16 / 52
STEP 4 「明菜のくち、うまそうに見えるから」
しおりを挟む
許可を取るような口調で囁くくせに、その目のどろどろの熱を見せつけられたら、答えを返す方法すらあやしく歪んでしまう。
私は今、一体何を、言われたのだろうか。
つねに弧を描いている八城の唇が、私の名前をもう一度呼んだ。「あきな、」と囁かれて、小さく震えた声を吐き下ろす。
「き、す……って」
「ん」
「は、い?」
「今、ここで」
「い、ま?」
足が地面に縫い付けられていく。じっと、身動きすら取れずに八城を見上げていた。八城が一歩分、身体をこちらに寄せてくる。ただ、抵抗さえも奪われて、八城の瞳を見つめていた。
「したい」
囁きながら、八城が屈んで顔を寄せてくる。
近づかれる瞬間に八城の香水が香って、ふと我に返った。後退りしようと足を動かした私の腰に誰かの腕が回って、真逆の方向につんのめりかける。
「逃げんな」
「業務時間中、です」
「俺はいま休憩中」
すこし休憩していいとは言われた。けれど、絢瀬が用意してくれたコーヒーはきっと、私の知らないうちに冷めきって、飲むころには、すこし残念な温度になってしまっているだろう。八城の分も気を利かせて淹れてくれたはずなのに、ちっとも手を付ける気配がない。
どこまでも近づいて来ようとする八城の胸を押し返そうと手を動かして、あっさりと熱に捕らわれる。
私の指先を掴む八城の手が、燃えそうに熱い。熱い感触に吃驚しているうちに、小さく八城の唇が笑ったのが見えた。
「わたしは」
肯定も、否定も、させる気がなかったのだろう。
震える声が、柔らかく触れた何かの熱で、途切れてしまった。視界が曖昧になってしまいそうなほどに近くにいる人が、やはり唇を笑わせている。
「や、しろさん」
「……もうした」
八城の囁きは、からかうような声だった。
八城の家のソファでされたときは、一度も唇に触れられなかった。
もしかしたら、この恋人ごっこのなかでは、キスはできないのかもしれないとも思った。けれど、八城は簡単に、私の唇に熱を移して笑っている。
八城は、たぶん、はじめての金曜日に部屋を訪れた私相手にも、簡単にキスをすることができただろう。
今更思い知った。八城の手腕の前で、私が逃げることなどできるはずもない。私に合わせて、可愛らしいままごとの恋愛をしてくれている。
この人を、すこしでも誘惑しようと思った自分の浅はかさに、打ちのめされてしまいそうだ。
「いま、ゆうわく、してませ、ん」
誘惑なんて、できていたことは、一度もない。
どうして、今、このタイミングで八城がキスをしてきたのかもわからない。分からないことばかりで、私の頭はつねに八城に支配されている。
これが相手に誘惑されて、陥溺させられた人間の頭の中なのだとしたら、私に同じことができるはずもない。
八城は、私の精いっぱいの悪態にも楽しそうに笑っている。どうしてこんなにも、余裕なのだろう。いまだに腰に回された手のせいで、どこにも逃げられない。
「そ? じゃあ勝手に誘惑されたかも」
「勝手にって」
誘惑をしなければならない。逃げるのではなく、今ここで、八城を誑かす何かを仕掛けなければならない。けれど、そんなことをしていたら、今日のこれからの仕事は、たぶん、何も手につかなくなってしまう。
「明菜のくち、うまそうに見えるから」
「くちは、ぜんぜん」
「食いたい」
ストレートに誘惑されて、とうとう目が眩んでくる。ただ、逃げ出したい気分でいっぱいになって、とうとう逃げるように顔が俯いてしまった。
「し、ごとちゅう、です」
「ん?」
「あやせさん、もどって、きます」
「んー、まだ時間あると思うけど」
「こんな、ところで、」
「あと三分くらいは、俺と明菜だけ」
俯く耳に、そっと囁き入れてくる。悪い言葉を使って、わざと揺さぶっているのだとわかってしまった。
「——どうする? 誘惑、してくれないの?」
「ゆ、うわくは」
「三分あったら、いっぱいキスできるけど」
「やしろさん、」
「したくないですか」
したいなんて口に出したら、三分では終わってくれなさそうな声だった。
触れられる手も、腰も、猛烈に熱い。何か知らない感覚を植え付けられているような気がして、必死で首を振った。
