一課は、つねに目を回すような忙しさだ。
それでもこの部署を希望する女性社員が多いのは、やはり、営業部に魅力的な男性が数多く所属しているからだろう。
実際に、総務部一課はかなり入れ替わりが激しい。営業部の社員と結婚して産休育休に入るものならばすぐに部署の変更を余儀なくされ、新たな社員が投入される。
「小宮さんはどう思う?」
「あ、はい?」
かくいう私も、その、投入された側の社員だ。
真剣に納品伝票を作成していたところに言葉をかけられて、思わず返す声が裏返ってしまった。私の反応に、間瀬と木元が笑っている。
恥ずかしい。
「声が……、びっくりして裏返っちゃいました」
「ごめんごめん。すっごい集中してたもんね」
「あ、いえ。必死で」
「あ~もう、肩の力抜きなよ~? ほら、八城さんのこと」
「や、しろさん?」
木元は頗る社交的な人だ。ランチに誘ってくれたこともあるし、私の歓迎会では、つねに隣であれこれと世話をしてくれた。貴重な存在ではあるけれど、かなりどぎまぎすることを言われたりする。
「絢瀬さんのこと、まだ好きだと思う?」
八城が傍目にも見て取れるほどオープンに絢瀬菫に積極的なアプローチを仕掛けていたのは、一年以上も前のことだ。その話題がいまだに尾を引いているのは、八城が社食で、今も当たり前のように絢瀬に声をかけて、何かを話している姿を見かけるからだと思う。
八城は基本的に誰に対しても友好的で、顔見知りとあればどんなに忙しくても声をかけてくれる人だ。
「どう、でしょうか?」
たぶん、いまだに八城は絢瀬菫を想っているだろう。一度正面を切って本人に聞いてしまったことを思い返しては、苦い気分になってしまった。
「はあ~。小宮さん、私と補佐担当変わる?」
木元には、有能な営業社員と結婚して、家庭に入っては毎日昼ドラを観るという、壮大な夢があると聞いている。壮大な夢のために、八城をメインターゲットにしていたらしいけれど、その八城が、別の女性に心底惚れ込んでしまった。
木元がその時から、仕事へのモチベーションをうまく保てないという話は、私が半年前にこの部署に配属されたときから、もう何度も聞いている。
ふらふらと回覧物を持って立ち上がった木元が私の前まで歩いてくる。手渡されたものにお礼を言いつつ顔を見上げれば、可愛らしく両手を目元に置いて「しくしく」と泣きまねをされてしまった。
「え? うーん、変わります、か?」
「こら! 小宮さんに頼らない」
「間瀬さん~!」
私の担当する営業社員は、基本的には営業部二課に所属している。新規案件獲得への動きが激しい一課と比べて、二課はルート営業を得意としているため、私の担当業務も突発的なものは少ない。もちろん、営業一課の社員の補佐に比べて少ないというだけだから、つねに仕事は山盛りだ。
間瀬に注意を受けた木元が、ぷっくりと頬を膨らませて拗ねた顔を作っている。こういうところが、木元のかわいらしさだと思う。私は木元に爪の垢をもらったほうが良いだろうか。真剣に考えてしまう。
「小宮さんはただでさえ忙しいんだから、邪魔しない」
「ちぇ~。せっかく同期なのに」
「文句垂れない」
「間瀬さぁ~ん……。だって、小宮さんの仕事量、明らかにおかしいんですもん」
「それは、……その通りだけど。八城さんの補佐任せたら、ますます忙しいでしょ」
「八城さんのお守り任せて、人事部の仕事は引き受けません戦法!」
「綾子ちゃん、それは部長に言わないとどうにもならない」
「その部長がなあ……」
私を見つめていた二人から、魂までぽろりと落ちてしまいそうな大きなため息が鳴った。木元と間瀬は、ことさらに私の仕事の量に気を使ってくれている。
半年前、この部署に配属が決まる前まで、私は人事部一課に所属していた。それが季節外れの人事異動が発生し、私は新卒採用の部署の担当を抜け出せないまま、総務部一課に机を並べることになった。
現在、私の頭の中には、新卒採用のスケジュールと、毎日の営業社員のルーティンワークの補佐業務がぐるぐると回り続けている。
「私は、全然大丈夫です」
「小宮さんからはその言葉しか聞いたことない」
「はい。木元さん、本当に大丈夫です」
求められるなら、全力で向き合わなければならないと思う。この会社に入ることが決まったときに、固く誓ったことだ。
仕事は絶対に投げ出さない。どうあっても、何かに貢献できるように精いっぱい尽力する。言葉にすれば簡単な響きだけれど、日々の業務に忙殺されるとたまに忘れてしまいそうになる。
「お仕事は、楽しいです」
「でも頑張りすぎはダメだからね」
総務部一課の母こと間瀬に言われて、大きくうなずいた。総務部の構成員の一人ひとりが現在何の仕事を抱えているのかは、同じ部署に居てもよくわからないのが現状だ。それほど、担当営業との距離が近く、ほぼ専属的な動きをすることになる。ゆえに、八城や、私の同期でもある花岡のような、やり手の営業マンの補佐担当は目を回すほどに忙しいわけだ。
「木元さんと間瀬さんも、いつもお疲れ様です。何かすこしでもお手伝いができるよう頑張ります」
「なんか、どうしよ。小宮さんが新入社員に見えてきた」
「綾子ちゃん、奇遇だね。私たちも仕事しよっか……」
「うっす……」
間瀬と木元が声をあげなくなってしまえば、すぐに部署内で会話を楽しむ人がいなくなってしまった。こうなれば電話応対以外は無音の状態が続くことになる。
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