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STEP 4 「キスしてもいい?」
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もともと給湯室はそんなに大きなつくりではないから、まさか入ってくるとは思ってもいない。
「何でこのフロアにいんの?」
「うん? すこし、社長室にお茶出しを」
「それ二課の仕事じゃん」
「はい……? おっしゃる通りです……?」
ぎゅっと顔を顰められ、困って絢瀬に視線を向けると、私と同じく困り顔が見えた。
「ええと、小宮さんは、二課と間違って依頼されたお仕事をしてくれているだけです、よ?」
「あ、ああ、いや。ちょっと苛立ちが出たっす。ごめん、小宮ビビらせた?」
花岡は無意識に眉間に力が入っていたことに気づいたらしく右手で眉間を摘まんでほぐすように動かしている。
気遣う言葉に首を横に振れば、花岡はいつものように表情を明るくさせてから口を開いた。
「児島だろ」
「うん?」
「お前にこれ頼んだの」
「あ、ああ……、そう、だったかなあ」
「しらばっくれんなよ」
「ええ、怒ってるの?」
「怒ったら吐く?」
「嘔吐はしないよ」
「意味が違う」
すこしふざけたつもりが、思ったよりも、花岡は真剣だったらしい。ため息を吐かれてしまった。
「中田がお前探してんのに見当たらないってうるせえから、何してんのかと思ったら……、またあいつか」
「あいつ、はだめだよ」
「あのクソハゲ」
「花岡くん、悪化してる……」
「常態化したハラスメントの年配社員」
「うん……、それはほんとうに、いけないことだよね」
可憐からも児島の話を聞いているのか、花岡の中でも彼の評価は最低値だ。
八城からもあまりいい印象を持たれていないのは知っていたけれど、まさかこれほどまでにも社内の人に嫌悪されている人なのだとは知らなかった。
「お前さ、ちゃんと役員面談で言った?」
花岡が、何を訴えるべきだと言っているのかは、口に出されなくとも分かる。
八城にも私への児島の態度が見えているくらいだから、同期で距離も近い花岡なら、なおさらはっきりと知られてしまっているだろう。
曖昧に笑ってみたら「オイ」と威嚇されてしまった。花岡が子犬のように可愛らしくなってしまうのは、西谷可憐の前限定だ。
普段はかなり押しの強い男性だと知っている。それなのに私が会話できているのは、この不機嫌な男性が、こころから私を心配してくれていると知っているからだ。
「ああ、うーん、時間合わなくて、まだ先になりそうなんだ」
「はあ? もうほとんどの社員終わってるって聞いたけど」
役員面談は、日程の指定をせずに人事部に返事を送っていたはずだった。面談の日程調整を統括している児島から面談日の連絡が来ないのだから、つまり、私には面談の時間が用意されていないということだ。もともと、上層部に掛け合うつもりもないけれど、ここまで徹底的に嫌がらせされていることが他の社員に気づかれると大変なことになる。
憤る花岡に曖昧に笑いつつ、論点からずれたことを口にした。
「……まあ、お仕事があるのは良いことだと思うの」
「そうじゃねえだろ。だいたいお前は真面目過ぎるんだよ」
「真面目で怒られるの? もうとりえなくなっちゃう。レンちゃんに泣きつこう」
「お前……、あいつの名前だせば俺が黙ると思ってんだろ」
「ばれちゃった?」
「ばれちゃった? じゃねえんだわ」
尚もごまかされてくれなさそうな花岡に、苦笑してしまう。
「中田くん、急ぎの用事かな」
「急いでねえし自分で片付けろって八城さんに言われてたから気にしなくていい。……じゃなくて、今はパワハラ野郎の話を……」
「あはは。本当に仲良し同期ですよね」
詰問されて困り果てている私に気づいたのか、さりげなくフォローの声がかかった。思わず絢瀬のほうに視線を向けて、小さく笑われてしまう。どうやら、本当に困っているのを察せられていたらしい。
「いやいや、今は説教中なんですよ」
「花岡くんが怖いです」
「ん? お前、俺のせいにする?」
「きゃ、いたたたた!」
「痛くねえだろ」
軽く肘で小突かれて大げさに反応して見せたら、絢瀬が楽しそうに笑ってくれた。細やかな言い合いで腕を小突いてくるのは、可憐の癖だ。
いつも二人の時にやっていたことを思い出して、一人で笑いそうになる。花岡は、本当に可憐のことが好きでたまらないのだろう。