「……っだめです」
「あはは」
「八城さんっ」
本気で困り果てて小さく叫んだら、私に熱を送り込んできていた手があっさりと剥がれた。瞬時に一歩後退りして、給湯室の入口を隠すように立っている背の高い男性を見上げる。
「はい。ごめんなさい。仕事戻ります」
あっさりと謝罪されて、急に感情の行き場所をなくされてしまったような気分だ。八城は可愛らしく頭を下げて、顔をあげながら私の表情を覗き込んでくる。
「あ、怒ってなくてよかった」
「お、こっては、いないです、けど。……しんぞうにわるいです」
「はい。調子乗りました」
「会社で誘惑は、ずるいです」
「はは。ごめんごめん」
けらけらと笑いつつ、「もう何もしないから横行っていい?」と聞かれて、乱れた拍動を整えながら頷く。
さっきまでの意地悪な目を引っ込めた八城が優しく笑って、冷めきったコーヒーを掴んだ。躊躇いなくカップに口をつけて、運動後に水分補給をするかのようにごくごくと飲み下していく。
しきりに運動する喉仏に唖然としてしまった。こんなにも、コーヒーを水のように荒っぽく、豪快に飲む人を見たことがない。
八城の豪胆さを見ているような気分で、小さく笑ってしまった。
「何笑ってんすか」
「あ、ごめんなさい。豪快にお飲みになるから」
「さすがに一口も飲んでなかったら、絢瀬さんに、いかがわしいことしてたってバレるでしょ」
「あ……、飲みます」
「明菜ちゃんはゆっくりでいいよ」
慌てて同じように飲みかけて、カップを手で塞がれてしまった。
伸ばされた手を辿って八城の顔を見上げる。八城はすでに空にしたらしいカップを、シンクに置いて、私を見つめ返してきた。
「ごちそうさま」
「あ、いえ。これは絢瀬さんが」
「いや、さっきのこと」
「さっき、の?」
「わかんねえの? ここ、うまかったです。ごちそーさまって意味だけど」
からかうように自分の下唇のあたりを二度指先で叩いて示してくる姿に、すこし落ち着きかけていた心音がうるさくなってしまった。八城の隣にいる間、平常心でいられたことがない。
「明菜ちゃんにずるいって可愛く睨まれても、やめる気ないから、覚悟してください」
八城のスイッチの切り替わりの前で、常に目を回している。
遠慮しない指先が、私の髪の表面を愛でるように優しく撫でる。耳をあらわにするように髪をかけられて、動揺している間に提案を吹き込まれた。
「明菜」
「ん、は、い」
「今日、明菜ん家、行っていい?」
今日は金曜日だ。
もちろん、八城の家に行く準備をしていた。
まさか、私の家に来たいと言われるとは思ってもいない。わずかに目を見張っているうちに「行きたいんだけど」と追い打ちをかけられてしまった。
すこしだけ顔を離して、私の表情を覗き込んでくる。
「いい、ですけど……、なにもない、ですよ」
「明菜が居ればそれでいい」
「……そうですか」
「明菜ん家行けると思って、あと四時間、死ぬ気でやります」
「死ぬ気は、やめてください」
「はは、明菜も残業禁止だからな?」
「がんばります」
「よし、いい子」
ぐるりと私の頭を撫でた八城が笑って「先戻るわ」と告げてくる。黙って頷けば、満足そうにまた頭を撫でられた。
「小宮さんは、もうすこし休憩していいと思いますんで」
「……いつも、お気遣いありがとうございます」
「ん、素直な小宮さんに癒された」
爽やかな捨て台詞に声をなくしているうちに、八城はあっさりと姿を消してしまった。
絢瀬はほどなくして給湯室に現れたけれど、そのタイミングが、本当に八城が予測していたくらいの時間で、八城の観察眼に脱帽してしまった。
あの八城の策略に初心者が勝てるはずもなく、誘惑ゲームは、今日も私の負けの予感がする。
私は今、一体何を、言われたのだろうか。
つねに弧を描いている八城の唇が、私の名前をもう一度呼んだ。「あきな、」と囁かれて、小さく震えた声を吐き下ろす。
「き、す……って」
「ん」
「は、い?」
「今、ここで」
「い、ま?」
足が地面に縫い付けられていく。じっと、身動きすら取れずに八城を見上げていた。八城が一歩分、身体をこちらに寄せてくる。ただ、抵抗さえも奪われて、八城の瞳を見つめていた。
「したい」
囁きながら、八城が屈んで顔を寄せてくる。
