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本編
02. はじまりの森 ―予兆―
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翌朝になっても、身体の奥にこもる熱は冷めきっていなかった。
任務の疲れだと言い聞かせても、脈はわずかに速い。
森の空気は冷えているのに、首筋や脇など、魔力が集中する場所だけがじんわりと火照っていた。
王国の首都から、馬で二時間ほど離れた北の森林地帯。
頭上を覆う針葉樹の枝葉が、冬の陽を細片のように刻んで落とす。湿った土と苔の匂いが鼻を満たし、踏みしめた枯葉はしっとりと湿りを帯びた音を返した。
先日から始まった魔力異常地域の調査の一環で、今日はこの一帯で不安定化している精霊たちの調査を行う予定だった。
部隊は二手に分かれ、僕は先日別部隊から異動してきたばかりの上官──リュカ=ヴァレリウスと同じ組に入っていた。
「東雲、もう少し先に進む。付いてこい」
ヴァレリウス殿に頷き、僕たち二人は雪混じりの風の奥へと進む。
風が吹き抜け、灰を帯びた黒髪が頬にかかった。束ねた後ろ髪が揺れ、木漏れ日に白銀のきらめきを一瞬だけ宿す。
それは光の加減か、あるいは、魔力がわずかに脈打ったせいか。
切ってしまえば煩わしさは減るが、この長さは魔力を安定させるための緩衝材でもあった。
短くすれば、自分の無属性の魔力が身を蝕み、頭痛や熱を招きやすくする。
ふと、足もとの落ち葉の陰で、小さな光が瞬いた。
霧粒よりも淡く、消えかけの焔のように震えていた。
周囲の者たちは気づかないか、気づいても煩わしげに通り過ぎていく。
一人が手で払いのけると、その光は弱々しく揺れた。
僕は思わず足を止め、しゃがみ込む。掌をかざすと、そこから微かな脈動が伝わった。
吐く息とともに、無属性の魔力をほんの一滴流し込むと、光は脈打つように明滅し、やがて淡く赤紫を帯び始めた。
「東雲、支障はないか」
背後から、ヴァレリウス殿の低く落ち着いた声がした。
「異常ありません」
短く答え、掌の上の光をそっと苔の上に戻す。その光は、まだ僕の指先に寄り添うように漂っていた。
立ち上がると、背中に視線が刺さった気がしたが、振り返れば、そこには冬の森の静けさしかなかった。
再び歩き出す。足もとで小枝が折れる音がしたかと思うと、先ほどの光がふわりと浮かび、僕の後ろをついてきた。
立ち止まって追い払うべきか一瞬迷ったが、その小さな脈動を感じると、どうしても足を止められない。
他の者たちが無関心に通り過ぎた存在を、そのまま置き去りにする気にもなれなかった。
「東雲は変わっているな」
不意に真横から声がして、わずかに肩が跳ねた。ヴァレリウス殿だ。
森の薄明かりに、その横顔が浮かび上がる。
「そうでしょうか」
「精霊は、弱り切ればただの魔力の霧に還る。それが自然の摂理だ」
その声は淡々としていて、なんの感情も読み取れない。
「……そうかもしれません」
僕はそれ以上、何も言わなかった。
風が森を抜け、枝葉の隙間から一筋の冬陽が差し込んだ。
足もとの苔の上、赤紫の小さな輝きが、僕の影に寄り添うようにそっと揺れていた。
それからしばらく、森は静かだった。だが奥へ進むほど、精霊の気配はどこかざわつき、空気がわずかに重くなる。
樹皮の裂け目から滲む青白い光、地面近くを低く漂う影──魔力が乱れた痕跡が、至るところに残っていた。
歩みを速めるうち、呼吸が浅くなる。胸の奥に、じわじわと熱がこもっていく。
視線を落とし、首筋にかかる髪を指先で払うふりをして、額ににじむ汗を拭った。
どんなに鍛えても他の隊員ほど筋肉がつかないこの身体は、魔力の制御に体力を削られ続けている。無属性という厄介な性質が、常に限界をかすめてくるのだ。