嬉しくなって同じように肘打ちしようと構えたところで、花岡との間に大きな手のひらが介入してきた。
「わ、」
「眞緒ちゃん、小宮さん無事だった?」
「あ、八城さん、うわ、連絡し忘れてました。さーせん、小宮無事でした」
「よかった」
花岡の肩に伸びている手を辿ってゆっくりと振り返ると、やはり、想像した通りの男性が立っていた。
「や、しろさん」
「迷子になってたかと思って、勝手に探しました」
「……え、ええ?」
まさか、八城にも探されていたとは思わない。それも、違うフロアまで探しに来てくれたらしい。呆然と見つめていれば、後ろから絢瀬の声が響いた。
「あはは。ごめんなさい。小宮さんお借りしていました」
「絢瀬さん、誑かさないでください」
「ええ? ひどい」
「絢瀬さんが誘拐犯だったって伝えておきます」
「ふふ。小宮さん、可愛いので、二課に攫っちゃおうかな」
まるで脚本に書かれたやり取りみたいに、ぽんぽんと楽しそうな言葉が行きかう。
八城はまた屈託なく笑っていて、絢瀬もたおやかに笑んでいる。これが、好意を持たれて振った女性と、まだ片思いを続けている男性の姿とは思えないほど、息ぴったりな問答だった。
「小宮さんは俺の近くで働いていてほしいんで、奪わないでください」
「いや、八城さん、たぶん小宮は二課に行ったほうがのびのび働けます」
絢瀬と八城の掛け合いに花岡が参加したところで、夢から醒めたような気分になった。あまりにもお似合いで、見ていると罪悪感のような痛みが胸に突き刺さってくる。
一刻も早くここから出たほうが良い。
自分の精神衛生によろしくないと判断して、カップに淹れ終わったコーヒーを盆の上に乗せていく。ここにいるよりは、社長室へお茶出しをするほうが良い。一人で決め込んで、声に出そうと顔をあげた。
「じゃあ、二課特権を使って、社長に直談判してきますね」
すっと白い手が出て、盆が攫われていく。あ、と口にする間もなく絢瀬が給湯室から出かけてちらりと振り返った。
「小宮さんと八城さん、社長一押しの高級コーヒー、一杯ずつどうぞ」
にっこりと微笑んで、出て行ってしまった。その言葉に、台の上に置かれた二杯のコーヒーの意味に気づいてしまう。
花岡がコーヒーを苦手としているのは、絢瀬も知っているらしい。
花岡も、気にした素振りを見せずに、ちらとコーヒーを見下ろして「苦そ……」とつぶやいていた。
「それじゃあ、俺は一応中田にも小宮確保したって伝えてきます」
「ああ、頼むわ」
「え、いえ、自分で」
「いいよ。……小宮もすこし休憩してけ」
花岡が爽やかな笑みを残して、踵を返して行ってしまった。まさか、業務時間中に、このほとんど人のいないフロアで八城と二人きりにされるとは思ってもいなかった。
八城は、絢瀬ともっと話がしたかったのではないだろうか。邪魔をしてしまったような気がする。
「邪魔した?」
「え?」
まさか、たった今自分の頭に浮かんでいた言葉を、八城に言われることになるとは思わない。意味が全く分からずに八城の瞳を見上げれば、小さく言葉が返ってきた。
「花岡といるとこ、割って入ったので」
「あ、いえ……。大丈夫です」
嘘を吐いている。私は、この、優しい男性に対して、吐いてはいけない嘘を吐いている。
急に思いだして、背筋が冷えた。
コーヒーが、給湯室の台の上で少しずつ熱を失っていく。すこし前まで、困惑したり笑ったり、切なくなったりしていた心臓が、すっと温度をなくしてしまったことに、ひどく似ている気がした。
「楽しそうに話してたけど」
「あ、はは。同期……、なので」
「あいつと話してるときは、ほんと楽しそうだよね」
「そ、れは」
『花岡が私の好きな人なのだから当然だ』なんて、思ってもいないような嘘を口にすれば、おそらく八城は納得してくれるだろう。けれど、それは私の本心ではない。
私は、好きな人の前ではどうにも口が回らなくなって、冗談なんてとても言えなくて、ただ、狼狽えているばかりになってしまう。
「明菜ちゃん」
八城に名前を呼ばれただけで、ひどく動揺している。
ひゅ、と、喉に冷たい空気が刺さってしまったかのような音が鳴った気がした。強引な引力に引き寄せられる玩具みたいに、おずおずと八城の顔を見上げる。
職場で、どうしてこんなにも親密そうに、甘く、優しく私の名前を呼んでくるのだろう。何か、知らない予感に背筋が痺れた。