近づかれる瞬間に八城の香水が香って、ふと我に返った。後退りしようと足を動かした私の腰に誰かの腕が回って、真逆の方向につんのめりかける。
「逃げんな」
「業務時間中、です」
「俺はいま休憩中」
すこし休憩していいとは言われた。けれど、絢瀬が用意してくれたコーヒーはきっと、私の知らないうちに冷めきって、飲むころには、すこし残念な温度になってしまっているだろう。八城の分も気を利かせて淹れてくれたはずなのに、ちっとも手を付ける気配がない。
どこまでも近づいて来ようとする八城の胸を押し返そうと手を動かして、あっさりと熱に捕らわれる。
私の指先を掴む八城の手が、燃えそうに熱い。熱い感触に吃驚しているうちに、小さく八城の唇が笑ったのが見えた。
「わたしは」
肯定も、否定も、させる気がなかったのだろう。
震える声が、柔らかく触れた何かの熱で、途切れてしまった。視界が曖昧になってしまいそうなほどに近くにいる人が、やはり唇を笑わせている。
「や、しろさん」
「……もうした」
八城の囁きは、からかうような声だった。
八城の家のソファでされたときは、一度も唇に触れられなかった。
もしかしたら、この恋人ごっこのなかでは、キスはできないのかもしれないとも思った。けれど、八城は簡単に、私の唇に熱を移して笑っている。
八城は、たぶん、はじめての金曜日に部屋を訪れた私相手にも、簡単にキスをすることができただろう。
今更思い知った。八城の手腕の前で、私が逃げることなどできるはずもない。私に合わせて、可愛らしいままごとの恋愛をしてくれている。
この人を、すこしでも誘惑しようと思った自分の浅はかさに、打ちのめされてしまいそうだ。
「いま、ゆうわく、してませ、ん」
誘惑なんて、できていたことは、一度もない。
どうして、今、このタイミングで八城がキスをしてきたのかもわからない。分からないことばかりで、私の頭はつねに八城に支配されている。
これが相手に誘惑されて、陥溺させられた人間の頭の中なのだとしたら、私に同じことができるはずもない。
八城は、私の精いっぱいの悪態にも楽しそうに笑っている。どうしてこんなにも、余裕なのだろう。いまだに腰に回された手のせいで、どこにも逃げられない。
「そ? じゃあ勝手に誘惑されたかも」
「勝手にって」
誘惑をしなければならない。逃げるのではなく、今ここで、八城を誑かす何かを仕掛けなければならない。けれど、そんなことをしていたら、今日のこれからの仕事は、たぶん、何も手につかなくなってしまう。
「明菜のくち、うまそうに見えるから」
「くちは、ぜんぜん」
「食いたい」
ストレートに誘惑されて、とうとう目が眩んでくる。ただ、逃げ出したい気分でいっぱいになって、とうとう逃げるように顔が俯いてしまった。
「し、ごとちゅう、です」
「ん?」
「あやせさん、もどって、きます」
「んー、まだ時間あると思うけど」
「こんな、ところで、」
「あと三分くらいは、俺と明菜だけ」
俯く耳に、そっと囁き入れてくる。悪い言葉を使って、わざと揺さぶっているのだとわかってしまった。
「——どうする? 誘惑、してくれないの?」
「ゆ、うわくは」
「三分あったら、いっぱいキスできるけど」
「やしろさん、」
「したくないですか」
したいなんて口に出したら、三分では終わってくれなさそうな声だった。
触れられる手も、腰も、猛烈に熱い。何か知らない感覚を植え付けられているような気がして、必死で首を振った。
「……っだめです」
「あはは」
「八城さんっ」
本気で困り果てて小さく叫んだら、私に熱を送り込んできていた手があっさりと剥がれた。瞬時に一歩後退りして、給湯室の入口を隠すように立っている背の高い男性を見上げる。
「はい。ごめんなさい。仕事戻ります」
あっさりと謝罪されて、急に感情の行き場所をなくされてしまったような気分だ。八城は可愛らしく頭を下げて、顔をあげながら私の表情を覗き込んでくる。
「あ、怒ってなくてよかった」
「お、こっては、いないです、けど。……しんぞうにわるいです」
「はい。調子乗りました」
「会社で誘惑は、ずるいです」
「はは。ごめんごめん」
けらけらと笑いつつ、「もう何もしないから横行っていい?」と聞かれて、乱れた拍動を整えながら頷く。