「全体的に、通常よりも魔力密度が高いな」
「そのわりに精霊の姿があまりない」
前方の別組から報告が入る。魔力暴走の初期兆候だ。
「予定を前倒しして記録を取る。君はこっちだ」
ヴァレリウス殿の指示に従い、測定具を取り出す。
針葉樹の根元に小さな円形の痕跡──精霊が休息していた跡があり、その中心にはまだかすかに魔力の温もりが残っていた。
計測の数字を控えながら、僕はふと視界の端に赤紫の光を捉える。まだついてきている。
森の濃い匂いに混じって、その光からはかすかな金属めいた香りが漂っていた。
無属性の魔力がもつ、独特の匂いだ。
「……君の魔力は、やけに馴染みやすいな」
ヴァレリウス殿が、計測を覗き込みながらぼそりと呟く。
「そうでしょうか」
「精霊が離れないのも無理はない」
何かを見透かすような含みを感じた。だが、その理由を問い返す前に、前方から警戒の合図が響いた。
木々の間を、淡い光の粒が吹雪のように舞っている。
まるで数え切れないほどの小さな精霊たちが、同じ場所に吸い寄せられているかのようだった。
空気は張り詰め、かすかな耳鳴りが始まった。
「……中心を割り出すぞ。行こう」
ヴァレリウス殿が歩を進める。僕も足早に続いた。
背後では、赤紫の光が一度強く瞬き、また静かに影へと紛れた。
やがて、針葉樹の間にぽっかりと開けた空間が現れた。
中心には大岩があり、その表面に細かい亀裂が走っている。亀裂からは、青白い光が呼吸のように明滅していた。
「……魔力の吹き溜まりだな」
ヴァレリウス殿が低く言い、周囲を一瞥する。
「自然現象でしょうか」
「いや……人為的だ」
言い切る声には迷いがない。
近づくと、大岩の根元に何かが残されていた。
焼け焦げた魔道具の欠片──魔力の増幅装置だ。
しかも、この欠片に刻まれた符号は、王国軍でもごく一部の部隊しか扱わないものだった。
ヴァレリウス殿はそれを手に取り、整った眉をひそめると、測定班に向かって淡々と指示を飛ばす。
「詳細な記録は後でまとめる。現場では最低限の計測だけでいい」
一瞬、胸がざわめく。吹き溜まりの魔力は肌を刺すように鋭く、放置すれば近くの精霊が巻き込まれかねない。
僕はヴァレリウス殿に一言断り、手袋を外して岩に触れた。
指先から無属性の魔力を流し込み、周囲に漂う乱れた魔力を吸収して中和した。
その瞬間、喉の奥に金属を舐めたような味が広がり、視界がかすかに揺らいだ。
「……っ」
なんとか深呼吸すると、肺の奥まで冷たい空気が入り込み、少しだけ頭が軽くなった。
「どうした? 顔色が悪い」
「大丈夫です。……もう安定しました」
そう答える僕の足もとで、赤紫の光がふわりと揺れた。
手を伸ばすと、光は一瞬だけ指先に触れ、微かな温もりを残して森の影に消えた。
撤収の準備が始まり、各員が荷をまとめていく。
皆とは少し離れた場所で僕も装備を整えていると、足元の落ち葉の影から、ふわりとかすかな赤紫の光が浮かび上がる。
「……なんだ、まだ欲しいのか」
しゃがみ込み、掌をかざす。
冷たい森の空気の中、そこだけがじんわりと温かい。
ごくわずかに魔力を流し込むと、光は先ほどよりも強く脈動を繰り返した。
「ほら、これで元気になったか」
指先の近くで、光が、応えるようにひときわ震えた。
立ち上がったとき、背後で小枝の折れる音がした。ヴァレリウス殿がこちらを見ていた。
ほんの一瞬、視線が僕の手元をなぞったが、すぐに隊員に指示を出しながら歩き去った。
この日の報告書には、こう記されていた。
――局地的な魔力異常を確認。精霊に被害なし。応急安定化を実施し、任務は完了した。
報告者:リュカ=ヴァレリウス。
***
【作者コメント】
ここまで読んでくださりありがとうございます!
次話では、不思議な光との触れ合いと、千景の『もう一つの顔』に触れます。
***
任務の疲れだと言い聞かせても、脈はわずかに速い。
森の空気は冷えているのに、首筋や脇など、魔力が集中する場所だけがじんわりと火照っていた。
王国の首都から、馬で二時間ほど離れた北の森林地帯。
頭上を覆う針葉樹の枝葉が、冬の陽を細片のように刻んで落とす。湿った土と苔の匂いが鼻を満たし、踏みしめた枯葉はしっとりと湿りを帯びた音を返した。
先日から始まった魔力異常地域の調査の一環で、今日はこの一帯で不安定化している精霊たちの調査を行う予定だった。
部隊は二手に分かれ、僕は先日別部隊から異動してきたばかりの上官──リュカ=ヴァレリウスと同じ組に入っていた。
「東雲、もう少し先に進む。付いてこい」
ヴァレリウス殿に頷き、僕たち二人は雪混じりの風の奥へと進む。
風が吹き抜け、灰を帯びた黒髪が頬にかかった。束ねた後ろ髪が揺れ、木漏れ日に白銀のきらめきを一瞬だけ宿す。
それは光の加減か、あるいは、魔力がわずかに脈打ったせいか。
切ってしまえば煩わしさは減るが、この長さは魔力を安定させるための緩衝材でもあった。
短くすれば、自分の無属性の魔力が身を蝕み、頭痛や熱を招きやすくする。
ふと、足もとの落ち葉の陰で、小さな光が瞬いた。
霧粒よりも淡く、消えかけの焔のように震えていた。
周囲の者たちは気づかないか、気づいても煩わしげに通り過ぎていく。
一人が手で払いのけると、その光は弱々しく揺れた。
僕は思わず足を止め、しゃがみ込む。掌をかざすと、そこから微かな脈動が伝わった。
吐く息とともに、無属性の魔力をほんの一滴流し込むと、光は脈打つように明滅し、やがて淡く赤紫を帯び始めた。
「東雲、支障はないか」
背後から、ヴァレリウス殿の低く落ち着いた声がした。
「異常ありません」
短く答え、掌の上の光をそっと苔の上に戻す。その光は、まだ僕の指先に寄り添うように漂っていた。
立ち上がると、背中に視線が刺さった気がしたが、振り返れば、そこには冬の森の静けさしかなかった。
再び歩き出す。足もとで小枝が折れる音がしたかと思うと、先ほどの光がふわりと浮かび、僕の後ろをついてきた。
立ち止まって追い払うべきか一瞬迷ったが、その小さな脈動を感じると、どうしても足を止められない。
他の者たちが無関心に通り過ぎた存在を、そのまま置き去りにする気にもなれなかった。
「東雲は変わっているな」
不意に真横から声がして、わずかに肩が跳ねた。ヴァレリウス殿だ。
森の薄明かりに、その横顔が浮かび上がる。
「そうでしょうか」
「精霊は、弱り切ればただの魔力の霧に還る。それが自然の摂理だ」
その声は淡々としていて、なんの感情も読み取れない。
「……そうかもしれません」
僕はそれ以上、何も言わなかった。
風が森を抜け、枝葉の隙間から一筋の冬陽が差し込んだ。
足もとの苔の上、赤紫の小さな輝きが、僕の影に寄り添うようにそっと揺れていた。
それからしばらく、森は静かだった。だが奥へ進むほど、精霊の気配はどこかざわつき、空気がわずかに重くなる。
樹皮の裂け目から滲む青白い光、地面近くを低く漂う影──魔力が乱れた痕跡が、至るところに残っていた。
歩みを速めるうち、呼吸が浅くなる。胸の奥に、じわじわと熱がこもっていく。
視線を落とし、首筋にかかる髪を指先で払うふりをして、額ににじむ汗を拭った。
どんなに鍛えても他の隊員ほど筋肉がつかないこの身体は、魔力の制御に体力を削られ続けている。無属性という厄介な性質が、常に限界をかすめてくるのだ。
「全体的に、通常よりも魔力密度が高いな」
「そのわりに精霊の姿があまりない」
前方の別組から報告が入る。魔力暴走の初期兆候だ。
「予定を前倒しして記録を取る。君はこっちだ」
ヴァレリウス殿の指示に従い、測定具を取り出す。
針葉樹の根元に小さな円形の痕跡──精霊が休息していた跡があり、その中心にはまだかすかに魔力の温もりが残っていた。
計測の数字を控えながら、僕はふと視界の端に赤紫の光を捉える。まだついてきている。
森の濃い匂いに混じって、その光からはかすかな金属めいた香りが漂っていた。
無属性の魔力がもつ、独特の匂いだ。
「……君の魔力は、やけに馴染みやすいな」
ヴァレリウス殿が、計測を覗き込みながらぼそりと呟く。
「そうでしょうか」
「精霊が離れないのも無理はない」
何かを見透かすような含みを感じた。だが、その理由を問い返す前に、前方から警戒の合図が響いた。
木々の間を、淡い光の粒が吹雪のように舞っている。
まるで数え切れないほどの小さな精霊たちが、同じ場所に吸い寄せられているかのようだった。
空気は張り詰め、かすかな耳鳴りが始まった。
「……中心を割り出すぞ。行こう」
ヴァレリウス殿が歩を進める。僕も足早に続いた。
背後では、赤紫の光が一度強く瞬き、また静かに影へと紛れた。
やがて、針葉樹の間にぽっかりと開けた空間が現れた。
中心には大岩があり、その表面に細かい亀裂が走っている。亀裂からは、青白い光が呼吸のように明滅していた。
「……魔力の吹き溜まりだな」
ヴァレリウス殿が低く言い、周囲を一瞥する。
「自然現象でしょうか」
「いや……人為的だ」
言い切る声には迷いがない。
近づくと、大岩の根元に何かが残されていた。
焼け焦げた魔道具の欠片──魔力の増幅装置だ。
しかも、この欠片に刻まれた符号は、王国軍でもごく一部の部隊しか扱わないものだった。
ヴァレリウス殿はそれを手に取り、整った眉をひそめると、測定班に向かって淡々と指示を飛ばす。
「詳細な記録は後でまとめる。現場では最低限の計測だけでいい」
一瞬、胸がざわめく。吹き溜まりの魔力は肌を刺すように鋭く、放置すれば近くの精霊が巻き込まれかねない。
僕はヴァレリウス殿に一言断り、手袋を外して岩に触れた。
指先から無属性の魔力を流し込み、周囲に漂う乱れた魔力を吸収して中和した。
その瞬間、喉の奥に金属を舐めたような味が広がり、視界がかすかに揺らいだ。
「……っ」
なんとか深呼吸すると、肺の奥まで冷たい空気が入り込み、少しだけ頭が軽くなった。
「どうした? 顔色が悪い」
「大丈夫です。……もう安定しました」
そう答える僕の足もとで、赤紫の光がふわりと揺れた。
手を伸ばすと、光は一瞬だけ指先に触れ、微かな温もりを残して森の影に消えた。
撤収の準備が始まり、各員が荷をまとめていく。
皆とは少し離れた場所で僕も装備を整えていると、足元の落ち葉の影から、ふわりとかすかな赤紫の光が浮かび上がる。
「……なんだ、まだ欲しいのか」
しゃがみ込み、掌をかざす。
冷たい森の空気の中、そこだけがじんわりと温かい。
ごくわずかに魔力を流し込むと、光は先ほどよりも強く脈動を繰り返した。
「ほら、これで元気になったか」
指先の近くで、光が、応えるようにひときわ震えた。
立ち上がったとき、背後で小枝の折れる音がした。ヴァレリウス殿がこちらを見ていた。
ほんの一瞬、視線が僕の手元をなぞったが、すぐに隊員に指示を出しながら歩き去った。
この日の報告書には、こう記されていた。
――局地的な魔力異常を確認。精霊に被害なし。応急安定化を実施し、任務は完了した。
報告者:リュカ=ヴァレリウス。
***
【作者コメント】
ここまで読んでくださりありがとうございます!
次話では、不思議な光との触れ合いと、千景の『もう一つの顔』に触れます。
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