八城春海の色気の前で、私が抵抗できたことなどない。
「な、んですか」
「キスしてもいい?」
尋ねるよりも、予告のような響きだ。
「何でこのフロアにいんの?」
「うん? すこし、社長室にお茶出しを」
「それ二課の仕事じゃん」
「はい……? おっしゃる通りです……?」
ぎゅっと顔を顰められ、困って絢瀬に視線を向けると、私と同じく困り顔が見えた。
「ええと、小宮さんは、二課と間違って依頼されたお仕事をしてくれているだけです、よ?」
「あ、ああ、いや。ちょっと苛立ちが出たっす。ごめん、小宮ビビらせた?」
花岡は無意識に眉間に力が入っていたことに気づいたらしく右手で眉間を摘まんでほぐすように動かしている。
気遣う言葉に首を横に振れば、花岡はいつものように表情を明るくさせてから口を開いた。
「児島だろ」
「うん?」
「お前にこれ頼んだの」
「あ、ああ……、そう、だったかなあ」
「しらばっくれんなよ」
「ええ、怒ってるの?」
「怒ったら吐く?」
「嘔吐はしないよ」
「意味が違う」
すこしふざけたつもりが、思ったよりも、花岡は真剣だったらしい。ため息を吐かれてしまった。
「中田がお前探してんのに見当たらないってうるせえから、何してんのかと思ったら……、またあいつか」
「あいつ、はだめだよ」
「あのクソハゲ」
「花岡くん、悪化してる……」
「常態化したハラスメントの年配社員」
「うん……、それはほんとうに、いけないことだよね」
可憐からも児島の話を聞いているのか、花岡の中でも彼の評価は最低値だ。
八城からもあまりいい印象を持たれていないのは知っていたけれど、まさかこれほどまでにも社内の人に嫌悪されている人なのだとは知らなかった。
「お前さ、ちゃんと役員面談で言った?」
花岡が、何を訴えるべきだと言っているのかは、口に出されなくとも分かる。
八城にも私への児島の態度が見えているくらいだから、同期で距離も近い花岡なら、なおさらはっきりと知られてしまっているだろう。
曖昧に笑ってみたら「オイ」と威嚇されてしまった。花岡が子犬のように可愛らしくなってしまうのは、西谷可憐の前限定だ。
普段はかなり押しの強い男性だと知っている。それなのに私が会話できているのは、この不機嫌な男性が、こころから私を心配してくれていると知っているからだ。
「ああ、うーん、時間合わなくて、まだ先になりそうなんだ」
「はあ? もうほとんどの社員終わってるって聞いたけど」
役員面談は、日程の指定をせずに人事部に返事を送っていたはずだった。面談の日程調整を統括している児島から面談日の連絡が来ないのだから、つまり、私には面談の時間が用意されていないということだ。もともと、上層部に掛け合うつもりもないけれど、ここまで徹底的に嫌がらせされていることが他の社員に気づかれると大変なことになる。
憤る花岡に曖昧に笑いつつ、論点からずれたことを口にした。
「……まあ、お仕事があるのは良いことだと思うの」
「そうじゃねえだろ。だいたいお前は真面目過ぎるんだよ」
「真面目で怒られるの? もうとりえなくなっちゃう。レンちゃんに泣きつこう」
「お前……、あいつの名前だせば俺が黙ると思ってんだろ」
「ばれちゃった?」
「ばれちゃった? じゃねえんだわ」
尚もごまかされてくれなさそうな花岡に、苦笑してしまう。
「中田くん、急ぎの用事かな」
「急いでねえし自分で片付けろって八城さんに言われてたから気にしなくていい。……じゃなくて、今はパワハラ野郎の話を……」
「あはは。本当に仲良し同期ですよね」
詰問されて困り果てている私に気づいたのか、さりげなくフォローの声がかかった。思わず絢瀬のほうに視線を向けて、小さく笑われてしまう。どうやら、本当に困っているのを察せられていたらしい。
「いやいや、今は説教中なんですよ」
「花岡くんが怖いです」
「ん? お前、俺のせいにする?」
「きゃ、いたたたた!」
「痛くねえだろ」
軽く肘で小突かれて大げさに反応して見せたら、絢瀬が楽しそうに笑ってくれた。細やかな言い合いで腕を小突いてくるのは、可憐の癖だ。
いつも二人の時にやっていたことを思い出して、一人で笑いそうになる。花岡は、本当に可憐のことが好きでたまらないのだろう。
嬉しくなって同じように肘打ちしようと構えたところで、花岡との間に大きな手のひらが介入してきた。
「わ、」
「眞緒ちゃん、小宮さん無事だった?」
「あ、八城さん、うわ、連絡し忘れてました。さーせん、小宮無事でした」
「よかった」
花岡の肩に伸びている手を辿ってゆっくりと振り返ると、やはり、想像した通りの男性が立っていた。
「や、しろさん」
「迷子になってたかと思って、勝手に探しました」
「……え、ええ?」
まさか、八城にも探されていたとは思わない。それも、違うフロアまで探しに来てくれたらしい。呆然と見つめていれば、後ろから絢瀬の声が響いた。
「あはは。ごめんなさい。小宮さんお借りしていました」
「絢瀬さん、誑かさないでください」
「ええ? ひどい」
「絢瀬さんが誘拐犯だったって伝えておきます」
「ふふ。小宮さん、可愛いので、二課に攫っちゃおうかな」
まるで脚本に書かれたやり取りみたいに、ぽんぽんと楽しそうな言葉が行きかう。
八城はまた屈託なく笑っていて、絢瀬もたおやかに笑んでいる。これが、好意を持たれて振った女性と、まだ片思いを続けている男性の姿とは思えないほど、息ぴったりな問答だった。
「小宮さんは俺の近くで働いていてほしいんで、奪わないでください」
「いや、八城さん、たぶん小宮は二課に行ったほうがのびのび働けます」
絢瀬と八城の掛け合いに花岡が参加したところで、夢から醒めたような気分になった。あまりにもお似合いで、見ていると罪悪感のような痛みが胸に突き刺さってくる。
一刻も早くここから出たほうが良い。
自分の精神衛生によろしくないと判断して、カップに淹れ終わったコーヒーを盆の上に乗せていく。ここにいるよりは、社長室へお茶出しをするほうが良い。一人で決め込んで、声に出そうと顔をあげた。
「じゃあ、二課特権を使って、社長に直談判してきますね」
すっと白い手が出て、盆が攫われていく。あ、と口にする間もなく絢瀬が給湯室から出かけてちらりと振り返った。
「小宮さんと八城さん、社長一押しの高級コーヒー、一杯ずつどうぞ」
にっこりと微笑んで、出て行ってしまった。その言葉に、台の上に置かれた二杯のコーヒーの意味に気づいてしまう。
花岡がコーヒーを苦手としているのは、絢瀬も知っているらしい。
花岡も、気にした素振りを見せずに、ちらとコーヒーを見下ろして「苦そ……」とつぶやいていた。
「それじゃあ、俺は一応中田にも小宮確保したって伝えてきます」
「ああ、頼むわ」
「え、いえ、自分で」
「いいよ。……小宮もすこし休憩してけ」
花岡が爽やかな笑みを残して、踵を返して行ってしまった。まさか、業務時間中に、このほとんど人のいないフロアで八城と二人きりにされるとは思ってもいなかった。
八城は、絢瀬ともっと話がしたかったのではないだろうか。邪魔をしてしまったような気がする。
「邪魔した?」
「え?」
まさか、たった今自分の頭に浮かんでいた言葉を、八城に言われることになるとは思わない。意味が全く分からずに八城の瞳を見上げれば、小さく言葉が返ってきた。
「花岡といるとこ、割って入ったので」
「あ、いえ……。大丈夫です」
嘘を吐いている。私は、この、優しい男性に対して、吐いてはいけない嘘を吐いている。
急に思いだして、背筋が冷えた。
コーヒーが、給湯室の台の上で少しずつ熱を失っていく。すこし前まで、困惑したり笑ったり、切なくなったりしていた心臓が、すっと温度をなくしてしまったことに、ひどく似ている気がした。
「楽しそうに話してたけど」
「あ、はは。同期……、なので」
「あいつと話してるときは、ほんと楽しそうだよね」
「そ、れは」
『花岡が私の好きな人なのだから当然だ』なんて、思ってもいないような嘘を口にすれば、おそらく八城は納得してくれるだろう。けれど、それは私の本心ではない。
私は、好きな人の前ではどうにも口が回らなくなって、冗談なんてとても言えなくて、ただ、狼狽えているばかりになってしまう。
「明菜ちゃん」
八城に名前を呼ばれただけで、ひどく動揺している。
ひゅ、と、喉に冷たい空気が刺さってしまったかのような音が鳴った気がした。強引な引力に引き寄せられる玩具みたいに、おずおずと八城の顔を見上げる。
職場で、どうしてこんなにも親密そうに、甘く、優しく私の名前を呼んでくるのだろう。何か、知らない予感に背筋が痺れた。
八城春海の色気の前で、私が抵抗できたことなどない。
「な、んですか」
「キスしてもいい?」
尋ねるよりも、予告のような響きだ。
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