さっきまでの意地悪な目を引っ込めた八城が優しく笑って、冷めきったコーヒーを掴んだ。躊躇いなくカップに口をつけて、運動後に水分補給をするかのようにごくごくと飲み下していく。
しきりに運動する喉仏に唖然としてしまった。こんなにも、コーヒーを水のように荒っぽく、豪快に飲む人を見たことがない。
八城の豪胆さを見ているような気分で、小さく笑ってしまった。
「何笑ってんすか」
「あ、ごめんなさい。豪快にお飲みになるから」
「さすがに一口も飲んでなかったら、絢瀬さんに、いかがわしいことしてたってバレるでしょ」
「あ……、飲みます」
「明菜ちゃんはゆっくりでいいよ」
慌てて同じように飲みかけて、カップを手で塞がれてしまった。
伸ばされた手を辿って八城の顔を見上げる。八城はすでに空にしたらしいカップを、シンクに置いて、私を見つめ返してきた。
「ごちそうさま」
「あ、いえ。これは絢瀬さんが」
「いや、さっきのこと」
「さっき、の?」
「わかんねえの? ここ、うまかったです。ごちそーさまって意味だけど」
からかうように自分の下唇のあたりを二度指先で叩いて示してくる姿に、すこし落ち着きかけていた心音がうるさくなってしまった。八城の隣にいる間、平常心でいられたことがない。
「明菜ちゃんにずるいって可愛く睨まれても、やめる気ないから、覚悟してください」
八城のスイッチの切り替わりの前で、常に目を回している。
遠慮しない指先が、私の髪の表面を愛でるように優しく撫でる。耳をあらわにするように髪をかけられて、動揺している間に提案を吹き込まれた。
「明菜」
「ん、は、い」
「今日、明菜ん家、行っていい?」
今日は金曜日だ。
もちろん、八城の家に行く準備をしていた。
まさか、私の家に来たいと言われるとは思ってもいない。わずかに目を見張っているうちに「行きたいんだけど」と追い打ちをかけられてしまった。
すこしだけ顔を離して、私の表情を覗き込んでくる。
「いい、ですけど……、なにもない、ですよ」
「明菜が居ればそれでいい」
「……そうですか」
「明菜ん家行けると思って、あと四時間、死ぬ気でやります」
「死ぬ気は、やめてください」
「はは、明菜も残業禁止だからな?」
「がんばります」
「よし、いい子」
ぐるりと私の頭を撫でた八城が笑って「先戻るわ」と告げてくる。黙って頷けば、満足そうにまた頭を撫でられた。
「小宮さんは、もうすこし休憩していいと思いますんで」
「……いつも、お気遣いありがとうございます」
「ん、素直な小宮さんに癒された」
爽やかな捨て台詞に声をなくしているうちに、八城はあっさりと姿を消してしまった。
絢瀬はほどなくして給湯室に現れたけれど、そのタイミングが、本当に八城が予測していたくらいの時間で、八城の観察眼に脱帽してしまった。
あの八城の策略に初心者が勝てるはずもなく、誘惑ゲームは、今日も私の負けの予感がする。
1
あなたにおすすめの小説
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
課長のケーキは甘い包囲網
花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。
えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。
×
沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。
実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。
大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。
面接官だった彼が上司となった。
しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。
彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。
心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる